代休とは
労働基準法などの法律で明確に定められた制度というよりも、休日出勤が行われた後の事後的な措置として、会社が従業員に休みを与えるものです。
代休であれば、出勤した本来の休日分は「休日労働」のままです。つまり、代りの休日を与えても、本来の休日分について割増した賃金を払わなければなりません。これは、代休はあくまで「休日労働の代償」として休みを与えるものであり、休日労働の事実自体は消えないからです。
昭和23.4.19基収1397号、昭和63.3.14基発150号
就業規則によって休日を特定したとしても、別に休日の振替を必要とする場合休日を振り替えることができる旨の規定を設け、これによって休日を振り替える前にあらかじめ振り替えるべき日を特定して振り替えた場合は、当該休日は労働日となり、休日に労働させることにはならない。
休日に労働を行った後にその代償としてその後の特定の労働日の労働義務を免除するいわゆる代休の場合はこれにあたらない。
賃金の扱い
たとえば、1日8時間労働の従業員が、月曜日から金曜日まで勤務して、所定休日の土曜日にも出勤した場合は、土曜日の労働時間は週40時間を超えるので、土曜日の労働時間については25以上の割増賃金の対象となります。
法定休日の日曜日に出勤した場合には休日労働なので35%以上の割増賃金の対象となります。つまり、各々125%以上、135%以上の賃金支払を支払う必要があります。
前述したように、「代休を与えるから支払わなくてもよい」という措置はできません。
次に、代休を与えた日、代休取得日の賃金について検討します。
代休を与えた場合、代休取得日には就労してはいませんが、使用者による就労免除であるため、通常の賃金を支払う必要があります。
出勤日に賃金を支払い、代休日に賃金を支払えば実質的に二倍払いになります。
労働協約、就業規則に定めがあれば、代休日について賃金控除することが可能です。
この場合、休日労働の割増賃金を支払って、別途、代休の日の賃金1日分を差し引くことができます。結果的に、通常賃金部分が相殺の形になって、割増分のみを支払えばよいことになります。
代休付与の義務はない
法律上は代休を与える義務はありません。労働基準法等に書かれていないからです。つまり、休日に出勤した人に、その休日出勤に休日勤務の割増を含む賃金を払っていれば、代休がなくてもかまいせん。
代休を与えないことになっていれば代休取得日の賃金問題も生じません。
就業規則に代休を与えると書いてあれば与えなければなりません。代休を与えない場合は、法律にないから与えないということでなく、就業規則に明記したほうがよいでしょう。
代休を与えないことによって、法定休日(1週間に少なくとも1回、4週間に4回以上の休日)を満たさないと法違反になるので、結果的に代休を与えなければならない場合もあります。
振替休日との違い
代休と振替休日の違いを以下の表にまとめました。
項目 | 振替休日 | 代休 |
制度のタイミング | 事前に休日と労働日を入れ替える | 休日労働が行われた後に、その代償として別の労働日を休みとする |
休日出勤の扱い | 労働日と入れ替えられるため、もともとの休日の労働は通常の労働日となる | 労働が行われた日はあくまで休日労働として扱われる |
割増賃金の有無 | 休日労働の割増賃金は発生しない(ただし、振り替えられた日が法定休日ではない場合など、時間外労働や深夜労働の割増賃金が発生する場合がある) | 休日労働の割増賃金が発生する (法定休日の場合は35%以上、所定休日の場合は25%以上) |
取得の義務 | 労働基準法上の用語ではないが、就業規則等に規定し、事前に振り替えることで、法定休日を確保する目的がある。 | 労働基準法上の用語ではないが、休日労働の代償として与えられる休暇であり、休日労働の割増賃金は支払う必要がある。 |