懲戒処分の対象になる行為を就業規則に列記する

Last Updated on 2021年10月25日 by

懲戒処分の対象になる行為

懲戒処分の対象になる行為を懲戒事由といいます。代表的な懲戒事由としては次のものがあります。

業務命令違反

就業に関する命令に従わない行為です。出張、残業、その他仕事上の指示に正当な理由なく従わなかった場合です。

業務命令に従わなかっただけで懲戒処分が認められるわけではありません。なぜそのようなことになったのか、命令に従わなかった従業員の側に汲むべき事情がないか検討しましょう。また、処分をする場合でも、軽微な違反に対して重い懲戒をすることはできません。

服務規律違反

代表的なものとして、無断欠勤、無断職場離脱などがあります。

ただし、就業規則に無断欠勤の限度日数を定めていたとしても、機械的に処分を実施すると処分無効とされる可能性があります。欠勤や離脱の事情を確認して汲むべき事情があるかどうか検討しましょう。

また、就業規則やその他の会社規程に定められた事項に違反する行為も服務規律違反として懲戒処分の対象にすることができます。セクハラ、パワハラ等のハラスメント、企業機密の漏えいなどがあります。

経歴詐称

採用時に経歴を偽ることです。採用、すわわち労働契約は、信頼関係に基づくので、採用時に経歴、特に学歴を偽ることは信頼関係を揺るがす行為だとして、解雇もやむを得ないという判例があります。

病歴の秘匿については、その程度や秘匿の事情によっては、懲戒処分を無効とする判決例もあります。

勤務成績不良

勤務成績が不良で改善の見込みが無いという理由での解雇はよく聞く事例です。ただし、勤務成績が不良であるという理由での解雇は、裁判になった場合には多くの場合で使用者に不利です。

私生活上の非行

勤務時間外の非行については、原則として使用者による懲戒処分はできないとされています。しかし、その非行によって、使用者の利益や名誉が毀損されたとき、あるいは企業秩序に直接の影響がある場合には懲戒処分の対象になるという判例があります。

また、痴漢行為を繰り返していた社員を懲戒解雇にしたところ、勤務態度などを考慮して懲戒解雇を認めず、退職金の一部支給を相当とした判決もあります。

就業規則に記載がないと処分できないことがある

就業規則に、懲戒処分の対象になる行為を具体的に記載し、その列記した行為に該当したときに懲戒処分の対象にできます。この考え方を「就業規則該当事由の原則」といいます。

逆に言えば、就業規則に列記されていない行為をした者を懲戒処分にするのは難しいということです。

どう難しいかと言うと、懲戒処分をするときには、「当該従業員の行為は、就業規則第〇条の〇に違反するので〇〇処分とする」などと、根拠になる就業規則の条文を示さなければなりません。これを示せなければ、処分されたことを不服として争いになったときに会社が不利になってしまうのです。

できるだけ列挙する

そこでどの就業規則にも、次のような禁止行為が列記されています。

① 正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき。
② 正当な理由なく無断欠勤が〇日以上に及ぶとき。
③ 正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき。
④ 過失により会社に重大な損害を与えたとき。
⑤ 許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用したとき。
⑥ 会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行ったときでその違反行為が軽微であるとき。
⑦ 素行不良で社内の秩序及び風紀を乱したとき。
⑧ 本規則に定める遵守すべき事項に違反したとき。

この禁止行為は、それぞれの会社の実情をベースに考えていくと記述がどんどん増えてしまうのが普通です。

また、会社の業種等によって従業員に禁止したい行為は異なります。共通する部分もありますが、異なる部分が必ずあるはずです。

例えば、トイレからでたら手を洗うことは誰にでも求められる行為ですが、一般の事務所で手を洗わなかった者を懲戒処分対象にすることはほぼ無いでしょう。しかし、食品工場においては手を洗わないことを懲戒処分対象にすることは十分に理があることです。

記載が煩雑になってくるともう少しまとめてシンプルにしようと考えがちですが、どの項目もいろいろな経緯があって設定されているはずです。安易にカットすると後で後悔することが多いものです。ある程度の煩雑さは仕方ありません。

その他準じる行為

とは言っても、記述が膨大になればよいというものでもありません。

そこで、就業規則の煩雑さを少しでも減らすために、また、記載されていない場合の穴を埋めるために、一つの抜け道ではありますが、多くの就業規則は列記事項の最後に「その他これに準じる行為」と書いてあります。

ぴったり当てはまらないときはこの「その他これに準じる」を活用するのです。

仮に、倉庫内で立小便をした人がいたとします。生理現象ですからやむを得ずしたのであればかわいそうですが、見つかれば叱られるのは当然です。場合によっては戒告処分したらどうかという声が上がるかもしれません。

しかし、倉庫内の立小便を禁止事項にあげている就業規則はほぼ無いと思います。

こういうときに「その他これに準じる」が使われます。就業規則のどこかに、職場の清潔の維持や備品を粗略にしないなどという項目があると思います。立小便をすれば職場が不衛生になり、その場所が汚染されるのですから、清潔維持や備品損壊に「準じる」としても無理はないでしょう。

ただし、この「その他準じる行為」という記載は万能ではありません。いくらでも拡大解釈ができれば、従業員の身分は非常に不安定になってしまうからです。

準じる行為というのは、誰もが無理なく、準じると受け止めることができる類似の行為でなければいけません。そういう適用は強引だと思われるようなことをすると、争いになったときに不利になります。そこで話が戻りますが、考えられる限りの禁止行為列記が必要になるのです。

マニュアルとの連携

就業規則の本文を煩雑にしないために、禁止事項の記載の一部を手順マニュアルなどに移すことがあります。手順マニュアルの禁止事項も就業規則による懲戒処分の対象になりますが、適用させるには、就業規則と当該マニュアルが、以下のように相互の適用について明確につながっている必要があります。

就業規則記載例
従業員が次のいずれかに該当するときは懲戒処分の対象になることがある。
〇.故意または重大な過失により〇〇マニュアルの手順に従わないことで会社に損害を与えたとき

マニュアル記載例
故意または重大な過失により本マニュアルに違反したときは就業規則〇条に基づいて懲戒処分を科すことがある。

また、就業規則と手順マニュアルを連携させたときは、当該手順マニュアルも就業規則の作成改正と同様に扱い、労働者代表からの意見聴取、ならびに労働基準監督署への届け出が必要です。

定期的なアップデートが必要

これまでも度々あったように、これからも時代の変化で新しい規制が必要になるかもしれません。思いがけないことをする非常識な人が現われるかもしれません。ですから、就業規則に記載する禁止項目は、常に不足がないか、逆に時代遅れになったものはないか点検してアップデートする必要があります。最低年1回はスケジュール化しましょう。

私的行為に対する懲戒処分

禁止行為を就業規則に列記しておくことで違反したときに懲戒処分の対象とすることができますが、この行為が就業中に行われた場合に限定されます。

勤務外の時間であれば、法律違反の行為はそれぞれの法律によって裁かれますが、就業規則によって裁くことはできないのが原則です。ただし、勤務外の行為が直接会社に悪影響を及ぼすのであれば、懲戒処分の対象にできる場合があります。

関連記事:私的行為に対して懲戒処分できるか

就業規則記載例

就業規則の規定:懲戒の事由|就業規則

会社事務入門懲戒処分の留意点>このページ