Last Updated on 2022年10月28日 by 勝
平等取扱いの原則
同じ非違行為に対しては、同じ種類、同じ程度の懲戒をしなければなりません。非違行為の発生の事情や背景によって処分内容が異なることがあるのは当然ですが、平等性を疑われるような懲戒処分は、社内のモラルを低下させるだけでなく、懲戒処分の有効性に疑義が出ることもあります。
【事例】
出張旅費を不正に多く受給していた社員が懲戒解雇されたところ、その社員は解雇無効を主張して裁判になりました。裁判所は、原告と同様に不正受給した社員がほかにもいて、そのなかで最も重い処分を受けたものが停職3か月であったことなどを理由に、当該原告に対する懲戒解雇は重すぎるとして解雇無効の判決を出しました。(札幌高裁令和3年11月17日)他の同様の不正受給者と比べて処分が重すぎた点を大きく考慮した判決だと言われています。
同じ事案で処分内容が異なる
懲戒処分が決まったときに「他にもやっている人がいるのに自分だけ処分されるのは不当だ」「他の人は口頭での注意だけだったのに、自分は減給されたのは不公平だ」という声が上がることがあります。
例えば、賞味期限切れの商品を複数の者が私物化していたことが発覚したときに、その頻度や従業員の地位によって処分内容が異なることがあると思います。
地位の高いものほど責任は重いし、やってきた回数も考慮されるのは当然のことですから問題ありません。むしろ、一律に同じ処分であれば平等の取り扱いとは言えないでしょう。
ただし、日頃の行いを加味すると話しは違ってきます。「彼はいつも頑張っているからこれ位は許してやりたい」あるいは「彼は普段が普段なのでこういう機会にとっちめてやろう」などと考えて、他の人と違う処分をすれば平等の取り扱いではありません。
過去の処分との整合性がない
過去に同じような事案で処分が行われていることがあります。経営者は忘れていても、従業員はそうした事例をしっかり覚えているものです。
過去の事例と比べて差があると不平不信がでてきます。
これを防ぐには、処分の程度を決定する前に、過去の処分事案を調べる参考にする必要があります。そのためには、会社は過去の懲戒記録を保存しておく必要があります。概略ではいけません。詳細な記録を保管しておく必要があります。
もちろん、プライバシーにからむ部分がたくさん含まれているので管理は重要です。カギのかかるキャビネットなどに保管し、特定の人だけしか開けられないような仕組みにする必要があります。
ただし、同じように見える事案でも、その時々の社会背景によって会社に対する影響が違います。例えば、飲酒運転などの危険運転は、昔とは比べられないくらい社会の目は厳しいと思います。ですから、過去の事案と単純に比較して平等を論じることができない場合もあります。
まとめ
従業員は公平平等に扱われることに大変神経質です。貢献度などで臨機応変にしたいという気持ちは理解できなくもありませんが、懲戒処分にあたっては非違行為そのものを見て判断することが大事です。どういう人がやったかではありません。
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