情報セキュリティに関する課長研修の企画をご提案します。課長は、組織の情報セキュリティを現場で実践し、部下を指導・監督する重要な役割を担います。そのため、単なる知識習得に留まらず、リスクマネジメントの視点や、インシデント発生時のリーダーシップ発揮に焦点を当てた内容が重要です。
課長研修「情報セキュリティ」で学ぶべき主要な項目と解説
課長層に特に求められる知識とスキルに基づき、以下の3つの主要項目を提案します。
情報セキュリティを取り巻く最新の脅威とリスクマネジメント
近年、情報セキュリティの脅威はランサムウェア、サプライチェーン攻撃、内部不正など、手口の巧妙化・多様化が進んでいます。課長には、これらの最新の脅威動向を正確に把握し、自部署の業務環境に潜むリスクを特定・評価する能力が不可欠です。
具体的には、
- 自社の情報資産を分類・特定し、それぞれの資産がどのような脅威に晒されているかを洗い出す
- 脅威が顕在化した場合の事業への影響(損失)を評価し、対応の優先順位付けを行う
- テレワーク環境やクラウドサービスの利用拡大に伴う、新たなセキュリティリスクと対策を理解する
- 技術的な対策だけでなく、人的要因(ヒューマンエラー、内部不正)によるリスクを管理するための部門体制やルールを整備する
といった、組織全体のリスク低減に繋がるリスクマネジメントの考え方を習得することが、課長の重要な責務となります。
情報セキュリティポリシーの徹底と部門内統制
情報セキュリティポリシーは、情報資産を守るための社内指針であり、課長はこれを部門内で徹底させる責任者です。研修では、ポリシーの基本的な構成(基本方針、対策基準、実施手順)を再確認するとともに、「現場で機能させる」ための実践的な知識を深めます。
具体的には、
- ポリシーに定められたパスワード運用、情報機器の持ち出しルール、メール誤送信防止策などを、部下が確実に守るための指導・監督方法を学ぶ
- メディアポリシーやSNS利用のルールを理解し、従業員の私的な利用が企業の信頼を損なわないよう、適切な教育と注意喚起を行う
- 部下の入退職や異動に伴うアクセス権限の管理(アカウント管理)を適切に行い、機密情報への不正アクセスを防ぐための手順を明確にする
- 日々の業務の中で、ルールが守られていない「ヒヤリハット事例」を収集し、再発防止策を部門全体で共有・実施する部門内統制(内部統制)の仕組みを構築する
ことが求められます。
インシデント発生時の初動対応と危機管理
いかに予防策を講じても、情報漏洩やシステム障害といったインシデント(事故)のリスクをゼロにすることはできません。課長は、インシデント発生時の現場責任者として、被害を最小限に抑えるための適切な初動対応と危機管理能力が求められます。
具体的には、
- マルウェア感染や情報漏洩の疑いが生じた際の、「誰に、いつ、何を報告・連絡・相談するのか」というインシデント対応プロセスを習得する
- 初動対応として、問題の切り分け、拡散防止(ネットワーク隔離など)、証拠保全を迅速に行うための手順を理解する
- 情報漏洩が発生した場合の個人情報保護法に基づく対応、関係者・取引先への報告、そして広報・情報開示の際の留意点を学ぶ
- インシデント対応後の原因究明と再発防止策の策定に、部門責任者としてどのように関与すべきかを理解し、「危機を乗り越える」リーダーシップを発揮する姿勢を身につける
ことが、組織の信頼維持に直結します。
課長研修「情報セキュリティ」2日間カリキュラム案
時間帯 | テーマ | 形式 | 目的・学習内容(課長の役割に特化) | |
1日目 | 情報セキュリティの現状認識とリスクマネジメント | |||
9:00-9:30 | オリエンテーション:研修の目的と課長に求められる役割 | 講義/ディスカッション | 課長としてのセキュリティ統制責任を明確化。 | |
9:30-11:30 | セッション1:最新のサイバー脅威と被害事例の分析 | 講義/ケーススタディ | ランサムウェア、標的型攻撃、内部不正など、企業のセキュリティ「10大脅威」を理解し、自社の事業影響を考察。 | |
11:30-12:30 | セッション2:情報資産の特定とリスク評価(演習) | 演習/グループワーク | 自部署で取り扱う情報資産を洗い出し、潜在的なリスクを特定・評価し、対策の優先順位付けを行う。 | |
12:30-13:30 | 昼食 | |||
13:30-15:00 | セッション3:部門内統制とポリシー徹底の技術 | 講義/ディスカッション | 情報セキュリティポリシーの構成と、「現場で機能させる」ための効果的な教育・指導・監督の方法を学ぶ。 | |
15:00-17:00 | セッション4:ヒューマンリスクの管理と内部不正対策(演習) | ケーススタディ/演習 | メール誤送信、情報機器の紛失、意図的な不正などの事例に基づき、課長として取るべき予防策と対応を検討。 | |
17:00-17:30 | 1日目のまとめと質疑応答 | 振り返り | ||
2日目 | 実践的なインシデント対応とリーダーシップ | |||
9:00-9:30 | 2日目の導入:インシデント対応の重要性 | 講義 | 被害を最小化するための課長の役割を確認。 | |
9:30-11:30 | セッション5:インシデント対応プロセスの理解 | 講義/ワーク | インシデント発見時(初動)の報告・連絡・相談(ホウ・レン・ソウ)ルート、切り分け、証拠保全の手順を習得。 | |
11:30-12:30 | セッション6:危機発生時の対外対応と法規制 | 講義/解説 | 個人情報保護法、GDPRなど関連法規に基づく、顧客・取引先・監督官庁への情報開示(広報)に関する留意点を学ぶ。 | |
12:30-13:30 | 昼食 | |||
13:30-15:30 | セッション7:インシデント対応シミュレーション(総合演習) | ロールプレイング/演習 | 模擬的なインシデント事例(例:標的型攻撃による情報漏洩)に基づき、課長として初動から対外報告までの一連の対応を実践。 | |
15:30-16:30 | セッション8:再発防止と部門風土の醸成 | ディスカッション | インシデント対応後の原因究明、再発防止策の部門展開、そして部下のセキュリティ意識を高める指導方法を議論。 | |
16:30-17:00 | まとめと行動計画の策定 | 個人ワーク/発表 | 研修で学んだことを踏まえ、自部署で来週から取り組む具体的な「情報セキュリティ強化計画」を作成し発表。 |