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  • テレワークにかかる費用を会社はどのくらい負担すればよいか?

    テレワークにかかる費用負担の考え方

    テレワークを導入する際、会社と従業員の費用負担のルールを明確にすることは、トラブル防止のために非常に重要です。ここでは、主な費用項目と、それぞれの負担の考え方について解説します。

    パソコン、周辺機器(初期費用)

    • 考え方:業務のために必要なPCやモニター、ヘッドセットなどは、原則として会社が支給するのが一般的です。従業員の私物PCを使わせることもありますが、情報漏洩などのセキュリティリスクが高まるため、会社支給を推奨します。
    • ポイント:
      • オフィスで使用している備品をそのまま持ち帰って利用する、という方法も検討できます。
      • 会社が備品を支給することで、セキュリティ対策も一元管理できます。

    通信費、電気代(ランニングコスト)

    • 考え方:自宅のWi-Fi通信設備や照明器具、パソコン用の電源等を業務に使うことになります。普段は家にいない人が家にいることになるので、夏場のエアコンや冬場の暖房費は想定外に多くなるかもしれません。それらの費用を正確に算出しようとすれば計算が大変煩雑になります。そのため、多くの企業では、実費精算ではなく、これらの費用をまとめて「テレワーク手当」として定額を支給する方法を採用しています。この方法が、管理がシンプルで、従業員の公平感も保ちやすいからです。
    • 手当の金額目安:通信費や電気代、燃料代など、業務で増加するコストを想定して算出します。
    • 注意点:
      • この手当は、給与として扱われる可能性が高いため、所得税や社会保険料の算定対象となることがあります。(要:税理士相談)
      • 支給額を決定する際は、この点を踏まえて検討する必要があります。

    3. 家具(机・椅子など)の費用

    • 考え方:従業員が自宅にある家具を使用する場合は、特に会社からの費用負担は生じないケースが多いです。しかし、健康面への配慮から、オフィスチェアやデスクを会社が提供する、または購入費用の一部を補助する制度を設ける企業も増えています。
    • ポイント:
      • 従業員が快適に働ける環境を整えることは、生産性向上にもつながります。

    4. 外部の作業場所を利用する費用

    • 考え方:住宅環境あるいは個別事情によって、自宅で業務を行うのが困難な場合もあります。その場合、コワーキングスペースやサテライトオフィスなど、会社が指定する場所を業務のために利用することがありますが、その利用料は会社が負担するのが妥当です。
    • ポイント:
      • 事前に利用可能な場所や費用の上限などを明確に定めておきましょう。

    5. 通勤手当

    • 考え方:一時的臨時的なテレワークは別ですが、テレワークが通常体制になれば出社する日が減るため、通勤手当は見直す必要があります。定期券の支給を停止し、実際に出社した日のみの交通費を実費精算する方法が、最も公平で無駄がない方法です。
    • ポイント:
      • 就業規則に、テレワーク時の通勤手当に関する規定を明確に記載し、従業員に周知することが不可欠です。

    ルール策定のポイント

    テレワークにおける費用負担については、以下の点を就業規則に明記することが最も重要です。

    • 費用負担の項目ごとに、会社と従業員の負担範囲を明確にする。
    • ランニングコストは「テレワーク手当」として定額を支給する。
    • 通勤手当は、テレワーク日数を考慮した実費精算に切り替える。

    これらのルールを定めることで、従業員が安心してテレワークに取り組める環境を整えることができます。


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  • テレワークにおける労務管理上の問題点

    テレワークは働き方の選択肢を広げる一方で、従来のオフィス勤務とは異なる労務管理上の課題が生じます。特に、労働時間や安全衛生の確保については、明確なルールを定めておくことが不可欠です。

