Last Updated on 2025年9月14日 by 勝
消防法では、「消防用設備等の点検」と「防火対象物定期点検」という2つの定期点検が定められています。ここでは、後者の「防火対象物定期点検」に関して詳しく説明します。
定期点検が必要な防火対象物とは
「防火対象物定期点検報告制度」は、特定の用途や規模に該当する建物について、火災予防のための管理状況を専門家が点検し、その結果を消防署に報告することを義務付けています。
具体的には、以下のいずれかに該当する建物が対象となります。
- 特定用途の建物で収容人員が300人以上
- 百貨店、映画館、ホテル、病院、飲食店など、不特定多数の人が出入りする建物や、災害時に自力で避難することが難しい人が利用する建物(特定防火対象物)。
- 特定の条件に該当する小規模な特定用途建物
- 収容人員が30人以上300人未満の建物で、特定用途に供される部分が3階以上の階または地階にあり、かつ、そこから避難階に通じる階段が一つしかないもの。
これは、小規模ながらも避難が困難な「雑居ビル」などでの火災事故を防ぐために設けられた制度です。
どのような点検をするのですか
点検は、主に以下の項目について行われます。これは、消防用設備自体の点検とは異なり、防火管理体制や建物の管理状況が適切かを確認するものです。
- 防火管理体制:防火管理者が選任されているか、消防計画は作成・届け出されているか、消防訓練が実施されているか、といった防火管理業務の実施状況。
- 避難経路の確保:階段や廊下、避難口、防火戸の付近に避難の障害となる物が置かれていないか。
- 防火設備の管理:防火戸が正常に作動するか、防火シャッターの降下に支障がないか。
- 防炎物品の使用:カーテン、じゅうたん、暗幕などに防炎性能を示すラベルが付いているか。
これらの点検は、書類の確認や目視、簡易な動作確認などによって行われます。
点検をする者に資格は必要ですか
はい、資格が必要です。
この点検は、「防火対象物点検資格者」が行わなければなりません。
この資格は、消防設備士や建築士、電気工事士などの関連資格を保有していることや、特定の学歴・実務経験があることを前提として、専門講習を受講して取得するものです。建物の所有者や管理者は、この資格を持つ専門業者に点検を委託するのが一般的です。
点検をしたら届出は必要ですか
はい、届出が必要です。
点検結果を「防火対象物点検結果報告書」にまとめ、1年に1回、建物を管轄する消防長または消防署長に提出する義務があります。この報告書には、点検を行った防火対象物点検資格者の記名・押印が必要です。
他に注意すべき点
- 「特例認定」制度: 点検義務のある建物でも、過去3年間、消防法令の違反がなく、防火管理体制が優良であると認められた場合は、防火対象物点検と報告の義務が3年間免除される**「特例認定」**制度があります。この認定を受けた建物には、「防火優良認定証(優良マーク)」が交付されます。
- 罰則: 点検や報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合は、罰金や拘留などの罰則が科せられることがあります。
- 定期点検は2つあります:
- 防火対象物定期点検(今回ご説明したもの):建物の管理体制や避難経路などについて、年に1回点検・報告。
- 消防用設備等の点検:消火器、自動火災報知設備、スプリンクラーなどの消防用設備が正常に機能するかどうかについて、年に2回点検し、その結果を特定防火対象物は年に1回、非特定防火対象物は3年に1回消防署に報告。自社ビルがどちらの点検も必要になる場合は、両方の義務を果たす必要がありますのでご注意ください。