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懲戒処分

私的行為は懲戒処分できない

Last Updated on 2022年11月10日 by

原則として処分できない

懲戒処分は、原則として会社で起こした不始末に対して科せられるものです。会社を離れたときの行為は、原則として懲戒処分の対象とはなりません。

労働契約上の従業員の義務は、勤務時間内に仕事をすることであって、仕事を離れている時間に何をするかは従業員の自由だからです。悪いことをしてよいというものではありませんが、会社の管理が及ばないということです。

したがって、不倫行為や、家庭のトラブル、私的な金銭トラブル、勤務時間外に行ったケンカ、などに対して懲戒処分をするのは無理があると考えられています。

処分できる場合もある

私生活上の行為は処分できないということではありません。会社の社会的評価に大きな影響を与えたり、具体的に会社に損害を与えていることがあれば懲戒処分が認められる可能性もでてきます。

裁判ではいろいろな事情を考慮して総合的に判断するので、一概には言えませんが、①会社の信用を傷つけた程度が大きい、②従業員の職位が高い、③事件が従事している仕事と関連がある、④量刑の程度が重い、などであれば解雇有効の判断もありうるようです。

事例

勤務時間外に他人の住居に侵入したことで逮捕され、住居侵入罪により罰金刑に処されられた従業員を懲戒解雇したところ、従業員はそれを不服として解雇無効を訴えた事件がありました。判決は解雇無効でした。裁判所の判断を要約すると、その行為が私生活上の行為であること、罰金刑ではあるがその額が低額であること、当該従業員の地位が低いことなどにより、会社の体面を著しく汚したとはいえないとしています。

痴漢を行った従業員を懲戒解雇した例では、会社が鉄道会社であり、痴漢の現場が電車内であったこと、懲役4か月の判決を受けたことなどを理由に、「会社の社会的評価に重大な影響を与えるような従業員の行為については、それが職務遂行と直接関係のない私生活上で行われたものであっても、これに対して会社の規制を及ぼしうることは当然認められる」として懲戒解雇を容認しています。勤務時間外の行為であっても、会社の信用を害することになれば解雇もあるという事例です。

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