意識変革のための研修プログラム
古参社員が企業の事業転換についてこれないという問題は、事業転換期にある多くの企業、特に長年の商習慣が根付いた地方の企業で共通して発生している、非常に難しく重要な課題です。
古参社員が時代に適合したスキルを身につけるには、会社側からの適切な支援が必要です。
この問題は、「社員の能力を捨てるか、活かすか」という経営判断でもあります。古参社員が持つ無形の資産を、新しいビジネスモデルの土台に組み込むことができれば、大手との競争に打ち勝つための大きな要因となり得ます。
古参社員の「気持ちの転換」と「新しい知識を受け入れるマインド」を醸成するためには、「知識付与型」の研修ではなく、「意識変革型(マインドセット)」研修が特に有効です。
古参社員は「長年のやり方が一番確実だ」「今さら新しいことを覚えても」という「硬直マインドセット」に陥りがちです。このマインドを、変化を前向きに捉える「成長マインドセット」に切り替えることが目的です。
| 研修テーマ | 目的と内容 | 期待される効果 |
| 組織の変化の必要性理解 | 「なぜ今、会社が変わらなければならないのか」を経営層から直接伝える場を設けます。「今のままでは会社(=自分たちの職場)が立ち行かなくなる」という危機感を共有します。 | 変化を「会社からの一方的な命令」ではなく、「生き残りのための自分事」として捉えるようになります。 |
| アンラーニング(学習棄却) | 「これまでやってきたことを否定するわけではないが、今は通用しない」という認識を持たせます。成功体験を一旦脇に置き、「新しい知識を学ぶことは、古い知識を捨てることではない」と理解させます。 | 「自分のやり方を曲げたくない」という抵抗感を和らげ、新しい学習への扉を開きます。 |
| 成長マインドセットの醸成 | 「失敗は学びのチャンス」「努力は報われる」といった考え方を学びます。新しい知識やITへのチャレンジを促す心の持ち方を育てます。 | 「自分はまだ成長できる」「新しい役割で貢献できる」という自信とモチベーションの向上につながります。 |
成功のポイントは「横の繋がり」の活用です。
古参社員同士が「新しいことを学ぶ仲間」としてコミュニティを形成し、お互いに励まし合い、「自分だけじゃない」と感じられる環境を作ることが、モチベーションの維持に最も効果的です。
これらの研修は、外部の研修会社に依頼することで、中立的な立場からマインドセットの転換を促すことができます。
外部研修機関
古参社員やシニア層の「マインドセット転換」や「リスキリング(学び直し)」に特化した研修プログラムは、多くの人材開発・研修専門機関によって提供されています。
「気持ちの転換」や「新しい知識の受け入れ」を目的とする研修は、主に「キャリアデザイン」「マインドチェンジ」「リスキリング」というキーワードで展開されています。
これらの研修を課題解決に活かすためには、以下の点に留意して選定・実施することをおすすめします。
- 「アンラーニング」の要素があるか:
- 単に新しい知識(リスキリング)を教えるだけでなく、「今までの成功体験を手放し、新しい考え方を受け入れる(アンラーニング)」ためのワークが含まれているかを確認します。
- 会社の「危機感とビジョン」を伝える枠があるか:
- 研修の冒頭で、社長や役員が「なぜ今、この研修が必要なのか」「会社が目指す新しい方向性」を直接伝える時間を組み込むことが非常に重要です。外部研修と会社のメッセージを融合させることで、当事者意識を高める効果があります。
- 内省(リフレクション)とアウトプットの機会:
- 座学だけでなく、グループワークやディスカッションを通じて、受講者同士が「新しいことを始める不安」を共有し、「自分たちが持つノウハウをどう活かすか」を話し合う場が多い研修を選びましょう。
既存研修のカスタマイズ
これらの研修機関は、貴社の状況に合わせてプログラムをカスタマイズすることが可能です。
このような研修は、古参社員の皆様のプライドを尊重し、「上から教え込む」のではなく、「自ら気づき、動機付けられる」ことが、成功の鍵となります。
「ゴリ押し」ではなく「気づき」を中心とした研修、そしてプログラムのカスタマイズ性について説明します。
多くの研修専門機関は、標準的なプログラム(公開講座)を持っている一方で、企業ごとの具体的な課題や受講者の特性に合わせて内容を設計する「講師派遣型(インハウス)オーダーメイド研修」を主軸としています。
「地方卸売業の古参社員」という明確なターゲットと、「ウェブ転換期」という具体的な課題は、研修機関にとってカスタマイズしやすい要素が揃っていると言えます。
カスタマイズの具体例
- プログラム名の変更: 「マインドセット強化研修」ではなく、「〇〇商事の未来創造ワークショップ」など、プライドを尊重した名称に調整できます。
- 事例の変更: 汎用的な事例ではなく、業界や地域の具体的な状況に合わせたケーススタディやロールプレイングを組み込めます。
- ゴール設定の調整: 「新しいスキルを習得する」ことよりも、「自分の長年の経験知を、会社の新しいビジネスにどう活かすかを見つける」という気づきをゴールに設定できます。
「気づき中心」の研修設計
「気づき」を促す研修は、主に以下の3つのアプローチで構成されます。
アプローチ①:過去の経験を「資産」として棚卸しする
「あなたの経験はもう古い」というメッセージを排除し、「あなたの経験は会社の宝である」という前提で、その価値を再発見させます。
アプローチ②:対話と内省による「未来の自分」の発見
知識を一方的にインプットするのではなく、自分自身で答えを見つけさせる構造にします。
アプローチ③:ITやデジタルを「脅威」ではなく「道具」として体験する
いきなりIT研修ではなく、導入として「ITは道具であり、お客様をより幸せにするための手段である」というマインドを根付かせます。
これらの要素を取り入れたオーダーメイドの研修を企画することで、古参社員の皆様のプライドを守りながら、自発的な脱皮を促すことが可能です。


