派遣労働者に、待遇を説明する義務について解説

採用

派遣元には、派遣労働者に対して、その待遇についていくつかの場面で説明する義務があります。これは、派遣労働者の保護と、不合理な待遇差の解消を目的とした労働者派遣法の定めによるものです。

具体的な説明義務は、主に以下の3つの場面で発生します。

派遣労働者として雇用しようとするとき(雇入れ時)

派遣元は、労働者を派遣労働者として雇い入れようとするときに、労働基準法に基づく労働条件の明示に加えて、以下の事項を書面の交付等、労働者に資料が残る形により明示・説明しなければなりません。

  • 労働条件に関する追加事項の明示:
    • 昇給の有無
    • 退職手当の有無
    • 賞与の有無
    • 協定対象派遣労働者であるか否か(対象である場合は、当該協定の有効期間の終期)
    • 派遣労働者から申し出を受けた苦情の処理に関する事項
  • 待遇決定方式に関する説明:
    • 派遣先の通常の労働者との間で不合理な待遇差を設けない、または差別的取扱いをしない旨(派遣先均等・均衡方式)
    • あるいは、一定の要件を満たす労使協定に基づき待遇が決定される旨(労使協定方式)
    • 賃金の決定に当たって勘案した事項(職務内容、成果、能力、経験など)

派遣労働者として派遣する際(派遣時)

派遣元は、派遣労働者を派遣する際にも、以下の事項を明示・説明する義務があります。

  • 上記1の事項に加え、就業条件等に関する明示(労働者派遣法第34条第1項に基づくもの)が行われます。
  • 待遇決定方式に応じた説明(上記1の待遇決定方式に関する説明と同じ内容)も改めて行われます。

派遣労働者から求めがあったとき

派遣労働者から求めがあったときの説明義務は、不合理な待遇差の解消を目的として、派遣元に課せられている義務です(労働者派遣法第26条第7項)。

派遣元は、派遣労働者から求めがあった場合、以下の内容について説明しなければなりません。

派遣元は、派遣労働者がこれらの説明を求めたことを理由として、解雇やその他の不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。

派遣先均等・均衡方式の場合の説明内容

派遣元が派遣先の通常の労働者との均等・均衡を考慮した待遇を確保する方式(派遣先均等・均衡方式)を採用している場合、説明すべき内容は以下の通りです。

  1. 比較対象労働者との待遇の相違の内容
    • 派遣労働者の待遇と、比較対象となる派遣先の通常の労働者の待遇との間の具体的な違い(相違点)
  2. 待遇決定に当たって考慮した事項
    • その待遇の相違が、職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲、その他の事情のうち、待遇の性質及び待遇を行う目的に照らして、待遇差の理由として適切と認められるものに基づいていることの説明

要するに、「派遣先の正社員と比較して、あなたの待遇はここが違う。その違いは、これらの合理的な理由(職務の違いなど)に基づいている」という点を具体的に説明する必要があります。

労使協定方式の場合の説明内容

派遣元が一定の要件を満たす労使協定により待遇を決定する方式(労使協定方式)を採用している場合、説明すべき内容は以下の通りです。

  1. 賃金が労使協定の内容に基づき決定されていること
    • 派遣労働者の賃金等が、その労使協定に定められた基準(同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準と同等以上)を満たしていること

労使協定方式では、個別の待遇差の理由ではなく、賃金の決定が協定に基づき適正に行われていることが主な説明事項となります。

説明する待遇について

労働者派遣法における派遣労働者への待遇説明義務は、賃金だけでなく、派遣先の通常の労働者との間で不合理な待遇差を設けないための措置全般に関わります。

具体的には、説明の対象となる「待遇」には、以下のようなものが含まれます。

  • 賃金(基本給、手当、賞与など)
  • 教育訓練
  • 福利厚生施設の利用

特に福利厚生に関しては、派遣先が講ずべき措置として、食堂、休憩室、更衣室などの施設については、派遣労働者に利用の機会を与えなければならないと定められています。

したがって、派遣労働者から求めがあった場合、派遣元は、賃金だけでなく、派遣先の通常の労働者との教育訓練や福利厚生施設などの待遇の相違の内容やその理由についても説明する義務があります。