株主総会の招集手続きを省略することができますか?

株主総会

はい、株主総会の招集手続きを省略することは可能です。ただし、これには会社法に定められた要件を満たす必要があります。

招集手続きの省略(全員出席総会)

最も一般的な省略方法で、「全員出席総会」とも呼ばれます。

この規定は、株主総会を招集するための手続きを経ることなく総会を開催できるというものです。省略の要件は以下の通りです。

  • 全株主の同意: 会社の全株主の同意がある場合に限って、招集の手続き(招集通知の発送期限など)を経ずに株主総会を開催し、決議を行うことができます。
  • 非公開会社での利用が多い: この方法は、株主の数が少ない非公開会社(特にオーナー企業や家族経営の会社など)で、緊急に株主総会を開催する必要がある場合に利用されることがほとんどです。
  • 注意点: 全株主が出席したとしても、一人でも欠席者や反対者がいる場合は手続きを省略することはできません。また、議題の決定自体は省略できないため、議題については事前に株主間で合意しておく必要があります。

同意書について

同意の形式については、法律上は書面かどうかの規定はありません。後々のトラブル防止や、議事録の証拠能力を確保するため、実務では必ず書面で同意を確認します。

証拠の確保:

口頭での同意は、後になって「同意していなかった」「議題を知らされていなかった」などと争われた場合に、立証が非常に困難になります。特に、会社の解散や重要な定款変更など、将来的に株主間で利害の対立が生じ得る決議を行う場合、同意の有無は極めて重要になります。

登記手続きとの関係:

役員の変更など、株主総会の決議を原因とする変更登記を行う際、法務局に提出する株主総会議事録は、招集手続きの適法性を証明する重要な資料となります。招集手続きを省略した場合、議事録には「全株主が招集手続きの省略に同意の上、総会に出席した」旨を記載するのが一般的です。

同意書のサンプル

株主総会招集手続きに関する同意書

〇〇株式会社御中

令和〇年〇月〇日に開催予定の〇〇株式会社定時株主総会において、会社法299条第1項に定める招集通知期間を短縮し、招集手続きを省略して定時株主総会が開催されることに同意します。

令和〇年〇月〇日

株主住所
株主氏名          

議決権行使のための通知・開示の省略(上場会社等では不可)

株主総会の招集通知の発送期限は、通常、総会日の2週間前や1週間前と定められていますが、この通知に含める「株主総会参考書類」や「計算書類」などの提供(開示)については、特定の条件で省略が可能です。

  • 非公開会社であること
  • 書面投票制度または電子投票制度を採用していないこと

これらの要件を満たす会社(株主の権利行使に大きな影響がないと判断される会社)においては、招集通知に参考書類や計算書類を添付する義務を課さないことが会社法で認められています。ただし、株主から請求があった場合には、これらの書類を提供しなければなりません。