    労働時間と休憩時間の管理

    テレワークでも、労働基準法に基づき、通常の勤務時間や休憩時間のルールが適用されます。

    • 労働時間の把握
      • 通常の労働時間: 原則として、会社が定めた所定の労働時間(例:9:00~18:00、休憩1時間)を適用します。
      • 勤怠管理: 会社は、クラウド型システムなどを用いて、労働者の始業・終業時刻を客観的に把握する責任があります。これにより、正確な給与計算と労働時間の管理が可能になります。
    • 休憩時間
      • 労働基準法に基づき、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を付与する義務があります。
      • テレワークでは休憩の取得状況を会社が直接確認することが難しいため、従業員に休憩時間の取得を周知し、自己申告で管理させるのが一般的です。

    時間外労働、深夜労働、休日勤務

    通常の勤務と同様に、時間外労働や深夜労働などには、会社からの事前の許可が必須です。

    • 事前申請・許可制の徹底
      • 時間外労働: 所定の労働時間を超えて働く必要がある場合、事前に上長に申請し、許可を得ることを義務付けます。
      • 深夜労働・休日勤務: 深夜帯(22:00~翌5:00)や休日に勤務する場合も、同様に事前の申請と許可を必須とします。
      • 申請方法: 勤怠管理システムやワークフローシステムを利用することで、申請と許可の記録が残り、客観的な証拠として管理できます。
    • みなし労働時間制について
      • 業務の性質上、労働時間の管理が難しい場合は、「事業場外みなし労働時間制」や「裁量労働制」の適用も検討できます。
      • ただし、これらの制度は適用要件が厳格であり、安易な導入は避けるべきです。特にテレワークにおいては、情報通信機器を通じて労働時間の把握が可能なため、みなし労働時間制の適用が認められないケースが多いことに注意が必要です。導入を検討する際は、専門家(社会保険労務士など)に相談しましょう。

    長時間労働と安全衛生の確保

    テレワークは長時間労働を招くリスクがあるため、労働者の健康と安全を守るための対策が重要です。

    • 長時間労働の防止策
      • 時間外労働の原則禁止: 事前申請・許可制を徹底し、無許可の時間外労働を認めない方針を明確にします。
      • メールやシステム利用の抑制: 深夜や休日の業務連絡を控えるルールを設けたり、時間外のシステムアクセスを制限したりすることも有効です。
    • 労働安全衛生法の遵守
      • テレワークでも、健康診断や長時間労働者に対する医師の面接指導、ストレスチェックといった健康確保のための措置を講じる義務があります。
      • 作業環境についても、事務所衛生基準と同等の環境となるよう、会社は従業員に助言を行うことが望ましいとされています。

    労働災害補償

    テレワーク中の災害も、業務との因果関係が認められれば、労災保険給付の対象となります。

    • 業務災害の認定
      • 労働契約に基づいて事業主の支配下にあると認められる状況で発生した災害は、業務上の災害として労災認定の対象となります。
      • 例: 業務中にトイレに離席し、作業場所に戻る際に転倒したケースなど、業務に付随する行為中の災害は業務災害と認められる可能性があります。
      • ただし、私的行為や業務以外の原因による災害は対象外です。
    • 従業員への周知
      • 労働者が労災補償の適用範囲を十分に理解していない場合もあるため、会社は、どのようなケースが業務災害となり得るのかを事前に周知しておくことが望ましいです。

    まとめ:テレワーク導入時の重要ポイント

    テレワークを円滑に進めるためには、以下の4つのポイントを就業規則に明確に定めておくことが不可欠です。

    1. 所定労働時間の適用: テレワークでも通常の労働時間・休憩時間を原則として適用する。
    2. 勤怠管理の徹底: 勤怠管理システムなどを活用し、客観的な労働時間を把握する。
    3. 事前申請・許可制: 時間外労働や休日労働は、事前の承認を必須とする。
    4. 就業規則への明記: 労働時間、休憩、時間外労働等のルールを、テレワーク勤務規程に明確に定める。

    これらのルールを定めることで、会社側は適切な労務管理とコンプライアンスを維持でき、従業員は安心してテレワークに取り組める環境を整えることができるでしょう。


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