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安全衛生管理

統括安全衛生責任者と総括安全衛生管理者の違いについて新入社員に説明する

Last Updated on 2025年6月8日 by

統括安全衛生責任者と総括安全衛生管理者

新入社員の皆さん、こんにちは!「統括安全衛生責任者」と「総括安全衛生管理者」、名前が似ていてややこしいですよね。違うのは統括と総括、責任と管理です。少しの違いですが、実は役割も選任される状況も大きく違います。現場に入る前にこの二つの違いについて是非理解していただくようお願いします。

一言で言えば、「統括安全衛生責任者」は特定のプロジェクトの現場監督、「総括安全衛生管理者」は会社全体の安全衛生の責任者、といったイメージでとらえてください。

統括安全衛生責任者とは

統括安全衛生責任者(とうかつあんぜんえいせいせきにんしゃ)の方は、主に建設業や造船業など、一つの現場に複数の会社(下請けさん)が同時に作業するような場合に選任されます。

どんなところに必要?

特定の危険な作業現場、具体的にはトンネル工事や橋梁建設、高層ビルの建設など、危険が伴う現場に配置されます。

複数の会社が同じ場所で作業するというのは、例えば、大きな建設現場で、A社は基礎工事、B社は鉄骨組み、C社は電気工事…といった形で、たくさんの会社が入り混じって作業する場合です。

役割は?

統括安全衛生責任者の役割は、異なる会社同士の作業がぶつかって事故が起きないように、現場全体の安全を「統括」して管理することです。具体的には、以下のようなことを行います。

作業の調整:各社の作業スケジュールや内容を調整し、危険な重なりがないか確認します。
連絡体制の確立:各社の安全担当者と密に連絡を取り合い、情報共有を徹底します。
現場の巡視:常に現場を回り、危険な箇所がないか目を光らせます。
安全教育の指導や援助:下請けさんの安全教育にアドバイスを送ったり、支援したりします。

つまり、現場での事故を未然に防ぐための「現場のリーダー」というイメージです。資格が必須というわけではなく、現場を実際に統括する権限を持った人が選ばれます。

総括安全衛生管理者とは

総括安全衛生管理者(そうかつあんぜんえいせいかんりしゃ)の方は、会社の業種や規模に応じて選任されます。会社の安全衛生管理の「総責任者」です。

どんなところに必要?

会社の規模が大きくなり、労働者の数が増えた場合(例えば、製造業で300人以上、卸売業で1000人以上など、業種によって基準は異なります)に選任が義務付けられます。

役割は?

総括安全衛生管理者の役割は、会社全体の安全衛生管理の計画を立て、実行し、評価する「総括」的な責任者です。具体的には、以下のようなことを行います。

1.会社全体の安全衛生に関する基本的な考え方や目標である安全衛生方針を定めます。

2.安全衛生計画を作成して実施します。具体的には、健康診断の実施、作業環境の改善、危険な機械・設備の対策など、年間を通じた安全衛生計画を進めます。

3.労働災害は起こってはならないことですが、もし起きてしまったら、原因を徹底的に調べて、二度と起こさないための対策を考えて実施します。

4.安全衛生委員会を設置・運営し、従業員の意見も聞きながら改善を進めます。

以上を総合すると、総括安全衛生管理者は、会社全体の安全と健康を守るための「司令塔」のような存在です。会社によっては工場長や事業部長など、その事業を実質的に統括する権限を持つ人が選ばれます。資格が必須なわけではありませんが、安全衛生に関する幅広い知識と経験が求められます。

まとめると次の表のとおりとなります。

項目統括安全衛生責任者総括安全衛生管理者
主な対象建設業・造船業など、複数の会社が働く特定の現場会社全体(特定の業種、規模の会社)
選任理由異なる会社間の連携による事故防止会社全体の労働者の安全と健康の確保
役割のイメージ現場の安全監督(プロジェクトごと)会社全体の安全衛生の司令塔(組織全体)
主な業務作業間の調整、現場の巡視、関係請負人への指導・援助など安全衛生計画の策定・実行、健康診断、事故原因調査、委員会運営など

いかがでしたでしょうか? 名前が似ていて、「安全を守る」という目的は同じですが、役割や責任が違うことがご理解いただけたでしょうか? 皆さんが会社で働く上で、安全は最も大切なことの一つです。職場の安全は命や健康に直接影響することですから、わからないことは決してそのままにしないで、先輩や上司に聞いてしっかり理解してくださいね。


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