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「伝わる」報告書の書き方:テンプレート作成からルール作りまで

Last Updated on 2025年8月5日 by

日々の業務で避けては通れないのが、報告書の作成です。出張報告書、修理完了報告書、竣工式終了報告書など、その種類は多岐にわたります。しかし、「この報告書、結局何が言いたいの?」「情報が散らばっていて読みにくい…」と感じたことはありませんか?

それは、書き手と読み手の間に「情報の非対称性」が生まれているからです。書き手は背景を理解していますが、読み手はそうではありません。このギャップを埋め、誰が読んでも内容が正確に伝わる報告書を作成するためのポイントを「テンプレート作成」「ルール作り」の2つの視点から解説します。

テンプレート作成のポイント:誰もが迷わず書ける型を作る

報告書の作成をゼロから始めると、時間もかかり、フォーマットのばらつきも生じます。そこで、報告の目的に応じたテンプレートを事前に用意しておくことが非常に有効です。

報告書の目的と読み手を明確にする

テンプレートを作る前に、まずはその報告書の目的主な読み手を定義しましょう。

  • 目的:情報共有、意思決定、記録など
  • 読み手:直属の上司、他部署の担当者、経営層など

例えば、出張報告書であれば、上司が今後の営業戦略を立てるための情報収集が目的かもしれません。修理完了報告書であれば、お客様への引き渡しと社内での事例共有が目的となります。目的に応じて、記載すべき内容の深さや焦点を変える必要があります。

必須項目を洗い出す

次に、目的と読み手に基づいて、必ず記載すべき項目を洗い出し、テンプレートの項目として設定します。

  • 出張報告書:件名、提出日、氏名、出張目的、出張期間、訪問先、面会者、商談結果・成果、今後のアクションプラン、所感
  • 修理完了報告書:件名、提出日、担当者、お客様名、機器名、発生した不具合、修理内容、交換部品、かかった時間、今後の注意点
  • 竣工式終了報告書:件名、提出日、担当者、プロジェクト名、開催日時、開催場所、参加者(社内外)、式次第、当日の様子(写真など)、課題・反省点、今後の展望

項目ごとに「何を記載すべきか」の補足説明(例:「今後のアクションプラン:誰が、いつまでに、何を行うのかを具体的に記載」)を添えておくと、書き手は迷わずに済みます。

レイアウトと書式を統一する

見出しのレベル、フォントの種類とサイズ、行間、文字の色など、書式を統一することで、報告書全体の一貫性が保たれ、読みやすさが格段に向上します。特に、見出しは内容の構造を示す重要な要素です。大見出し、中見出し、小見出しを明確に使い分けるルールを定めておきましょう。

ルール作りのポイント:書き方の「共通言語」を築く

テンプレートはあくまで骨組みです。その中身を誰が書いても同じ品質になるように、具体的な書き方のルールを策定することが重要です。

結論を最初に書く

報告書では、まず「結論」を最初に提示することが鉄則です。読み手は結論から知りたいと考えるからです。

  • 出張報告書:「〇〇社との商談の結果、新規契約を獲得することができました。」
  • 修理完了報告書:「〇〇(機器名)の不具合について、原因を特定し、修理が完了しました。」
  • 竣工式終了報告書:「〇〇プロジェクトの竣工式は、滞りなく成功裏に終了しました。」

このように、冒頭で結論を簡潔に述べることで、読み手は全体の概要を素早く把握できます。

専門用語や略語を使わない、使う場合は定義する

社内で日常的に使っている専門用語や略語も、部署や役職が違う人には伝わらない可能性があります。

  • 原則として、誰にでもわかる言葉で書く
  • やむを得ず使う場合は、初出で正式名称と略称を併記する(例:顧客関係管理(CRM))

