Last Updated on 2023年6月18日 by 勝
行為と処分の均衡の原則
懲戒処分については、懲戒処分の内容が、規律違反の程度などに見合ったものでなければならないという原則があります。
これを「行為と処分の均衡の原則」あるいは「相当性の原則」といいます。
例えば、ささいなミスによって会社に多少の損害が生じても、注意や指導で改善をうながすのが一般的です。懲戒処分を科すとしてもせいぜい戒告処分どまりでしょう。もし、ささいなミスを理由に懲戒解雇をすれば、やり過ぎだと非難されることになるでしょう。争いになったときは解雇無効になる可能性が高いです。
例えば、通勤手当の不正受給が発覚した事案について、理由が悪質でなく金額が少ないのであれば、規律違反ではあるけれども解雇は社会通念上相当ではないとして解雇無効になった裁判例(大阪地裁令和4.12.5)もあります。
行為と処分の均衡が実施されるためには、就業規則にどのような行為をすればどのような処分をするという、つながりが明記されている方が望ましいとされています。
例えば、一定期間に何回以上の遅刻すれば戒告処分を科すと定めておけば、その基準に達する遅刻をした従業員に対する処分は戒告処分に限られ、懲戒解雇はありえないわけです。
また、会社で窃盗を働いたものは出勤停止処分か懲戒解雇と決めておけば、会社としてはそのどちらにするか検討すればよいことになります。
従業員にしても、あらかじめどういう事態が起こりうるかを想定することができるので心の準備ができるでしょう。
ただし、このように行為と処分のつながりを就業規則に定めることはメリットもありますがデメリットもあります。
それは、柔軟性に欠けることです。同じ非違行為の種類であっても、その内容が非常に悪質である場合や、社会通念上許されないものである場合に、就業規則に縛られて適切な処分を科すことができないおそれもあるのです。
定める場合は、いろいろな角度から検討して慎重に定めるべきです。
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