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オフィス移転作業を従業員に手伝わせるときの注意点

Last Updated on 2025年8月8日 by

オフィス移転作業を従業員に手伝わせるのは、慎重にしなければなりません。以下に、法的リスクと現実的な対応策を解説します。

明確に指示を出すこと

指示の出し方

従業員に移転作業を手伝ってもらう場合、業務命令として明確に指示を出す必要があります。また、休日や所定労働時間外に行う場合は、労働基準法に基づき、時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)が締結されていることが前提となります。36協定がない場合は、これらの労働を命じることはできません。

割増賃金の支払い

移転作業が所定労働時間を超える場合は、時間外労働として割増賃金の支払い義務が発生します。同様に、法定休日に作業を行う場合は休日労働として割増賃金が必要です。

時間外労働等の支払いに代えて、「お礼」などの一定の金銭を支払うこともありますが、「お礼」だけで済ませず、きちんと割増賃金等の賃金を支払うことが前提になります。しかも、この場合の「お礼」は労働の対価として賃金と見なされ、給与加算しなけれならない可能性が高いです。

怪我や事故の会社責任と労災保険

オフィス移転作業は、通常の事務作業に比べ、重量物の運搬や不慣れな作業が多いため、怪我や事故のリスクが高まります。

会社の責任

会社が業務命令として移転作業を指示した場合、従業員の怪我や事故は会社の責任となります。安全配慮義務に基づき、会社は以下の対策を講じる必要があります。

重い荷物を持つ際は複数人で運ぶ、台車を利用するなど、安全な作業方法を指示する

作業環境を整備し、転倒防止などのリスク対策を行う

安全講習を行う、作業に適した服装や靴の着用を推奨するなど、安全教育を徹底する

体調不良の従業員には無理をさせない。

労災保険の適用

会社の業務命令で移転作業中に怪我や事故が発生した場合、それは業務災害と認められ、労災保険が適用されます。これにより、治療費や休業補償などが支給されます。しかし、会社の安全配慮義務違反が認められると、労災保険とは別に、会社が損害賠償を求められる可能性もあります。

ボランティア的な手伝いをする社員の扱い

問題点

出社指示がないのに、「ボランティアとして手伝いたい」と申し出る社員がいたとしても、会社としては無償のボランティアとして扱うべきではありません。これは労働と見なされるため、労働基準法上、労働時間として扱われることになります

本人が「自主的」と言っていても、会社の依頼が背景にある、あるいは会社の業務に資する内容であるなら、実質的には「労働」とみなされる可能性が高いです。

黙認しただけでも「指揮命令下にある」と判断されるリスクがあります。

会社の業務に携わっている以上、事実上会社の指揮命令下にあると見なされ、後から賃金や割増賃金の支払いを求められる可能性があります。作業中の怪我も労災の適用対象となります。

対応策

手伝いを希望する従業員には、希望を聞いて、受け入れるのであれば、事前に業務命令として扱い、労働時間や賃金支払いについて明確に説明する必要があります。

人手が足りているのであれば、余分な人員を受け入れるべきではありません。不慣れな人が増えると事故や怪我の危険が高まるだけです。

基本スタンスとしては、業者を中心にして、社員の手伝いは立会程度に留めるのが無難です。よって、手伝い希望があったとしても、予定にない従業員に対しては「出社しないよう」事前に明確に伝えておくべきです。

社内への案内文例

オフィス移転当日(○月○日)の対応について

当日は、引越業者による作業が中心となります。業務上の対応として、事前に会社から指名された従業員のみが作業に立ち会います。
その他の従業員の皆様には出社いただく必要はありません。安全上・法的観点からも、ご好意によるお手伝いはご遠慮くださいますよう、お願いいたします。
新オフィスでの勤務開始は○月○日(月)からとなります。何卒よろしくお願いいたします。

その他考慮すべきこと

作業管理の徹底

移転作業に従事した従業員の作業内容、労働時間を正確に記録し、適切な賃金計算を行うとともに、無理無駄な作業をしていないかコントロールすることが不可欠です。万が一のトラブルに備え、誰が、いつ、どのような作業を行ったかを記録に残しておきましょう。

備品等の破損

移転作業中に会社の備品や機材を破損させてしまった場合、従業員に弁償を求めることは原則としてできません。これは、会社の業務遂行中に発生した損害であり、会社が負うべき責任と見なされるためです。

移転作業の専門業者への依頼

これらの労務管理や安全管理のリスクを回避するため、オフィス移転は専門の業者に依頼するのが最も安全かつ確実な方法です。従業員に手伝いを依頼する場合でも、専門業者と連携し、重い荷物、精密機器などの運搬などは業者に任せるなどの対策を講じるべきです。


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