退職後に不正が発覚した場合
従業員が退職後に使い込みなどの不祥事が発覚することがあります。在職中は巧妙に隠していたものが、退職後に別の人が担当することで発覚することが多いようです。
原則としては、すでに退職した人との間には雇用契約が無く、したがって、就業規則を適用させることはできないので、懲戒処分はできません。
犯罪行為の発覚が目前にせまり、処分を逃れるための退職届を出し、会社が気付かずに退職させてしまった場合には、難しいのですが、詐欺的な行為だとして退職の無効を主張できる余地があります。裁判等の手続きが必要になりますが、退職が無効と認められれば雇用契約が存在していることになるので懲戒処分が可能になります。
退職後の対応として最も現実的かつ一般的なのは、損害賠償請求と退職金規程に基づく対応です。
主な対応策
退職受理の撤回
原則として、会社が一度受理した退職(辞職の申し出、または合意解約としての退職)を一方的に撤回することはできません。退職の意思表示が会社に到達し、退職日が確定した時点で雇用契約の終了が確定するためです。
しかし、実際に退職するまでは従業員ですから就業規則が適用されます。退職日ギリギリに不祥事が判明したときは、直ちに退職届の不受理を通知するなどの対処することで懲戒処分できる可能があります。
損害賠償請求
不正行為によって会社に具体的な損害が発生している場合、会社は元従業員に対し、民法に基づき損害賠償を請求することができます。
- 例: 会社の金銭を着服していた、重要な機密情報を持ち出して競合他社に漏洩し利益を損ねた、などが該当します。
- この請求は、懲戒処分とは異なり、雇用契約の終了後でも可能です。
退職金の不支給または減額
会社の就業規則や退職金規定に、「在職中の重大な不正行為が判明した場合」などに関する規定がある場合、それに従って退職金を支払わない、または減額することができる可能性があります。
- ただし、規定の有無や、その不正行為が「功労を抹消するほどの重大な背信行為」と認められるかどうかが重要なポイントになります。
刑事告訴(不正行為の内容による)
不正行為の内容が刑法に触れるもの(業務上横領、詐欺、背任、窃盗など)である場合は、警察に被害届の提出や刑事告訴を行うことができます。
- これは会社が加害者(元従業員)に対して行うものであり、懲戒処分とは別の手続きです。
これらの対応を進めるにあたっては、法的な判断が伴いますので、具体的な状況を踏まえて弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。