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労働時間

著しく長い通勤時間による健康への心配

Last Updated on 2025年6月16日 by

質問

私はある会社の人事部長です。プライバシーの問題があるので詳細は語れませんが、ものすごく長い時間をかけて通勤する社員がいて、そのような生活では健康を害するのではないかと懸念しています。注意したことがあるのですが耳を貸しません。今後、その社員が本当に健康を害した場合、会社が安全配慮義務違反等で責任を問われるようなことはないでしょうか?

回答

長時間通勤と会社の安全配慮義務

通勤時間は労働時間に含まれないというのが一般的な解釈ですが、ご懸念の通り、著しく長い通勤時間によって社員の健康が害される場合、会社が労働契約法第5条に定めがある「安全配慮義務」を問われる可能性はゼロではありません。

ただし、誰がどこに住むかは、日本国憲法第22条で保障されている居住の自由に該当します。けっして強制することはできません。

考慮すべき点

通勤時間が直接的に労働時間として評価されないとしても、それが原因で社員の心身に過度な負担がかかり、健康を害する可能性がある場合、会社としては以下のような注意を払うべきでしょう。

まず、上司が、その社員の疲労やストレスの程度を観察し、健康状態に変化がないか確認することが必要でしょう。

現時点では「耳を貸さない」状況とのことですが、今後、本当に健康を害してしまった場合に、会社が「注意しただけで、それ以上の対応はしなかった」と判断されると、安全配慮義務を十分に果たしていなかったと見なされるリスクがあります。

今回のように注意を促した事実があったことは重要なポイントですが、具体的にどのような助言や情報提供を行ったかが重要です。

例えば、その社員の健康状態を改善するために、例えば配置転換や在宅勤務の可能性、あるいは専門家によるカウンセリングの提案など、会社として何かできることがないか検討したでしょうか。

今後の対応について

今後、会社としてできることとしては、以下のような点が考えられます。

産業医との面談を促したりして、より具体的に健康状態を確認する機会を設け、面談が実施された場合は産業医の意見を参考に会社としてできることを検討する。

これまでの注意喚起や面談の内容、社員の反応などを記録しておく。

以上のように、居住の自由がからむので大変デリケートな問題ではありますが、その社員の権利を侵害しないように気を配りつつ、社員の健康を守るという観点で、できることをしつつ見守っていきましょう。。


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