サンプルの前提条件
内部監査室を設置し、専任の内部監査員1名、従業員300名、支店3か所を持つ包装資材商社という設定で、内部監査年間計画書のサンプルを示します。
専任監査員が1名という設定なので、すべての部門を網羅的に監査しないで、「リスクに基づいた重点監査」と「効率的なスケジュール」を意識した計画とします。
内部監査年間計画書(サンプル)
承認 | 代表取締役 | 承認日 | 2026年3月31日 |
策定 | 内部監査室長(氏名) | 策定日 | 2026年3月15日 |
適用年度 | 2026年度(2026年4月1日~2027年3月31日) |
監査の目的と基本方針
会社の経営目標達成に貢献するため、組織全体の業務活動に対する助言・提言を行うとともに、内部統制システムが有効に機能しているかを独立した立場で評価する。
- リスクアプローチの徹底: 当社の事業特性(包装資材商社)に鑑み、特に「在庫管理」「契約審査」「支店管理(不正リスク)」に関する監査を重点的に実施する。
- 全社的統制の確認: 全社のガバナンスとコンプライアンス体制(稟議・決裁、情報セキュリティ)が適切に機能しているかを検証する。
- 効率的な監査の実施: 専任監査員1名体制のため、重複する確認事項を統合し、文書レビューとヒアリングにメリハリをつけて実施することで、効率的な監査を目指す。
監査の重点項目(2026年度)
重点区分 | 重点項目 | 設定理由(リスク) |
A | 在庫管理・棚卸資産評価 | 商社の主要資産であり、評価損計上の適正性、支店を含めた実在庫と帳簿の不一致リスクが高い。 |
B | 支店業務の標準化と不正防止 | 各支店の業務手順のバラつきや、金銭・物品の管理における不正発生リスクを検証する。 |
C | 購買・販売契約の審査体制 | 新規取引先選定時の信用リスク、取引条件の適正性、下請法や独禁法遵守の体制を確認する。 |
D | 情報セキュリティとアクセス管理 | 機密情報や顧客データの漏洩、システムへの不正アクセスに関する管理体制を検証する。 |
年間監査スケジュールと対象部門
全社監査を3つのテーマに分けて実施し、監査工数を分散する。
実施時期 | 監査テーマ/対象部門 | 監査範囲(重点項目) | 監査期間(目安) | 監査員(主査) |
第1四半期 (4月~6月) | 全社的統制監査 | 人事総務部、経理部、経営企画室 | 稟議・決裁権限の遵守、月次決算プロセスの適正性、組織規程の運用状況 (A-1, A-2, C-1, C-2) | 内部監査室長 |
第2四半期 (7月~9月) | 購買・在庫管理監査 | 購買部、倉庫管理部門 | 購買契約審査、在庫受払管理、棚卸実施手続き、不良在庫の評価 (A, C) | 内部監査室長 |
第3四半期 (10月~12月) | 支店業務監査(往査) | A支店、B支店、C支店 | 支店における現金・物品管理、売上・入金処理、コンプライアンス教育の浸透度 (B, C-3) | 内部監査室長 |
第4四半期 (1月~3月) | 販売・情報セキュリティ監査 | 営業部、情報システム部門 | 販売契約審査、売上計上の適正性、システムアクセス権限、データバックアップ (C, D) | 内部監査室長 |
通期 | フォローアップ監査 | 全部門 | 前期および当期監査での指摘事項に対する改善状況の確認。 | 内部監査室長 |
監査実施体制
役職 | 氏名 | 役割 | 備考 |
内部監査室長 | (氏名) | 監査計画の策定、監査の実施、監査報告書の作成と経営層への報告、フォローアップ統括。 | 専任。 |
補助監査員 | 必要に応じて | 監査手続の一部補助、文書確認。 | 業務の客観性を確保できる部門(例:経理部員を営業監査に)から一時的に任命(クロス監査)。 |
報告とフォローアップ
活動 | 時期 | 実施者 | 報告先 |
個別監査報告 | 監査終了後1ヶ月以内 | 内部監査室長 | 代表取締役、監査役 |
年間監査報告 | 翌年度4月 | 内部監査室長 | 取締役会 |
改善フォローアップ | 四半期ごと | 内部監査室長 | 各部門責任者 |