消防法が定める「防火対象物」とは?

Last Updated on 2025年9月14日 by

「防火対象物」という言葉、あまり聞きなれないかもしれません。これは消防法で定められた、防火管理が必要な建物のことを指します。今回は、この防火対象物について、その種類から防火管理の義務がどう変わるのかまで、分かりやすく解説します。

そもそも「防火対象物」って何?

消防法では、火災予防や消防活動の対象となる建物を「防火対象物」と定義しています。

一戸建ての専用住宅を除き、私たちが利用するほとんどの建物や施設(オフィスビル、飲食店、病院、工場など)がこれに該当します。

防火対象物は、その用途や規模によって、さらに細かく分類され、それぞれの特性に応じた防火対策が義務付けられています。

特定と非特定、何が違うの?

防火対象物は、不特定多数の人が利用するかどうかという観点から、大きく「特定防火対象物」「非特定防火対象物」の2つに分けられます。

特定防火対象物

不特定多数の人や、自力での避難が困難な人が利用する建物です。そのため、火災発生時に大きな被害が出るリスクが高いと考えられています。

  • 主な例: 映画館、ホテル、病院、飲食店、百貨店、旅館、学校、福祉施設、共同住宅など

非特定防火対象物

主に関係者や特定の人が利用する建物です。

  • 主な例: 事務所、工場、倉庫、駐車場、公衆浴場、共同住宅の一部など

規模が重要!面積や階数による違い

防火対象物における防火管理の義務は、建物の種類だけでなく、面積や収容人員によっても変わります。

特定防火対象物非特定防火対象物
防火管理者の選任収容人員30人以上で必要収容人員50人以上で必要
消防計画の作成・届出収容人員30人以上で必要収容人員50人以上で必要
消防訓練の義務年2回以上の消火・避難訓練が必須消防計画に定めた回数(通常は年1回以上)
防火対象物定期点検収容人員300人以上など、特定の条件で義務義務なし

このように、特定の防火対象物は、多くの人が利用するため、非特定防火対象物よりも厳しい防火管理が求められます。

複合用途防火対象物とは?

複合用途防火対象物の定義

複合用途防火対象物は、消防法において、**「一つの防火対象物で、複数の異なる用途に使用されているもの」**と定義されています。これは、用途ごとに火災発生のリスクや避難の特性が異なるため、総合的な防火対策が必要になるからです。

たとえば、以下のような建物が複合用途防火対象物に該当します。

  • 1階が店舗(特定)、2階が事務所(非特定)
  • 1階が病院(特定)、2階が共同住宅(特定)
  • 1階が共同住宅(特定)、2階が事務所(非特定)、3階が倉庫(非特定)

このように、「特定と非特定の組み合わせ」だけでなく、「特定同士の組み合わせ」「非特定同士の組み合わせ」も含まれます。

統括防火管理者の選任義務

複合用途防火対象物で特に重要となるのが、「統括防火管理者」の選任義務です。複数のテナントが入居するビルなどでは、各テナントの防火管理者が個別に活動するだけでは、建物全体の防火安全を確保することが困難になります。

そのため、以下の条件に該当する複合用途防火対象物では、建物全体を統括する統括防火管理者の選任が義務付けられています。

  • 特定用途のテナントが複数入居している場合
  • 非特定用途のテナントのみの場合でも、特定の条件を満たす場合

統括防火管理者は、建物全体の統括消防計画を作成し、テナント間の連携や訓練を調整するなど、建物全体の防火管理を統括します。


防火対象物の分類と、それぞれの義務を正しく理解することは、建物の所有者や管理者の重要な役割です。ご自身の建物がどの分類に当てはまるか、またどのような義務があるかを確認し、適切な防火管理体制を構築しましょう。


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