Last Updated on 2024年11月2日 by 勝
減給処分とは
就業規則違反などに対する懲戒処分の一つとして、賃金から一定額を差し引くことを減給処分といいます。ただし、減給できる賃金の上限金額について、労働基準法は次の制限を定めています。
1.1回の減給額は、平均賃金の1日分の半額を超えない
2.1賃金支払期において減給できる額は、その賃金総額の10分の1以内
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ここで言う1回とは、懲戒対象の事案1回です。例えば、度重なる遅刻と職場内の危険行為などのように性格が異なる事案であれば別々に数えることができますが、「度重なる遅刻」を懲戒対象にするときに遅刻の1回毎を1回とすることはできません。「度重なる遅刻」として1回です。
なお、遅刻した時間、欠勤した日などに対して勤怠控除として減給することは減給処分に該当しないので事務的に行うことができます。賃金は労働を提供している時間に対して支払うもので、労働していない時間に払わない(ノーワークノーペイの原則)ことは当然だからです。
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減給の限度額
懲戒処分の一つとして減給処分をする場合の制限について例で説明します。実際にはその人の賃金をもとに平均賃金の計算をしなければなりませんが、ここでは大雑把に説明します。
月の給料が20万円の従業員を減給処分にするとします。この人の月給を30日で割ると約6,660円になります。したがって、1回の減給はその半分の3,330円が最大値になります。
この1回というのは、処分の対象となった不始末1回に対して1回です。1回(事案一つに対してという意味です)の不始末について、平均賃金の1日分の半額を何回にもわたって減額してもよいという意味ではありません。
労働基準法の定めに疎い使用者が、「3か月の減給に処す」という処分をして、先の例で、3,330円を3か月にわたって減額したとすれば、9,990円の減給処分ですから、限度金額を超える処分を科したことになり、労働基準法違反となります。
別の不始末であれば話しは別です。もし、その人が、同じ月にいろいろな種類の異なる不始末をしたのであれば、減給処分が複数回になる場合があります。しかし、その場合には賃金総額の10分の1という定めが生きてきます。
1賃金支払期の賃金が20万円であれば、その10分の1は2万円です。つまり、3,330円の減給処分を月に6回受ければ、上限に達し、7回目の減給処分は、翌月の賃金から減額しなければならないことになります。
しかし、同じ月に6回以上の減給処分を受けるということは現実的ではありません。賃金総額の10分の1以内という定めが現実に適用されることはめったにないでしょう。
日給の半分だけしか減額できないという説明をすると、多くの経営者の方は、たったそれだけの減給では意味がないと感じるようです。減給処分は、処分をしたという事実が重要なのであって、その金額は形式的なものだと考えるべきでしょう。
減給処分の基準
何をどれくらいすれば減給処分の対象になるのかという基準を、就業規則で決めておく必要があります。就業規則に定めていない処分をすることはできません。
就業規則記載例
(戒告、減給又は出勤停止処分)
第〇条 会社は従業員に対し懲戒処分をすることがある。従業員が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、戒告、減給又は出勤停止とする。
(1)正当な理由なく無断欠勤〇日以上に及んだとき
(2)正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退するなど勤務を怠ったとき
(3)過失により会社に損害を与えたとき
(4)素行不良で会社内の秩序又は風紀を乱したとき
(5)第〇条から第〇条の規定に違反したとき
(6)その他、前各号に準ずる不都合な行為があったとき
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