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社内サーバーからクラウドサービスへ、現状と方向性

Last Updated on 2025年8月10日 by

社内サーバー(オンプレミス)とクラウドサービスの利用状況は、企業の規模や業種によって異なりますが、クラウドへの移行が主流となりつつあります。それぞれの現状、問題点、そして今後の方向性について解説します。

現状:クラウドへの移行が進む

社内サーバー(オンプレミス)

多くの企業がこれまで利用してきた方式です。自社でサーバー機器を購入・設置し、自社のデータセンターやオフィス内にシステムを構築・運用します。特に、金融機関や官公庁など、高いセキュリティや独自のシステム要件が必要な企業で依然として多く利用されています。

用語について

「社内サーバー」と「オンプレミス」は、どちらも自社内に物理的なサーバーを設置して運用する形態を指しますが、文脈によって使い分けるのが適切です。

社内サーバー: この言葉は、より口語的で一般的な表現です。ITの専門知識がない人にも分かりやすく、「会社の中に置かれているサーバー」というイメージを伝える際に適しています。

オンプレミス: この言葉は、より専門的で技術的な表現です。IT業界やシステム開発の文脈で使われることが多く、クラウドサービスとの対比を明確にする際に用いられます。

例えば、以下のように使い分けることができます。

一般的な会話: 「うちはまだ社内サーバーでデータを管理しているんだ。」

専門的な会議: 「オンプレミス環境からAWSへの移行を検討しています。」

どちらも間違いではありませんが、話す相手や状況に応じて使い分けることで、より正確なコミュニケーションが可能になります。

クラウドサービス

Amazon Web Services (AWS) や Microsoft Azure、Google Cloud Platform (GCP) など、インターネット経由でITインフラを利用する方式です。スタートアップ企業から大手企業まで、業種を問わず導入が進んでいます。特に、柔軟なスケーリング(規模の増減)やコスト効率の良さから、Webサービスやデータ分析など、新しいビジネスで広く活用されています。

国内企業が提供するクラウドサービス

クラウドサービスは海外の大手クラウドサービス(AWS、Azure、GCPなど)が市場の多くを占めていますが、国内企業のクラウドサービスも人気です。

国内企業のクラウドサービスは、主に以下の特長があります。

安心感: データセンターが国内にあるため、災害対策やデータの保管場所について安心して利用できるという企業が多いです。

サポート体制: 日本語での手厚いサポートや、国内の商習慣に合わせた機能が充実しています。

国内企業が提供するクラウドサービスには、次のようなものがあります。

NTTグループ: NTT東日本の「コワークストレージ」など、中小企業向けのクラウドサービスを提供しています。高い信頼性と手厚いサポートが強みです。

富士通: 企業の基幹システムにも利用される、信頼性の高いクラウドサービスを展開しています。

ソフトバンク: Web会議システムやストレージ、セキュリティサービスなど、幅広い機能を提供しています。

ほかにもたくさんあります。これらのサービスは、それぞれ得意とする分野や料金体系が異なるため、自社の目的に合わせて比較検討することが重要です。

それぞれの問題点

社内サーバー(オンプレミス)の問題点

高コスト: サーバー機器の購入費用、設置スペース、電力、空調、メンテナンス、専門要員の確保による人件費など、初期投資と運用コストが高くなります。

運用負荷: サーバーの保守・管理、ソフトウェアのアップデート、セキュリティ対策など、専門知識を持つ人材を一定程度配置しなければなりません。

柔軟性の低さ: システムの規模を変更する際、サーバー機器の追加・設定に時間がかかり、ビジネス環境の変化に迅速に対応することが難しいです。

災害リスク: 地震や火災などの災害により、サーバーが物理的に損傷し、データが失われるリスクがあります。

クラウドサービスの問題点

セキュリティ: サービス提供者のセキュリティ対策に依存するため、自社で全てのコントロールを持つことはできません。また、設定ミスによる情報漏洩リスクも存在します。

コストの予測: 従量課金制のため、利用状況によっては想定以上のコストが発生する可能性があります。

システム障害: クラウドサービス自体の障害が発生した場合、自社のサービスも停止するリスクがあります。

ベンダーロックイン: 特定のクラウドサービスに依存すると、将来的に他のサービスへ移行することが困難になる可能性があります。

今後の方向性

今後の主流は、クラウドファースト、すなわち、ITシステムを構築する際にまずクラウドサービスの利用を検討する、という考え方です。しかし、全てのシステムをクラウドに移行するわけではなく、以下のような方針が一般的になります。

ハイブリッドクラウド: 企業の基幹システムや機密性の高いデータは社内サーバーで運用し、それ以外のシステムはクラウドサービスを利用するなど、両者を組み合わせて利用する方式です。

マルチクラウド: 複数のクラウドサービスを使い分けることで、特定のベンダーへの依存を避け、リスク分散を図る方式です。

セキュリティ対策の強化: クラウドサービスの利用が増えるにつれて、アクセス制限や暗号化、ログ監視など、クラウド環境に特化したセキュリティ対策の重要性が増していきます。

企業は、それぞれのメリット・デメリットを十分に理解した上で、自社のビジネス戦略やリスク許容度に合わせて、最適なITインフラを選択していくことになります。


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