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退職の事務

従業員がすぐにやめてしまったときの社会保険料

Last Updated on 2023年10月22日 by

従業員がすぐに辞めたとき

長く働いてもらうつもりで採用したのにすぐに辞められてしまうことがあります。これにはいろいろな原因が考えられ、多くの場合には採用した側の問題も多いので大いに自省しなければならないのですが、ここでは社会保険料のことを書いておきます。

社会保険料の徴収

原則的扱い

辞めたときの社会保険料は、資格喪失日(退職日の翌日)の属する月の前月の分までが徴収されます。

つまり、月末が31日だとして31日付の退職だとその月の分の保険料は徴収されますが、30日に退職したのであればその月の分の保険料は徴収されません。

同月得喪の特例

同じ月の中に社会保険の資格取得日と資格喪失日の両方がある場合(つまり、入社した月に退職した場合)の社会保険の手続きには特例が適用されます。社会保険の「同月得喪」といいます。

同月得喪の場合、社会保険料の取り扱いが通常とは異なるので注意が必要です。

同月得喪の場合は、月内に1日でも被保険者として在籍していれば、月の途中で資格を喪失した場合でも1か月分の社会保険料を徴収されることになります。

たとえば、4月1日に入社した従業員が、4月20日に退職した場合が同月得喪に該当します。

資格喪失日は退職日の翌日となるため、退職日が月末の場合は同月得喪には該当しません。

数日で退職してしまうケースもあると思いますが、そうした場合には、日割りになってしまう給与の支給額よりも社会保険料の控除額の方が多くなってしまいます。別途支払ってもらわなければならないのですが、すんなり払われない場合もあります。同月得喪に該当する退職申し出があったときは、速やかにこの社会保険の仕組みを説明してお金を準備するように働きかける必要があります。

辞めた月に再就職した場合

健康保険の扱い

退職した月のうちに他の会社に採用されて健康保険の被保険者になったときは、その会社でも健康保険料が発生します。同月得喪の手続きで退職した人は、結果的に、その月の健康保険料はダブルで払わなけれならないことになります。

厚生年金保険の扱い

同じ社会保険でも、厚生年金保険の方は、同時得喪で徴収された厚生年金保険料が還付されます。

会社は、同月得喪のルールに従い退職者から1か月分の保険料を徴収しますが、退職月のうちに次の転職先で厚生年金に加入すれば、年金機構がそれを把握して前の会社が同月得喪で徴収した厚生年金保険料を還付します(数か月かかります)。

還付を受けた会社は退職者にその保険料を返金しなければなりません。

すぐに再就職しないで国民年金に加入した場合も同様の措置がとられます。年金の方は二重払いにならないようになっているのです。

なお、同月得喪に該当し、しかも後日還付されることが確実な事情があっても、社会保険の手続き上、一度度納付してから還付を受けることになっています。

手続きができないとき

辞めた本人は数日しかいなかったから取られるものはないだろうと安易に考えているものです。1日でも在籍したら1か月の社会保険料がかかるということを、入社手続きのときに説明しておいた方がよいでしょう。

また、辞めますと申し出てくれれば手続きすることができますが、なかには連絡なしに出社しなくなったり、音信不通、行方不明になってしまうこともあります。そのようなときは同時得喪どころの問題でなく、退職手続きをしてよいものかどうか悩むことになります。

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