Last Updated on 2025年9月28日 by 勝
テレワーク勤務をしている者のなかに、極めて仕事の効率が悪く、サボっているのではないかと疑われる者がいます。この者をテレワーク勤務の対象から外したいのですが、どのような注意が必要でしょうか。
労働契約・就業規則の確認と合理的な理由
テレワーク勤務の従業員をその対象から外す(オフィス勤務に戻す)際には、労働条件の不利益変更や不当な動機による措置と見なされないよう、いくつかの重要な注意が必要です。最も重要なのは、就業規則や労働契約に照らし、合理的な理由と適正な手続きを踏むことです。
まず、現在のテレワーク勤務の根拠を確認し、勤務形態を変更する合理的な理由を明確にする必要があります。
確認事項 | 注意点 |
就業規則や労働契約 | テレワーク勤務が当然の権利として定められているか、または会社の裁量で変更可能な旨が明記されているかを確認します。 |
合理的な理由の明確化 | 「サボっている疑い」ではなく、客観的な事実に基づき「業務効率の著しい低下」や「成果の未達」といった業務上の必要性を理由とします。具体的には、成果物、遅延の記録、コミュニケーションの不履行などの証拠を準備しましょう。 |
不利益変更の可能性 | テレワークからオフィス勤務への変更は、通勤費の増加や通勤時間の発生など、従業員にとって労働条件の不利益変更にあたる可能性があります。 |
適正な手続きと従業員への配慮
単なる「サボっている疑い」で一方的に変更すると、トラブルや訴訟の原因になりかねません。以下のステップを踏むことが推奨されます。
① 事前の指導と改善機会の提供
いきなり制度から外すのではなく、まずは具体的なデータや事例を示し、従業員に対してパフォーマンス改善のための指導を行います。
- 面談の実施: なぜ効率が悪いのか、原因は何か(環境、機材、コミュニケーション不足など)をヒアリングし、改善計画を策定します。
- 勤務状況の記録: 指導内容と、その後の改善状況を記録として残しておきます。
② 変更の必要性についての説明
指導や改善の機会を与えてもなおパフォーマンスが改善されない場合、業務遂行上の支障を理由としてテレワーク解除を検討します。
- 明確な説明: なぜオフィス勤務に戻す必要があるのか、その合理的な理由と業務上の必要性を、丁寧かつ具体的に説明します。
- 意見聴取: 従業員の意見や反論も聞き、可能な範囲で配慮する姿勢を見せることが重要です。
③ 不利益緩和の措置(配慮)
もし、変更が従業員にとって大きな不利益となる事情があれば、可能な範囲で不利益を緩和する措置を検討します。
- 通勤手当の見直しや、移行期間の設置などが考えられます。
最も避けるべき「不当な動機」
最も注意すべきは、不当な目的や差別的な動機による措置と見なされることです。
- ハラスメントの疑い: テレワーク解除が懲罰的な意味合いや、特定の従業員への嫌がらせと受け取られることがないようにします。
- 妊娠・育児・介護との関係: 育児や介護のためにテレワークをしている従業員に対して、それを理由に不当にオフィス勤務に戻すことは、育児・介護休業法などに違反する可能性があります。
「極めて仕事の効率が悪い」という客観的な事実と、業務遂行に必要な能力・成果の基準をクリアできないこと、そして改善の機会を与えたという一連のプロセスを明確にしておくことが、法的なリスクを避ける上での最大の注意点となります。