Last Updated on 2025年9月14日 by 勝
建物の安全を守る上で欠かせない「防火管理者」。その選任は、消防法で定められた重要な義務です。今回は、防火管理者の選任が必要なケースから、具体的な手続き、さらには外部委託のルールまで、詳しく解説します。
そもそも、防火管理者の選任が必要な建物とは?
すべての建物に防火管理者が必要なわけではありません。建物の用途、規模、収容人員といった条件に応じて、その選任が義務付けられています。
特定防火対象物 (不特定多数が利用) | 非特定防火対象物 (主に特定の人が利用) | |
---|---|---|
対象となる建物 | 映画館、ホテル、病院、飲食店など | 事務所、共同住宅、工場など |
選任が必要な\ 収容人員 | 30人以上 | 50人以上 |
建物が完成し、使用を開始する時点で、これらの条件を満たす場合は、必ず防火管理者を選任しなければなりません。
防火管理者になるには?資格と手続き
防火管理者は、誰でもなれるわけではなく、資格が必要です。一般的には、消防本部などが開催する防火管理講習を受講し、修了することで資格を取得します。
選任する防火管理者が決まったら、次に以下の手続きを行います。
選任届の提出
防火管理者を選任した際は、速やかに、建物の所在地を管轄する消防署に「防火管理者選任届」を提出しなければなりません。
この届出の様式は、各消防署のホームページからダウンロードできます。もし、お探しの消防署のサイトに見つからない場合でも、他の消防署の様式を流用し、宛名などを変更して提出して問題ありません。
退職・転勤時の注意点
防火管理者が退職や転勤などでその建物にいなくなった場合も注意が必要です。防火管理者は常に選任されていなければならないため、後任者を速やかに選任し、前任者の「解任届」と新任者の「選任届」を同時に提出します。
防火管理業務は外部委託できる?
防火管理者の業務は、原則として建物内で管理的・監督的な地位にある者が行うこととされています。しかし、業務の一部または全部を外部に委託することも可能です。
業務の一部を外部委託する場合
火気使用箇所の点検や、防火設備の維持管理といった一部の業務を、警備会社やビルメンテナンス会社に委託することがあります。この場合は、業務を委託する側(建物側)と受託する側(業者)の間で、責任範囲や権限を明確に定めた契約を交わす必要があります。また、受託する業者は、委託された業務を適切に遂行するために、教育担当者を配置しなければなりません。
業務の全部を外部委託する場合
防火管理者の業務をすべて外部に委託することも、例外的に認められています。これは、共同住宅など、管理者(マンションの管理組合理事長など)が常駐しておらず、防火管理業務を適切に遂行することが困難であると消防署長が認めた場合に限られます。
全部を委託する際には、防火管理者の責務を遂行するために必要な権限が、委託先の契約書等で明確に付与されていなければなりません。
防火管理者の選任と手続きを正しく行うことは、建物の安全管理の第一歩です。わからないことがあれば、管轄の消防署に相談してみましょう。