Last Updated on 2020年3月1日 by 勝
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二重処分禁止の原則
一つの不始末に対して二重に処分してはいけません。
憲法第39条に次のように規定されています。
何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない。
会社の行う懲戒処分にもこの規定が適用されます。ただし、実際の運用ではどう解釈すればよいか悩むことがあります。
反省の態度がないので再処分
懲戒処分を受けたにもかかわらず、日常の言動に反省の態度が見受けられない場合。それだけを理由にもう一度懲戒することはできません。処分への批判を繰り返すようであれば、その態様によっては処分できる可能性があります。
同じことを繰り返したので再処分
ある事実について懲戒処分にしたところ、短期間のうちにまた同じことを繰り返したという場合は、似たような不始末だとしても、新しい事案に対する懲戒処分であれば二重処分にはあたりません。例えば、無断欠勤によって処分を受け、にもかかわらず、また無断欠勤をしたというようなケースです。
こうした事案では、処分したにもかかわらず、反省なく繰り返したということになるので、不利な情状として2度目の処分が重くなってもやむを得ないでしょう。
ただし、例えば、何回かの無断欠勤を分解して、あとになってから別々に減給処分を科すことは、事案を分解する合理的理由があったとしても、恣意的に処分を拡大したとされる可能性が高くなります。
減給処分のあとに賞与が低下
処分のあとに支給になった賞与が下がっていたとしても、会社の人事制度がしっかりしていて、賞与決定に関する規定に基づいて、正当な評価の結果で賞与が下がったのであれば、会社は二重処分ではないと主張できるでしょう。
しかし、人事評価制度がしっかりしていない会社では難しくなります。減給処分を科したところでその事案は終わっているのですから、賞与に手を付けない方が無難です。
懲戒の手続きが問題になることも
処分の調査のために処分が決定するまでのあいだ「自宅待機」を命じることがあります。この自宅待機が処分の一つとみなされると二重処分の問題が生じ、別な処分をすることができなくなります。
当事者から文書で報告を求める際に、そのタイトルを「始末書」にしたり、内容が反省文のようになってはいけません。タイトルはあくまでも「報告書」、内容は事実の列記のみとします。「始末書」の提出とみなされれば、始末書の提出という一つの処分とみなされることがあるからです。
出向従業員に対する処分
子会社に出向している従業員が、子会社で懲戒処分を受けたとき、籍のある親会社も同時に処分することができるかという問題があります。
これは、事情によって異なります。両方に懲戒権があるとしても、懲戒解雇は籍のある出向元がすることになるでしょうし、減給処分は給料を払っている方が行うことになると思います。
出向者は、始業・終業時刻、休日などの労働時間、服務規律などについては、出向先の就業規則に従って労務を提供しています。労働時間や服務規律について非違行為があれば、出向先が懲戒権を行使することができるます。
また、出向者は、出向先の指揮命令下で労務に服していますが、あくまでも出向元の出向命令に従い出向先において労務を提供しています。したがって、出向先における服務規律違反などは、同時に出向元に対する義務違反でもあるので、出向元の就業規則を適用して懲戒処分を行うことができるとも考えられます。