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会社が従業員の運転記録証明書を入手して安全運転管理に利用できますか?

Last Updated on 2025年8月28日 by

運転記録証明書の入手

自動車安全運転センターが交付する「運転記録証明書」や「無事故・無違反証明書」は、原則として本人からの申請に基づいて発行されます。会社が従業員個人の証明書を直接取得することはできません。

ただし、従業員本人が委任状を作成し、会社に証明書の取得を委任することは可能です。その場合でも、証明書は従業員本人に交付され、それを従業員が会社に提出するという手続きになります。

利用に当たっての注意点

会社が従業員の承諾を得てこれらの証明書を取得し、それらを安全運転指導や業務適性の判断に利用すること自体は、一般的に問題ないとされています。ただし、以下の点に注意が必要です。

  • 個人情報保護への配慮: 会社が証明書を取得・利用する際は、個人情報保護法に基づき、その利用目的をあらかじめ従業員に明示し、同意を得る必要があります。
  • 利用目的の明確化: 証明書をどのような目的で利用するのか(例:安全運転指導、業務適性の確認など)を具体的に従業員に伝える必要があります。
  • 適切な取り扱い: 取得した証明書の内容は、業務上必要な範囲でのみ利用し、目的外の利用や不適切な取り扱い(例:無関係な社員への開示)は避けなければなりません。

委任拒否や提出拒否があったら

運転の職にある者が、「運転記録証明書」又は「無事故・無違反証明書」を取得するための委任状の提出を拒み、あるいは、送付されてきた証明書の会社への提出を拒むことがあるかもしれません。

対応策を検討します。

  • 就業規則: まず、就業規則に、運転業務従事者に対し、「運転記録証明書」等の提出を義務付け、提出拒否が懲戒事由となる旨が明確に定められている必要があります。就業規則自体に定めていなくても採用時の誓約書等で従業員が証明書の提出に同意していれば同等の効力があります。
  • 業務上の必要性: 運転業務に従事する従業員の安全運転能力を確認することは、企業にとって安全配慮義務を果たす上で非常に重要な業務上の必要性があります。そのため、証明書の提出を求める命令は、一般的に合理的な業務命令と認められます。
  • 懲戒処分・乗務拒否の妥当性: 提出拒否は、業務命令違反という事実に基づいています。そのため、この事実を根拠とした懲戒処分や、運転業務への乗務拒否は正当である可能性が高いです。
  • 処分の相当性: 提出拒否のみを理由に懲戒解雇などの重い処分を下すことは、相当性を欠くと判断されるリスクがあります。

また、提出拒否の背景に何らかの不都合な事実(過去の違反歴など)がある可能性はありますが、証明書が提出されていない以上、その事実を理由とした処分はできません。あくまで、証明書の「提出拒否」という業務命令違反の事実を根拠として処分を行うことになります。

証明書の内容を理由とした処分

安全運転指導や乗務可否の判断に証明書の情報を用いる場合は、その必要性と合理性を明確にし、適切な手続きに則って行うことが重要です。

証明書の内容だけを理由に、業務上の不利益(懲戒処分や不当な配置転換など)を課すことは問題となる可能性があります。

例により検討してみます。

質問

会社が就業規則によって、勤務時間内外を問わず飲酒運転を禁止し懲戒処分の対象にしている場合、証明書の内容によって、勤務時間外の飲酒運転が判明した場合、処分(懲戒処分・配置転換)してよいか?

回答

就業規則に飲酒運転を懲戒処分の対象とすることが明記されており、従業員の同意を得て取得した「運転記録証明書」から飲酒運転の事実が判明した場合、それを根拠とした処分は正当である可能性が高いと思われます。

ただし、懲戒処分や配置転換の正当性を判断する際には、いくつかの重要なポイントがあります。

懲戒処分が正当と認められるための条件

懲戒処分が有効となるには、客観的かつ合理的な理由と、社会通念上相当な処分内容が求められます。

  • 就業規則の明記と周知: 飲酒運転を懲戒事由として就業規則に明確に定めており、従業員にその内容を周知している必要があります。
  • 業務への関連性: 飲酒運転が会社の業務に与える影響の度合いが重要です。特に、運送業や運転を伴う業務の従業員であれば、業務との関連性が高く、重い処分が認められやすい傾向があります。
  • 行為の悪質性: 飲酒運転の状況(酒気帯びか酒酔いか、事故の有無、飲酒量、被害の程度など)が考慮されます。悪質な行為であるほど、重い処分が正当化されやすくなります。
  • 本人への弁明の機会: 処分を決定する前に、従業員本人に飲酒運転の事実や経緯について弁明の機会を与えるなど、適切な手続きを踏むことが不可欠です。

裁判例では、従業員の私的な飲酒運転であっても、その職種や企業の社会的影響を考慮し、懲戒解雇が有効と判断されたケースがあります。例えば、運送会社のドライバーや公務員などが飲酒運転で処罰された場合、企業の信用失墜や職務への適格性の欠如を理由に、懲戒処分や降格、配置転換が認められている例があります。

しかし、飲酒運転の事実が判明したからといって、無条件に懲戒解雇が認められるわけではありません。事案の軽重、従業員の勤務年数、反省の態度、過去の処分歴などを総合的に判断する必要があり、安易な懲戒解雇は無効とされるリスクを伴います。

配置転換について

「運転記録証明書」から勤務時間外の飲酒運転が判明し、安全運転管理上、運転業務から外す必要があると判断した場合、運転を伴わない業務への配置転換は一般的に正当性が認められやすいです。これは、飲酒運転の事実が職務遂行上の信頼を損なうものであり、業務適格性の問題と判断されるためです。


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