就業規則と労働契約の関係は、労働契約法第7条に定められています。労働契約法第7条は就業規則が労働者の労働契約の内容となるための要件を定めた規定です。
条文
条文の具体的な内容は以下の通りです。
労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。
ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
就業規則が契約内容となる要件
労働者と使用者が個別の労働条件を詳細に合意しなかった場合でも、以下の2つの要件を満たせば、就業規則に定められた労働条件が自動的に労働契約の内容となります。
1. 合理的な労働条件であること
就業規則に定められている労働条件が、社会一般の常識や当該事業場の実態に照らして合理的なものである必要があります。
2. 労働者に周知させていたこと
使用者が作成した就業規則を、労働者がいつでも確認できる状態にしておく必要があります。具体的には、事業所の見やすい場所に掲示・備え付ける、書面で交付する、電子データでいつでも閲覧できるようにするなどです(労働基準法第106条)。
個別合意の優先(ただし書)
第7条ただし書きは、上記の要件を満たしていても、就業規則の内容と異なる個別の合意が存在する場合は、原則として個別の合意が優先することを定めています。
合意した労働条件 | 就業規則の労働条件 | 結果(優先される内容) |
就業規則より良い | 良い(例:時給1,100円) | 個別合意(時給1,100円)が優先 |
就業規則より悪い | 悪い(例:時給900円) | 第12条により就業規則(時給1,000円)が優先 |
第12条(就業規則違反の労働契約)との関係
ただし書の例外として「第十二条に該当する場合を除く」とあります。労働契約法第12条は、就業規則で定める基準に達しない労働条件を個別の労働契約で定めた場合、その部分は無効となり、就業規則の基準まで労働条件が引き上げられる(補充される)と定めています。
したがって、労働者にとって不利になるような個別合意は、就業規則の基準に達しない限り、無効となり就業規則の基準が適用されます。これは、就業規則が労働条件の最低基準としての機能も持つことを示しています。
適用されるタイミング
第7条は、労働契約を新たに締結する際の就業規則の効力について定めています。
既に成立している労働契約の内容を、就業規則の変更によって変える場合は、労働契約法第9条および第10条の規定が適用されます。特に労働者にとって不利益な変更をする場合は、より厳格な要件(変更の合理性や労働者の同意など)が必要となります。