ハラスメントや懲戒事案を調査する際の、事情聴取記録の書き方

懲戒処分

事情聴取記録とは

ハラスメントや懲戒事案が発生したときは、事実関係を解明するために調査チームを編成して調査にあたることになります。調査においては、関係者に事情聴取することが多くなります。ここでは、調査担当者と聴取対象者(被処分対象者や関係者)との間で交わされた内容を正確に記録する「事情聴取記録」の記載方法等を紹介します。

懲戒処分事案を想定して作ってありますが、ハラスメント調査にも応用できます。

事情聴取記録の書式例

【書式テンプレート】

件名懲戒事案に関する事情聴取記録
被聴取者氏名
所属部署・役職
聴取日時令和__年__月__日(__) __時__分 ~ __時__分
聴取場所会社内 ___会議室
聴取目的___事案に関する事実関係の確認と弁明の機会の付与
聴取者氏名:__________(所属:__________) 氏名:__________(所属:__________)
聴取の実施状況聴取開始時、本件聴取の目的、中立性、及び聴取内容が懲戒処分の判断材料となる可能性があることを説明した。また、聴取者には守秘義務があることを伝えた。

【聴取内容】

(聴取者と被聴取者のやり取りを一問一答形式で、または聴取対象者の一人称(「私」)による供述形式で、具体的かつ正確に記述します。一人称形式の方が、後に本人の意思が反映されている証拠となりやすいため、推奨されます。)

<供述形式(推奨)>

私、_____は、以下の事実について聴取者に対し、偽りなく説明します。

  1. 問題の行為について
    • 私は、令和__年__月__日、___時頃、___において、___という行為を行いました。
    • その行為は、___部署の___という業務に関連するものです。
  2. 行為の経緯・動機
    • その行為を行った動機や経緯は、___です。(例:業務の効率化を図るため、上司の指示と誤解したため、など)
  3. 会社の損害・影響
    • 私の行為により、会社には___といった具体的な損害や影響が生じました。
    • (例:取引先との信用を失い、金銭的な損害が___円発生した。)
  4. 反省と今後の対応
    • 私は、自己の行為が就業規則の__条に違反する不適切な行為であったと認識しており、深く反省しています。
    • 今後は、___を遵守し、二度とこのような行為を行わないことを誓約いたします。

<一問一答形式(会話形式)>

聴取者〇〇さん、今回の不正な経費申請について、事実関係を説明してください。
被聴取者令和__年__月__日に提出した___円の接待交際費の申請は、実際には私的な飲食代でした。
聴取者なぜ私的な費用を業務として申請したのですか?
被聴取者経済的に余裕がなく、一時的に会社に立て替えてもらおうという安易な考えからでした。
聴取者この行為が就業規則違反であることを認識していましたか?
被聴取者はい、認識していましたが、魔が差してしまいました。深く反省しています。

【聴取後の確認】

本事情聴取記録は、上記の聴取日時・場所において、聴取者が作成したものです。

私は、この記録の内容に誤りがないことを確認し、署名・捺印いたします。

聴取記録作成日令和__年__月__日
上記内容に相違ないことを確認する
被聴取者署名
(自署)
(捺印)
聴取者署名
(自署)

運用上のポイント

  1. 署名・捺印の重要性: 聴取内容が後の処分決定の重要な証拠となるため、聴取の最後に必ず被聴取者本人に内容を確認させ、自筆で署名または捺印をしてもらうことが不可欠です。本人の同意を得ることで、後に「言っていない」「内容が違う」といった主張を防ぐことができます。
  2. 拒否された場合の対応: 被聴取者が署名・捺印を拒否した場合、無理強いはせず、「本人は内容を確認したが、署名・捺印を拒否した」という事実を聴取者が記録し、聴取者全員が署名することで証拠として残します。
  3. 一問一答形式の留意点: 会話形式で記録する場合、聴取者の質問が誘導尋問や威圧的にならないように注意し、質問内容も正確に記録する必要があります。
  4. 客観性の確保: 聴取記録は、感情論や推測を排し、「いつ、どこで、誰が、何を」といった具体的な事実に焦点を当てて記述することが重要です。