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賃金

欠勤遅刻早退の控除計算

Last Updated on 2023年9月19日 by

欠勤等控除とは

欠勤等控除とは、欠勤や遅刻早退等の時間を賃金から差し引くことです。

賃金は労働時間に対して支払われるものなので、労働していない時間については賃金を支払わないのが原則です。欠勤や遅刻、早退の時間分の賃金を控除しても法律的に問題ありません。

ただし、欠勤等をしたときは賃金控除があること、その際の計算方法等について就業規則に記載し、労働者へ周知しておかなければなりません。

関連記事:遅刻・早退・欠勤等|就業規則

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欠勤控除の計算方法

時間給の場合は労働時間分の賃金を計算すればよいので欠勤等の控除は簡単です。また、完全月給制のように欠勤等の控除をしないと決めているのであれば計算することはありません。

控除計算は主に月給制の場合に問題となります。

年平均の月所定労働日数を用いる方法

一般的に用いられている方法は、年平均の月所定労働日数を用いる方法です。

欠勤控除額=月給与額÷(年平均の月所定労働日数×欠勤日数)

年平均の月所定休日日数は(365日−年間の所定休日日数)÷12か月で算出します。

給与がマイナスになってしまうこともある

例えば年平均の月所定労働日数が20日間だとすると、特定の月の所定労働日数が21日で20日間欠勤し1日出勤した場合、1日は勤務したにもかかわらず、月給与額と欠勤控除額が等しくなるので給与がゼロになってしまいます。また、1か月すべて欠勤すると給与がマイナスになってしまうこともあります。

その場合でも、年間でみれば欠勤日数と欠勤控除の総額に過不足がないため違法とはなりませんが、1日だけとはいえ働いているのにゼロになる、あるいは全部休めばマイナスになってしまう、というやり方は不合理です。

この方法を用いるのであれば、計算上はゼロあるいはマイナスになっても、労働した日があるなら、最低限働いた日数分の給与(月給与額÷年平均の月所定労働日数)は支払う、計算上はマイナスになってもゼロにとどめる、などの扱いを就業規則に定める必要があります。

該当月の所定労働日数を用いる方法

欠勤控除額=月給与額÷(該当月の所定労働日数×欠勤日数)

この場合、月によって所定労働日数が異なるので、月給与額が同じでも月によって欠勤控除額が変動します。

月給与額の時間単価が変動するので給与計算が若干複雑になりますが、実際の勤務日数に応じて支給することになるので納得性が髙いと考えられています。

年の暦日数を用いる方法

欠勤控除額=年間給与額÷(年の暦日数×欠勤日数)

この場合、欠勤1日あたりの控除額は一定となります。

ただし、労働者が全ての所定労働日数を欠勤しても給与は発生してしまいます。年の暦日数が365日とは限らない点にも注意が必要です。

毎月の暦日数を用いる方法

欠勤控除額=月給与額÷(月間の暦日数×欠勤日数)

月間の暦日数は、月によって異なるため、欠勤控除額が毎月変わります。また、この計算方式も全ての所定労働日数を欠勤しても給与は発生してしまいます。

遅刻早退の賃金控除の計算方法

月給制の場合は、1時間あたりの単価を出さなければなりません。多くの場合は、月給を年間平均の1か月の所定労働時間数で割った額を単価とします。

計算式は、欠勤の控除の計算の「1年間の月平均所定労働日数」を「1年間の月平均所定労働時間数」に置きかえます。

例:遅刻早退控除の対象とする月の給与額÷1年間の月平均所定労働時間数×遅刻・早退の時間

諸手当に対する欠勤等控除

諸手当も欠勤等控除をすると就業規則に定めている場合は控除することができます。

その場合、手当のすべてを欠勤控除できるものではありません。手当ごとに日割にすることが合理的かどうかを検討しなければなりません。

例えば、住宅手当は、勤務日数・時間にかかわらず住宅費用は一定なので欠勤控除しないのが理論的です。通勤手当は、出勤回数に応じて支給するのが理論的だと言えます。

欠勤等控除額の端数処理

欠勤等控除の計算を計算する際、控除する時間に端数が生じたときは、その端数処理は切り捨てが原則です。

端数を切り上げてしまうと、欠勤していない時間分までも控除してしまうためです。四捨五入も危険です。労働基準法24条の賃金の全額払いの原則に反してしまう可能性があります。

また、控除する時間は1分単位で控除しなければなりません。計算を簡略にするために15分単位や30分単位にすると、本来の控除時間を上回ってしまい、労働基準法に違反してしまいます。

関連記事:給与計算の端数はどうするか

社会保険料の控除

欠勤等控除だけで給与額がマイナスになるのは問題だと書きましたが、欠勤等控除の結果、給与額が少なくなり、ここから社会保険料を控除するとマイナスになってしまう場合は、そのマイナス分を別途労働者に請求することは問題ありません。

とは言え、従業員からすれば収入がないのに社会保険料だけとられるのですから疑念をもったり払いたくても払えないというトラブルになることがあります。長期欠勤等が予想される場合は、その旨及び不足分の支払方法について説明し納得を得ておく必要があります。

もし、従業員が払えなくなった社会保険料を会社が負担してやるのであれば、その分を給与として加算しなければならないので注意しましょう。


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