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ハラスメント 社員研修

ハラスメント研修は義務ですか?その内容は?

Last Updated on 2025年7月29日 by

ハラスメント研修は義務ですか

ハラスメント研修の義務化は、主に以下の法律に規定されています。

労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)

第30条の2で、事業主は職場におけるパワーハラスメントを防止するために必要な措置を講じなければならないと規定されています。

大企業では2020年6月、中小企業では2022年4月から義務化されています。

男女雇用機会均等法

第11条で、事業主は職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するために必要な措置を講じる必要があると規定されています。

育児・介護休業法

第25条で、事業主は職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(マタニティハラスメント、ケアハラスメント)を防止するために必要な措置を講じる必要があると規定されています。

これらの法律に基づき、厚生労働省が具体的な「雇用管理上講ずべき措置等に関する指針」を定めており、その中で研修の実施が重要な措置の一つとして挙げられています。

研修の内容について

厚生労働省の指針や関連情報から、ハラスメント研修で盛り込むべき内容は以下の点が挙げられます。

事業主の方針等の明確化と周知・啓発

職場におけるハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ・ケアハラ等)の内容や、ハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること。

行為者に対して厳正に対処する旨の方針や対処の内容(就業規則等への規定)を労働者に周知・啓発すること。

相談窓口の担当者、人事部門、管理職など、関係者がハラスメントに関する関心と理解を深めること。

ハラスメントの定義と種類、具体例

各ハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ・ケアハラなど)の定義を理解させる。

ハラスメントに該当する具体的な言動や行為の例を提示し、してはいけないことの理解を深める。特に、パワハラについては「優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」「労働者の就業環境が害されるもの」という3つの要素を説明し、6つの類型(身体的攻撃、精神的攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害)を具体的に解説することが有効です。

「指導」と「ハラスメント」の線引きを明確にする。

ハラスメントが労働者や企業に与える影響

ハラスメントが被害者にもたらす精神的・身体的苦痛、モチベーション低下、生産性低下などの悪影響を理解させる。

企業イメージの低下、訴訟リスク、人材流出など、企業全体に与える悪影響についても説明する。

相談窓口と対応フロー

ハラスメントに関する相談窓口がどこにあるのか、どのような体制で相談を受け付けるのかを明確にする。

相談があった場合の事実確認、被害者・行為者への対応、再発防止措置などの具体的な対応フローを説明する。

相談者や行為者のプライバシー保護、相談したことによる不利益な取り扱いの禁止を徹底する。

ハラスメントの予防と対策

労働者一人ひとりがハラスメントをしない、させないための意識を持つことの重要性を強調する。

日頃からのコミュニケーションの重要性、多様な価値観の尊重について考える機会を設ける。

管理職に対しては、部下との適切なコミュニケーション、指導のあり方、ハラスメント発生時の初期対応など、より実践的な内容を盛り込む。

その他

最新の法改正や社会情勢を踏まえた内容とすること。

従業員の属性(一般社員、管理職、新入社員など)に合わせて、内容や深さを調整することも効果的です。

一方的な講義だけでなく、グループワークや事例検討などを取り入れ、参加者が主体的に考える機会を設けることも推奨されます。

厚生労働省のウェブサイト「あかるい職場応援団」では、ハラスメント対策に関する詳細な情報や、企業向けの各種ガイドライン、研修資料などが提供されていますので、参考にされることをお勧めします。

ハラスメント防止研修レジメ(例)

以下は、ハラスメント防止研修のレジュメの一例です。対象者を一般的な従業員(管理職・一般社員含む)と想定し、半日程度の研修を想定した内容です。貴社の具体的な課題や従業員の皆さんの状況に合わせて、内容の深さや重点を置くポイントを調整してください。特に、事例を用いたグループワークやロールプレイングを取り入れると、より実践的な研修になります。

本研修の概要

研修目的

ハラスメントの定義と種類、具体例を理解する。

ハラスメントが個人と組織に与える悪影響を認識する。

ハラスメントを未然に防ぎ、快適な職場環境を維持するための行動を学ぶ。

ハラスメントが発生した場合の適切な対応について理解を深める。

研修対象

全従業員(管理職、一般社員)

