Last Updated on 2023年10月21日 by 勝
防火対象物とは
防火対象物というのは、火災が起きると大きな被害が出ると想定される建物等で、火災に対する対策を準備することが法律上求められている建物等のことです。ほぼすべての建物等が該当します。
そして防火対象物は、規制の少ない一般住宅(個人の住居、およびそれに付随する倉庫・車庫・農機具庫等)と、消防用設備等の設置が義務付けられる「消防法政令で定める防火対象物」に分けられます。
非特定防火対象物・特定防火対象物
「政令で定める防火対象物」は、火災が発生したときの危険度に応じて、「非特定防火対象物」、「特定防火対象物」など、いくつかの区分が決められています。
「特定」「非特定」の違いは、建物に日常的に人が訪れるかどうかです。たとえば、「事務所」はほとんど従業員や取引先など一定の人しかこないので「非特定」です。店舗や老人施設は、職員や取引先だけでなく、不特定のお客が訪れたり利用したりするので「特定」です。そして、それらの防火対象物に出入りし、勤務し、又は居住する者の数(収容人員)が一定以上であれば、防火管理者の任命等の義務が生じます。
共同住宅・学校・工場・倉庫・事務所などの用途(非特定用途)に使用される防火対象物を「非特定防火対象物」といいます。
新築工事中の建築物、建造中の旅客船にも「非特定防火対象物」に指定されるものがあります。
劇場や百貨店、旅館、ホテル、病院など、不特定多数の人が出入りする用途(特定用途といいます)に使用される建造物を「特定防火対象物」といいます。
複合用途防火対象物
複合用途防火対象物とは、ふたつの異なる用途でひとつの建物を使っているところです。例えば、店舗兼住宅です。オフィスビルも売店や食堂が入っているところは複合用途防火対象物になります。
しかし、その食堂が、そのビルで働いている社員しか利用できない社員食堂であれば、単一用途の防火対象物に指定されることもあります。
防火管理者が必要な防火対象物
防火対象物は、収容人員や床面積に応じて消防計画を策定し、防火管理者を選任しなければなりません。甲種防火管理者の選任が必要なものを「甲種防火対象物」、乙種防火管理者の選任が必要なものを「乙種防火対象物」といいます。規模と防火管理者との関係は下の表を参照してください。
防火対象物と防火管理者の資格区分
用途
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特定用途の防火対象物
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非特定用途の防火対象物
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避難困難施設 | あり | なし | |||
建物全体の延べ面積 | すべて | 300m2以上 | 300m2未満 | 500m2以上 | 500m2未満 |
建物全体の収容人員 | 10人以上 | 30人以上 | 50人以上 | ||
資格区分 | 甲種管理者 | 甲種管理者 | 甲種又は乙種 | 甲種管理者 | 甲種又は乙種 |
区分 | 甲種対象物 | 甲種対象物 | 乙種対象物 | 甲種対象物 | 乙種対象物 |
一般の会社であれば、従業員数50人から防火管理者が必要になります。この人数は従業員だけでなく、従業者以外の者の使用に供する部分があればその床面積を3㎡で除して得た数とを合算して算定します。
防火対象物と防火管理者の資格区分(テナント)
区分
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甲種防火対象物のテナント
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乙種防火対象物のテナント
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避難困難施設 | あり | なし | |||||
テナント部分の用途 | 特定用途 | 非特定用途 | すべて | ||||
テナント部分の収容人員 | 10人以上 | 10人未満 | 30人以上 | 30人未満 | 50人以上 | 50人未満 | すべて |
資格区分 | 甲種管理者 | 甲種又は乙種 | 甲種管理者 | 甲種又は乙種 | 甲種管理者 | 甲種又は乙種 | 甲種又は乙種 |
店舗であれば30人から、老人施設であれば10人から防火管理者が必要になります。この場合の収容人員は、例えば老人施設の場合は従業員と利用者の合計になります。
防火管理者の選任
防火管理者の選任手続きまたは外部委託については
→防火管理者の選任手続き
防炎防火対象物
万が一火災が発生した際、延焼や火災拡大の可能性が大きい場所のことです。これに指定されると、防炎規制が義務づけられます。カーテンや布製ブラインド、どん帳、じゅうたんなどいわゆる「火がついたら燃え広がりやすいもの」に防炎製品を利用しなければなりません。