ドレスコード(Dress Code)とは、企業が従業員に対して、勤務時間中や特定のビジネスシーンにおいて着用すべき服装の基準やルールを定めたものです。「服装規定」や「身だしなみ規定」とも呼ばれます。
企業がドレスコードを定める目的
企業が従業員の服装を規制する主な目的は以下の通りです。
企業の品位・イメージの保持
- 顧客や取引先に対して、企業の一員としてプロフェッショナルで信頼できる印象を与えるため。
- 特に、営業職や受付など、会社の「顔」として外部と接する機会が多い職種では、この目的が重要になります。
安全衛生の確保
- 工場や建設現場など、特定の作業環境において、機械への巻き込み事故を防ぐため。
- 食品を扱う現場で、異物混入や衛生上の問題を防ぐため(例:アクセサリー、長すぎる爪の禁止)。
職場秩序の維持
- 過度な露出や奇抜な服装など、他の従業員に不快感や違和感を与え、業務の妨げになることを防ぎ、健全な職場環境を維持するため。
ドレスコードの主な種類
企業が定めるドレスコードには、以下のような段階や種類があります。
制服/ユニフォーム
会社が指定した服を着用する。
最も規制が厳しく、特定の業務(工場、販売、サービス業など)や企業イメージ統一のために用いられる。
スーツスタイル
上下揃いのビジネススーツを着用する。
顧客対応が多い職種や、金融、士業など、高い信頼性が求められる業界で採用されることが多い。
ビジネスカジュアル
スーツほど堅苦しくないが、ジャケット着用など「きちんと感」を重視するスタイル。
外部との接触があるが、スーツほどの堅さは不要な場合に適している(例:ジャケット+スラックス、襟付きシャツ)。
オフィスカジュアル
社内業務が中心で、より柔軟な服装が許容されるスタイル。
ビジネスカジュアルよりさらにカジュアル。ジャケットが必須ではない場合もあるが、不潔感のある服装やTシャツ、ジーンズなどは禁止されることが多い。
ドレスコードのサンプル
一般的な会社が、従来のスーツスタイルからビジネスカジュアルに移行する場合の具体的なドレスコード例を示します。
○○株式会社ドレスコードガイドライン(例)
1. 基本となる考え方
本ガイドラインは、従業員一人ひとりがプロフェッショナルとしての自覚を持ち、業務を遂行する上で求められる清潔感、誠実さ、信頼感を表現するための基準を定めることを目的とします。
これは、社員の個性を不必要に抑圧するものではなく、個人の自由を尊重しつつ、会社全体としての秩序と企業価値を最大化するための、働き方における基本的なルールブックです。
本ガイドラインが必要とされる理由は、以下の三つの柱に基づいています。
① 企業の信用維持とブランドイメージの確立
当社は、顧客や取引先に対し、常にプロフェッショナルで誠実な企業として見られる必要があります。従業員の身だしなみは、外部に対する「会社の顔」そのものです。不適切な服装や装飾品は、知らず知らずのうちに企業の信用を損ない、事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。全員が共通の基準を持つことで、揺るぎない企業ブランドを確立します。
② 職場の秩序維持と業務効率化
職場は、多様な価値観を持つ社員が協働する場です。過度に華美な服装や、他者に不快感、威圧感を与える装飾は、集中力を妨げ、円滑なコミュニケーションを阻害し、職場の秩序を乱す原因となります。統一された清潔な服装基準は、社員同士がお互いを尊重し、気持ちよく業務に専念できる環境を創出します。
③ 安全と衛生の確保
業務内容によっては、極端な装飾品や特定の服装が、機械への巻き込みや異物混入といった安全・衛生上のリスクを生じさせることがあります。本規定は、こうしたリスクを未然に防ぎ、すべての従業員が安全に働ける環境を確保するためにも不可欠です。
従業員各位は、本ガイドラインが定める「ビジネスカジュアル」を基本とし、TPO(時・場所・場合)に応じた判断力を身につけ、プロフェッショナルとして相応しい服装を選択するよう努めてください。
2. 男性社員の服装基準
| 区分 | OKなアイテム(推奨) | NGなアイテム(禁止) |
| アウター | テーラードジャケット(ネイビー、グレー、チャコールなど落ち着いた色)、シンプルなカーディガン、ブレザー。 | 極端に派手な柄のジャケット、レザージャケット、ジャンパー・マウンテンパーカー、オーバーサイズのパーカー(防寒除く)。 |
| トップス | 襟付きシャツ(ボタンダウン、レギュラーカラー)、シンプルなポロシャツ、ハイゲージ(目の細かい)ニットやセーター、タートルネック。 | 大きなロゴやグラフィックTシャツ、タンクトップ、極端にカジュアルなスウェット。 |
| ボトムス | ウール素材のスラックス、センタープレスが入ったチノパン、ダークカラーのテーラードジーンズ(ダメージ加工なし)。 | ダメージデニム、極端に色落ちしたジーンズ、カーゴパンツ、ハーフパンツ、短すぎる丈のパンツ。 |
| 靴 | 革靴(ローファー、プレーントゥ、スリッポンなど)、シンプルなデザインのレザースニーカー(白、黒など)。 | サンダル(ビーチサンダル、クロックス類)、履き古したスニーカー、ブーツ(極端にカジュアルなもの)。 |
| その他 | ベルト、ネクタイ(任意)、無地または落ち着いた柄の靴下。 | 原色や蛍光色の靴下、過度に装飾されたベルト。 |
3. 女性社員・女性総合職の服装基準
| 区分 | OKなアイテム(推奨) | NGなアイテム(禁止) |
| トップス | 襟付きブラウス、カットソー(首元が開きすぎないもの)、シンプルなデザインのニット・カーディガン。 | 胸元が大きく開いた服、キャミソール、ノースリーブ(上着なしの場合)、露出度の高いビスチェ。 |
| ボトムス | スラックス、ひざ丈程度のスカート(膝上5cmまでを目安)、チノパンツ、ダークカラーのテーパードジーンズ(ダメージ加工なし)。 | ミニスカート(極端に短いもの)、ホットパンツ、レギンス、極端に広がったワイドパンツ。 |
| 靴 | パンプス、ローヒール、ローファー、シンプルで清潔なデザインのフラットシューズ。 | サンダル(ミュール、ストラップなしなど)、ハイすぎるヒール、極端にカジュアルなブーツ。 |
| その他 | ストッキングは着用を原則とする(真夏や外回り等、例外を設ける場合は明記)。 | 華美な柄のタイツ、過度に露出が多いデザインのアクセサリー。 |
4. 身だしなみ・装飾品に関する共通の禁止事項
| 区分 | 禁止事項 | 備考 |
| タトゥー | 勤務中に外部から確認できるタトゥー(入れ墨)。 | 長袖、絆創膏、コンシーラーなどで完全に隠すことを義務とする。 |
| ピアス | 耳たぶ以外の箇所へのピアス。または、極端に大ぶり・華美で職場の雰囲気にそぐわないピアス。 | 安全上、または顧客に不快感・威圧感を与えるものは不可。 |
| 清潔感 | 衣服のシワ、汚れ、ほつれ、強い体臭や香水。 | 他の従業員や顧客への配慮を欠くもの。 |
| サイズ感 | 極端にオーバーサイズまたは極端にタイトで体型に合っていない服装。 | だらしなく見えたり、威圧感を与えたりする。 |
このサンプルを参考に、御社の具体的な環境や顧客層に合わせて、基準を調整していただくのが良いかと思います。