研修時間

3時間(休憩15分含む)

1. はじめに:なぜ今、ハラスメント対策が必要なのか?(15分)

社会情勢と企業の責任

ハラスメントに関する法改正(パワハラ防止法の義務化など)の背景

企業の社会的責任とハラスメント対策の重要性

ハラスメントが企業にもたらすリスク(信用の失墜、人材流出、法的措置など)

本研修の目的と重要性

「自分ごと」として捉えることの重要性

快適な職場環境づくりのために、全員で取り組むべきこと

2. ハラスメントの基礎知識:知ることから始める(60分)

ハラスメントとは何か?

ハラスメントの共通認識:相手の尊厳を傷つけ、就業環境を害する行為

悪意の有無に関わらずハラスメントになる可能性

各種ハラスメントの定義と具体例

パワーハラスメント(パワハラ)

定義:優越的な関係を背景に、業務の適正な範囲を超えて行われる言動であって、労働者の就業環境を害するもの

6つの類型とその具体例(身体的攻撃、精神的攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害)

「指導」と「パワハラ」の線引き:どこからがハラスメントか?

セクシュアルハラスメント(セクハラ)

定義:職場において行われる性的な言動に対する、労働者の意に反する対応により、その労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されたりすること

典型的な具体例:対価型、環境型

同性間、男性から女性へのセクハラだけでなく、女性から男性へのセクハラ、同性間のセクハラも含まれること

妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(マタハラ・ケアハラ)

定義:職場において行われる妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関する言動により、就業環境が害されたり、不利益な取扱いを受けたりすること

典型的な具体例と留意点

その他のハラスメント(アルコールハラスメント、モラルハラスメントなど、必要に応じて触れる)

被害者・加害者・周囲の人の心理と影響

ハラスメントが被害者にもたらす影響(精神的・身体的健康、モチベーション、キャリアなど)

無自覚な加害者にならないために

見て見ぬふりをする周囲の人が職場に与える影響

3. ハラスメントの予防と良好な職場環境づくり(60分)

企業としての方針と取り組み

当社のハラスメント防止規程、就業規則の確認

懲戒処分の対象となることの明確化

相談窓口の周知と利用促進

一人ひとりができるハラスメントの予防策

コミュニケーションの重要性:日頃からの良好な人間関係構築

多様性の尊重:価値観、文化、バックグラウンドの違いを理解する

アサーティブネス:相手を尊重しつつ、自分の意見を適切に伝えるスキル

アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見):自分の思い込みに気づき、ハラスメントに繋がる言動を防ぐ

「嫌だ」と感じたら伝える勇気:早期対応の重要性

見て見ぬふりをしない勇気:周囲の人の役割

管理職に求められる役割(管理職が参加している場合、特に強調)

部下の状態を常に把握するアンテナ

適切な業務指示・指導とハラスメントとの線引き

日頃からのコミュニケーションと信頼関係の構築

ハラスメントの兆候を早期に察知し、対応する意識

4. ハラスメント発生時の対応と相談窓口の活用(45分)

ハラスメントを受けてしまったら

一人で抱え込まない:相談することの重要性

相談窓口の利用方法、相談ルート

事実の記録:いつ、どこで、誰が、何を、どうしたか

ハラスメントを目撃したら

見て見ぬふりをしない

相談を促す、あるいは相談窓口へ情報提供する

相談があった場合の対応プロセス

相談内容の聴取とプライバシー保護

事実確認の方法

被害者・行為者への対応(配置転換、懲戒処分など)

再発防止策の検討と実施

相談者・行為者への不利益な取り扱いの禁止

当社の相談窓口と担当者

具体的な相談窓口(担当部署、担当者名、連絡先など)

相談後の流れについて改めて説明

5. 質疑応答とまとめ(15分)

質疑応答

研修の振り返り

快適な職場環境は全員で作るものというメッセージ

本日の研修内容を今後の行動に活かすことへの期待

持ち物

筆記用具

(配布資料があれば)配布資料


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