株主とは?
株主とは、株式会社に出資(投資)を行い、その見返りとして会社の「株式」を保有する個人または法人のことです。株主は、出資額(保有する株式の数)に応じて、会社の実質的な所有者(オーナー)の一員という地位を得ます。
株式会社では、出資者である株主と、日々の経営を担う経営者(取締役など)が分離しているのが大きな特徴です。この仕組みにより、株主は限定的な責任(出資した金額の範囲内での責任)を負うだけで、会社の利益を享受し、経営に間接的に参加する権利を持ちます。
株主の基本的な権利
株主が保有する権利は、大きく分けて自益権(株主個人の利益に関わる権利)と共益権(会社の経営や存続に関わる権利)の2種類があります。
自益権(経済的な利益)
会社が得た利益の分配や、会社が解散した際の財産の分配を受ける権利など、株主個人の経済的な利益に関する権利です。
- 剰余金の配当を受ける権利(配当請求権): 会社が事業で得た利益(剰余金)を、保有株式数に応じて配当金として受け取る権利です。
- 残余財産の分配を受ける権利: 会社が解散(清算)する際、借金などを全て返済してなお財産が残った場合に、保有株式数に応じてその残った財産の分配を受ける権利です。
- 株主優待を受ける権利(任意): 会社によっては、自社製品やサービス券などを株主に提供する株主優待制度を設けている場合があります。これは会社法上の義務ではありませんが、投資家を惹きつけるインセンティブとなります。
共益権(経営への参加・監督)
会社の経営方針や重要事項の決定に参加したり、取締役の職務執行を監督したりすることを通じて、株主全体の利益を守る権利です。
- 議決権: 会社の重要事項を決定する株主総会に出席し、議案に対して賛否の意思表示を行う権利です。原則として一株につき一議決権を持ちます(種類株式で制限される場合を除く)。
- 株主総会招集請求権: 一定割合(総株主の議決権の100分の3以上など)の株式を持つ株主は、必要に応じて臨時株主総会の招集を取締役に対して請求できます。
- 会計帳簿閲覧謄写請求権: 一定割合(総株主の議決権の100分の3以上など)の株式を持つ株主は、会社の会計帳簿や関連資料の閲覧・謄写(コピー)を請求できます。
- 株主代表訴訟提起権: 取締役などが会社に損害を与えたにもかかわらず、会社がその責任を追及しない場合、一定の株式を持つ株主が会社に代わって取締役の責任を追及する訴訟(株主代表訴訟)を起こすことができます。
株主の義務と責任
出資の履行義務
株主が負う最も基本的な義務は、株式を取得する際に出資金を会社に払い込む出資の履行義務です。一度払い込んだ出資金は、原則として会社が存続する限り払い戻しを請求することはできません。
株主有限責任の原則
株主は、会社の債務について直接責任を負うことはありません。これを株主有限責任の原則といいます。会社が倒産するなどして負債を抱えた場合でも、株主が負う損失は出資した金額(保有する株式の取得価額)の範囲内に限定されます。これは、株式会社制度が投資を促す上で最も重要な仕組みの一つです。
持株比率と影響力
株主が会社に対して行使できる権利は、原則として保有する株式の割合(持株比率)によって強さが変わります。
持株比率の目安 | 権利・権限の概要 |
1株でもあれば | 剰余金配当請求権、残余財産分配請求権、議決権(原則)など、基本的な権利を行使できます。 |
1/3超(約33.4%) | 拒否権:株主総会の特別決議事項(定款変更、合併、解散など会社の根幹に関わる事項)を単独で阻止できます。 |
1/2超(50%超) | 支配権:株主総会の普通決議事項(取締役の選任・解任、計算書類の承認など)を単独で決定できます。実質的な経営権を握れます。 |
2/3超(66.7%超) | 完全支配権:株主総会の全ての決議を単独で可決できます。会社の経営を完全に支配する立場となります。 |
株主は、これらの権利を通じて、会社の経営に間接的に影響を与え、その成長と利益を共有する、株式会社にとって最も重要な構成員です。
株券
株券(かぶけん)とは、株式会社が発行していた株式の権利を表す有価証券(紙の証書)のことです。かつては、この紙の証書を所有していることが、会社に対する株主の地位や権利(議決権、配当金を受ける権利など)を証明する基本的な手段でした。
しかし、現在、日本の上場会社の株式においては、この紙の株券は原則として存在していません。
株券電子化
日本では、株式の管理や取引の効率化、紛失・盗難・偽造のリスク軽減などを目的として、2009年(平成21年)1月5日に上場会社の株券が一斉に電子化(ペーパーレス化)されました。
電子化以降、上場会社の株主の権利は、紙の株券ではなく、証券保管振替機構(ほふり)という機関と、皆さんが利用している証券会社の口座などで、電子的にデータとして管理されています。
電子化後の株主の証明
現在、株主としての権利(誰が、どれだけの株式を保有しているか)は、株主名簿と、証券会社の口座に記録された電子データによって証明されます。株式の売買も、株券の現物の受け渡しを伴わず、口座間の振替によって行われます。
非上場会社の場合
非上場会社(株式を証券取引所に上場していない会社)については、会社法上、定款で定めることで株券を発行しないことが原則となっています(株券不発行制度)。ただし、定款で「株券を発行する」と定めている非上場会社であれば、現在でも紙の株券を発行する場合があります。