客観的な事実と主観的な所感を明確に分ける

報告書は事実に基づいた情報が不可欠です。しかし、そこから得られた所感や考察も重要です。この二つを混同しないように明確に区別して記載しましょう。

  • 事実:「面談時間は〇〇分、参加者は〇〇名でした。」
  • 所感:「先方は新しい提案に前向きで、次回のアポイントメントにつながりそうです。」

特に、所感は単なる感想ではなく、事実に基づいた分析や考察を記載することが求められます。

報告書の記載例

出張報告書

提出日: 2025年8月5日

氏名: 山田 太郎

出張期間: 2025年8月1日(金)〜2025年8月3日(日)

出張目的:

〇〇社の新製品「△△」に関する商談と情報収集

訪問先:

株式会社〇〇(東京都千代田区)

面会者:

営業部 部長:田中 様

営業部 課長:佐藤 様

商談結果・成果:

  • 「△△」の導入について、具体的な要件やスケジュールをヒアリング。
  • 先方から、導入にあたっての課題(コスト、既存システムとの連携)について伺った。
  • これらの課題に対し、弊社のソリューションを提案。
  • 次回の打ち合わせで、詳細な提案書を提出することで合意。

今後のアクションプラン:

  1. 山田:提案書の作成(〜2025年8月15日)
  2. 山田:次回の打ち合わせ日程調整(〜2025年8月8日)
  3. 鈴木(チームメンバー):提案書の内容についてレビューを依頼

所感:

今回の出張で、〇〇社のニーズと課題を深く理解することができました。特に、コスト面での懸念が大きいため、費用対効果を明確に打ち出した提案が重要になると感じています。先方の田中部長は提案に前向きな様子でしたので、今回の商談を成功に繋げられるよう、迅速に対応を進めていきます。

修理完了報告書

報告日: 2025年8月5日

報告者: 山田 太郎

お客様名: 株式会社〇〇

機器名: デジタル複合機 XYZ-1234

発生した不具合:

電源が入らない

修理内容:

  • 電源部の基盤にショートしている箇所を発見。
  • 基盤を新しいものに交換。
  • 交換後、正常に電源が入ることを確認し、動作テストを実施。

交換部品:

電源基盤(品番:ABC-123)

修理所要時間:

1.5時間

今後の注意点:

基盤の保護のため、直射日光が当たる場所や高温多湿な環境での使用はお控えください。また、電源コードの抜き差しは丁寧に行っていただくようお伝えしました。

備考:

お客様には修理完了後、動作確認にご協力いただき、ご納得いただけました。

竣工式終了報告書

提出日: 2025年8月5日

提出者: 山田 太郎

プロジェクト名: 〇〇新工場建設プロジェクト

開催日時: 2025年8月1日(金) 10:00〜11:30

開催場所: 〇〇新工場 敷地内

参加者:

  • 社内: 鈴木(取締役)、佐藤(工場長)、伊藤(プロジェクトマネージャー) 他10名
  • 社外: 株式会社〇〇 代表取締役 田中様 他関係者20名

式次第:

  1. 開式の辞
  2. 代表挨拶(鈴木 取締役)
  3. 来賓祝辞(田中 代表取締役)
  4. テープカット
  5. 閉式の辞

当日の様子:

天気にも恵まれ、厳粛な雰囲気の中で式典が進行しました。来賓の方々からは、プロジェクトの成功を称賛する温かいお言葉を多数いただきました。テープカットも滞りなく執り行われ、新工場の新たなスタートを飾るにふさわしい式典となりました。

課題・反省点:

式典後の懇親会への誘導がややスムーズでなかったため、次回の開催時には動線をさらに明確にする必要がある。

今後の展望:

今回の竣工式を機に、新工場での生産活動を本格的に開始し、事業のさらなる拡大を目指します。

まとめ:報告書作成を「個人のスキル」から「組織の力」へ

「伝わる」報告書は、個人のスキルに依存するものではありません。今回ご紹介したテンプレート作成ルール作りは、組織全体で報告書作成の「共通言語」を確立し、コミュニケーションの質を高めるための取り組みです。

ぜひ、日々の報告書からこれらのポイントを実践してみてください。そして、報告書作成の効率化と品質向上を、チーム全体の力で進めていきましょう。


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