同じ人を重複して懲戒処分してはいけない

Last Updated on 2021年4月7日 by

二重処分禁止の原則

憲法第39条に次のように規定されています。

何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない。

この、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない。の部分が二重処分の禁止です。

会社の行う懲戒処分にもこの規定が適用されます。つまり、二重処分をしてしまうと、後に行った処分は無効になります。

ただし、二重処分はできないということを理解しても、実際の運用ではどう解釈すればよいか悩むことがあります。

これは二重処分になるか

反省の色が見えないので再処分

ワンチャンス与えたつもりで軽めの懲戒処分をしたにもかかわらず、本人のその後の言動に反省の態度が見受けられないと、経営者が温情をかけたことを悔いることがあります。

悔いるだけならよいのですが「あの処分は軽すぎた。やっぱり解雇にするべきだ」などと蒸し返してくることがありますが、それは無理筋だということを納得してもらうしかありません。

現実には、次に何かやらかせばきつい処分になりがちです。ただし、そのように「あいつは前にこうだったから」という合わせて一本のやり方には多少問題があるのですが。

同じことを繰り返したので再処分

ある事実について懲戒処分にしたところ、短期間のうちにまた同じことを繰り返したという場合は、似たような不始末だとしても、新しい事案に対する懲戒処分ですから二重処分にはあたりません。例えば、無断欠勤によって処分を受け、にもかかわらず、また無断欠勤をしたというようなケースです。

ただし、例えば、何回かの無断欠勤を分解して、最初にそのうちの一つについて処分し、次いでもう一つについて処分するというやり方は、恣意的に処分を拡大したとみられ、二重処分の可能性があるでしょう。

懲戒処分だけでなく賞与を減額

懲戒処分をした場合は、一件落着ということであとに引きずらないのが原則です。つまり、懲戒処分を受けた人は次の賞与は半分、というようなことをやれば二重処分です。

しかし、賞与決定に関する規定に基づいて、正当な評価の結果で賞与が下がったのであれば問題ありません。

自宅待機の後に懲戒処分

処分の調査のために処分が決定するまでのあいだ「自宅待機」を命じることがあります。この自宅待機が処分の一つとみなされると二重処分になり別な処分をすることができなくなります。二重処分に見られないために自宅待機期間中は賃金を支払う必要があります。

出勤停止処分をするときの注意点

当事者から文書で報告を求める際に、そのタイトルを「始末書」にしたり、内容が反省文のようになってはいけません。タイトルはあくまでも「報告書」、内容は事実の列記のみとします。「始末書」の提出とみなされれば、始末書の提出という一つの処分とみなされる可能性があるからです。

出向元と出向先の両方で懲戒処分

出向元と子会社に出向している従業員の非違行為を、どちらの会社が懲戒処分をするかという問題があります。

出向者は、出向先の就業規則に従って労務を提供しているので、非違行為があれば出向先が懲戒権を行使することができるという解釈もありますが、例えば、出向先が解雇しても出向元に戻るだけなので処分としては不完全です。やはり、懲戒処分は基本的には出向元が行うべきでしょう。

ただし、事情によって異なる部分はあるでしょう。例えば、出向先が給料を払っている場合の減給処分は、出向元の処分決定に基づいて、給料を払っている出向先が処分を実施することになるでしょう。

いずれにしても、出向者の懲戒処分をどうするかは、双方の就業規則、出向契約書において明確にしておかなければなりません。

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