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退職の事務

従業員が行方不明になったとき

Last Updated on 2024年10月11日 by

連絡が取れないときの対応

従業員が突然会社に来なくなり、連絡が取れなくなった時どうすればいいでしょうか。

「無断欠勤など言語道断、就業規則にも決めてある。クビだ」と単純に処理できるものではありません。

病気や事故、事件に巻き込まれるなど、本人に責任がないことで無断欠勤してしまうこともあるからです。

また、処分ではなく普通退職として扱うことにも問題があります。

退職は従業員と会社の合意によって成立している「雇用契約」という契約を終了させることですから、当然一方の当事者である従業員の意思表示が必要です。契約の相手方である従業員の意思がわからないまま、退職の手続きをすると、後々問題が発生する可能性があるからです。

連絡を取る努力が必要です

まずは連絡を取る努力をしなければなりません。

□ 本人の携帯等に何度も連絡してみる。会社からの電話に出るつもりがない場合もあるので、同僚等の個人の携帯からも連絡してもらう
□ 家族や身元保証人に電話等で連絡をとる
□ 住まいを訪問する(事件等の場合もあるので、必ず複数の社員で、うち一人は管理職が望ましい)

連絡がとれたときは

連絡がとれた場合は、事情を聴くことになりますが、会社にとって肝心なのは、退職するつもりで休んだのかどうかの確認です。

辞めたいのだが言い出せないので休んでしまったというのであれば、事情にもよりますが、そこまでやめたいのであれば、退職の手続きに進むのが一般的です。手続きにも出社したくないでしょうから、郵送による書類のやり取りで退職手続きを行いましょう。

退職するつもりはない、と伝えてきた場合は、その行方不明の事情等により、社内規程に照らして処分が必要であればその可能性を伝え、処分に関する手続きをした上で復職を認めることになります。なお、その処分が懲戒解雇であれば、結果的に復職を認めないことになります。

連絡がとれない場合

手を尽くしても連絡が取れない場合は、次のステップに進むことになります。まずは、そのままにしておくか、退職手続きに移るか判断します。

本人の日頃の様子から見て、そのような無責任な行動をとるとは思えない場合は、事故や事件に巻き込まれて被害者になっている可能性も考えなければなりません。

また、犯罪を起こして逮捕されている場合もあります。

家族や身元保証人との協議を続け、場合によっては警察への届け出(普通は家族が行う)等に進むことになります。

退職手続きの進め方

本人の意思を類推できる場合

同僚に対して「もうこの会社を辞める」などと発言した事実があったり、上司の注意等に対して「辞めてやる」などと言った事実があって、その後出社しなくなった場合には本人に退職の意思があると推定できます。

もちろん、本当に辞めるのかどうかの確認はとりたいものですが、できない場合は、家族や身元保証人と話し合い、なるべく、退職手続きがやむを得ないものと認める旨の同意を得るように努めましょう。

このような場合、退職意志を推定して退職の手続きをとることはやむを得ないと考えられますが、後日トラブルになる可能性がまったくないわけではありません。リスクを考慮しての判断になります。

就業規則の退職事由に該当する場合

就業規則に、退職事由として、「無断欠勤が〇日に及んだ場合」の定めがある場合は、それを根拠に、退職手続きを進めることができます。

ただし、後で事情が判明して、無断欠勤がやむを得ない事情によるものと認められる場合は、その措置を撤回する必要が出てくることがあります。

就業規則の解雇事由に該当する場合

就業規則に、解雇事由として、「無断欠勤が〇日に及んだ場合」の定めがある場合は、その規定を適用して解雇することができます。

ただし、後で正当な事由が判明したときは、前項と同様にその措置を撤回する必要が出てくることがあります。

解雇の場合は、30日前の予告が必要ですが、行方不明の場合はこの予告が相手に達しないことが多いので、あとで、解雇予告手当を請求される可能性があります。

関連記事:解雇予告と解雇予告手当

懲戒解雇の場合、懲戒手続きの一環として本人の弁明機会を与えなければなりません。行方不明の場合は弁明を聞くことができないので、後日、懲戒手続きの不備として問題になる可能性があります。

従って、行方不明の場合には懲戒解雇は避けた方がよいでしょう。会社の金品を持ち逃げしたとかなどの犯罪行為がある場合は認められると思われます。ケースバイケースです。

どのように通知するか

退職又は解雇、ともに雇用契約の解除なので、上述したように当事者である本人に伝える必要があります。

多く見られるのは親などの家族に伝えて退職の了解を取るというものです。ただし、家族であっても雇用契約の当事者ではありませんから、問題が残ります。

また、一方的に本人の住所に解雇通知の文書を送るという方法も使われますが、受取人不在で戻ることもあり、戻ってこないとしても本人が受け取っているかどうかわからないので、後で受けとっていないと言われた場合には弱いです。

確実なのは、裁判所の公示送達という手続です。従業員の最後の住所地の簡易裁判所に申立てをします。公示送達の手続きは少々面倒です。弁護士等の専門家に相談しましょう。

生死が7年間明らかでないとき(場合によって1年のこともあります)は、(家族等は)家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることができます。失踪宣告がでると、生死不明者は、法律上死亡したものとみなされます。

残余の賃金や退職金はどうするか

賃金は労務の提供の対価ですから、労務の提供がない場合には、会社は賃金の支払義務を負わないのが原則です。いわゆる「ノーワーク・ノーペイの原則」です。ただし、給与規程等で、社員の出勤にかかわらず月給を支払うような規定になっている場合は、社員が無断欠勤をしているときでも、賃金を支払う必要が生じます。

無給になっても、在籍中は社会保険料などは発生してしまいます。その分は会社が立て替えておき、あとで従業員に請求するしかありません。いつまでも払ってもらえない場合は、損金処理するしかない場合もあります。

入社時に、身元保証人を立てさせていた場合には、社会保険料などの立替金は、身元保証人に対して請求することができます。だだし、どのくらい回収できるかは微妙です。

退職金については、無断欠勤をしたからといって、直ちに支払義務を負わなくなるものではありません。退職金規程等に定められている場合は、行方不明による退職であっても退職金を支払う必要があります。

なお、未払いの賃金や退職金の支払いに際しては、賃金の「直接払いの原則」に留意する必要があります。本人名義の預金通帳等が解約されていない場合はその通帳に振り込むことでほぼ問題ないと思われますが、家族等に手渡すのは問題になる可能性があります。

一般的な退職の手続き

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