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懲戒処分

本人に弁明の機会を与えなければならない

Last Updated on 2023年6月2日 by

処分手続き厳守の原則

懲戒処分は処分される従業員にとっては生活がかかるほどの重要な決定です。したがって、懲戒処分を軽々しく取り扱うことは許されず、きちんと手続きを踏まなければなりません。

これを「処分手続き厳守の原則」といいます。

懲戒処分を決める際には、結論ありきではなく、慎重に審議する必要があります。慎重な審議は、慎重に審議したと言うだけでは証明できません。懲戒規定などで懲戒事案が発生したときの手順を事前に定めてあり、実際にそのように行ったことが記録等で明白であることが必要です。

特に重要なポイントは、本人の弁明聴取しその内容を吟味することです。

必要な手順を踏まない懲戒処分は、手続きの不備を問題にされて処分そのものが無効になる可能性がありますが、特に本人の弁明を飛ばした場合には無効に可能性が高まります。

あらかじめ手順を決めておく

就業規則に懲戒手順のあらましを定めます。

就業規則規定例:懲戒の手順|就業規則

あわせて、懲戒手順の詳細を記載した懲戒委員会規程を定めます。

関連規程:懲戒委員会規程

具体的な手順

調査する

まず、事実関係を調査しなければなりません。事実は明らかだというのは先入観です。

調査は次の手順で行います。

1.会社が調査担当者を指名する
2.調査担当者は、当事者や関係者から聞き取りをする(概略ではなく一問一答形式の記録を残す)
3.必要に応じて当事者や関係者から、報告書を提出してもらう。
4.不明の点を再調査する(この際も、詳細な記録が重要)
5.調査報告書を作成する

調査担当者は取り調べをするのではありません。あくまでも事実関係を聴取するのであって、不明の点は不明のまま、意見が相違するところは相違するままの報告書を作成する必要があります。

調査期間中に、本人に自宅待機を命じることがありますが、これが出勤停止処分と見なされると、さらに重い懲戒処分を科すことができなくなります。調査のための待機であることを明確にしてください。

安易に自宅待機を命じないようにしましょう。そもそも自宅待機させる必要があるかどうか判断し、必要だと認める場合は期間を最小限にし、その期間は有給にするのが原則です。

調査の際に、本人から文書で報告させる場合には、文書名やその内容に注意しましょう。文書名は「報告書」です。「始末書」にしてはいけません。内容はあくまでも事実の列記にとどめさせ、文中に反省的な内容や、対策的な内容を書かせないようにしましょう。このようなことに注意を払わないと、始末書を提出させるという一つの処分を行ったことになる可能性があるからです。

一つの処分を行ったとみなされれば、本格的な処分ができなくなってしまう恐れがあります。

関連記事:同じ人を重複して懲戒処分してはいけない

調査担当者の報告書は、懲戒委員会等に提出します。

懲戒委員会を開催する

懲戒委員会を開催します。

合議であることが大事であり、また結論を出さなければならないので、多数決ができるように3名以上の奇数にします。

就業規則に懲戒委員会の設置規定がない場合は、臨時に取締役を含む委員会を組織するか、取締役会で懲戒審議を行うことになります。

懲戒委員会は、調査担当者の報告書を読み、必要に応じて調査担当者に質問します。

懲戒委員会は、総務部長等の法務担当者に、当該事案について就業規則に照らしてどのような処分が妥当であるか処分案の提出を求めます。

本人の弁明聴取

処分対象者に弁明の機会を与えることは特に重要です。事実が明らかであるからなどの理由で本人の弁明を聞かずにした懲戒処分を無効にした裁判例がいくつもあります。ちょっとした手続きミスとはみなされません。

この際、処分対象者が出席の条件として立会人の同席を希望した場合、就業規則に基づく非公開の社内手続きであることを理由に拒むこともできますが、それによって本人の弁明機会が消滅すれば、手続きに瑕疵がのこるので、できるだけ希望に沿うのがよいでしょう。

弁明聴取の過程で本人から逆質問があった場合、真摯に調査回答するべきですが、パワハラ・セクハラ案件では、本人が証言者に対し自ら反論したい旨申し立てがあっても、被害者を反対尋問の場に立たせることをしてはいけません。

合議による結論

懲戒委員会は、審議を尽くした後に結論を出し、議事録を作成します。処分案は答申のかたちで社長などの処分権者に伝えます。

処分権者の決裁を得て、総務部長等が、処分(不処分もありうる)の内容を本人に文書で伝えます。解雇のときは解雇理由証明書も準備します。

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