消防計画の作り方:火災から会社を守る「行動マニュアル」

防火・防災

会社の防火・防災体制を確立するために、まず作成しなければならないのが「消防計画」です。これは、火災を未然に防ぎ、もしもの事態に備えるための重要な行動マニュアルです。今回は、この消防計画について、作成から届出まで、そのポイントをわかりやすく解説します。

消防計画とは?なぜ必要なの?

防火管理者は、法律に基づいて「防火管理に係る消防計画」を作成し、消防署に届け出る義務があります。

この計画は、火災予防のルールから、万一火災が発生した場合に被害を最小限に抑えるための行動まで、職場全体で共有し実行するためのものです。従業員一人ひとりが何をすべきかを明確にし、安全確保を徹底することが目的です。

消防計画のひな形や届出の様式は、各地域の消防本部のホームページからダウンロードできます。特に、東京消防庁のウェブサイトに掲載されている作成例は非常に参考になります。

消防計画に盛り込むべき10の項目

消防計画には、主に以下の項目を盛り込む必要があります。

1. 自衛消防隊の編成と任務

火災や地震などが発生した際、被害を最小限に抑えるための初期消火、通報、避難誘導、応急救護などを担当するチームです。責任者と任務を明確に定めます。

2. 日常の火災予防対策

建物の構造、避難経路、火気設備、消防設備などを、毎日または定期的に自主的に点検し、安全を確保します。

3. 消防用設備の点検・整備

消火器やスプリンクラー設備など、消防用設備が常に正常に機能するよう、点検者と点検時期を定めて実施します。

4. 避難経路の維持管理

避難口、階段、廊下、通路などに、避難の妨げになる物を置かないよう徹底します。

5. 防火戸などの維持管理

防火戸や防火シャッターがスムーズに作動するよう、付近に物を置かないルールを定めます。

6. 収容人員の管理

建物の収容人数には限りがあります。過剰収容を防ぎ、適正な人数管理を行うための方法を定めます。

7. 防火教育の実施

従業員全員(社員、アルバイト、パートなど)を対象に、火災予防や初期対応に関する教育を定期的に行います。

8. 消防訓練の実施

火災や地震に備え、初期消火、通報、避難誘導など、実践的な訓練を定期的に行います。

  • 特定防火対象物(不特定多数の人が利用する建物)年に2回以上の消火・避難訓練が義務付けられています。
  • 非特定防火対象物(事務所、共同住宅など):消防計画で定めた回数の訓練が必要です。また、訓練を実施する際は、事前にその旨を消防機関に届け出る必要があります。

9. 非常時の連絡体制と行動

火災発生時の初期消火、通報、避難誘導を迅速かつ効果的に行うための具体的な手順を定めます。

10. 工事中の防火管理

建物内で工事を行う場合、火気の使用や危険物の管理、作業員の安全対策などを定めた「工事中の消防計画」を別途作成し、消防署に届け出る必要があります。

消防計画作成の3つのポイント

計画書は、ただ形式的に作るだけでは意味がありません。以下のポイントを押さえることが重要です。

  • シンプルでわかりやすく:専門知識がない人でも理解できるよう、簡潔な文章を心がけます。
  • 実践的な内容に:現場の状況に合わせて、本当に実行可能な内容に落とし込みます。
  • 役割を明確に:責任者だけでなく、担当者や、責任者が不在の場合の代行者も明確にしておきましょう。

作成した消防計画は、防火管理者の責任だけでなく、経営者である管理権原者の理解を得ることが非常に重要です。事前に内容をしっかり説明し、協力を得ましょう。

作成後の手続き

完成した消防計画は、控えを含めて2部を準備し、所轄の消防署に提出します。一部に受領印を押してもらって返却されるので、防火関係の重要な書類として保管しておきましょう。



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