従業員のマイナンバーが必要な理由
所得税の手続きに必要
年末調整で発行する源泉徴収票にマイナンバーを記載しなければなりません。
公的保険の手続きに必要
厚生年金保険と健康保険の手続きで年金事務所や協会けんぽなどに提出する書類にマイナンバーを記載しなければなりません。
健康保険では被扶養者の手続きに被扶養者のマイナンバーも必要です。
雇用保険の手続きでハローワークに提出する書類にマイナンバーを記載しなければなりません。
利用目的を明示する
マイナンバーを収集する際には、従業員にマイナンバーの利用目的を伝える必要があります。
個人情報保護法第十八条 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。
利用目的を超えてマイナンバーを利用することは認められません。新しく利用目的が追加になる場合は、その都度従業員に利用目的を明示する必要があります。
すでに通知し取得した利用目的と関連性がある内容であれば、目的を通知すれば利用は可能です。
本人確認をする
マイナンバーは番号を知ればよいというものではありません。
マイナンバーを取得する際は、他⼈の成りすまし等を防⽌するため、厳格な本⼈確認を⾏う必要があります。本⼈確認では、①正しい番号であることの確認(番号確認)と②⼿続を⾏っている者が番号の正しい持ち主であることの確認(⾝元確認)を⾏います。
マイナンバーカードを持っている場合とそうでない場合の本人確認は異なります。
マイナンバーカードを持っている場合は、マイナンバーカードのみで確認できます。
マイナンバー通知カードも持っていない場合は、マイナンバーの記載された住民票の写しなど(番号確認)と公的な身分証明書(運転免許書・パスポートなど)が必要です。
マイナンバーカードを持っていない場合は、マイナンバー通知カード+公的な身分証明書(運転免許書・パスポートなど)となります。
本人確認の記録を残すために、本人確認書類(個人番号カード、身元確認書類等)をコピーして、保管することがあります。これは法令で禁止されていないので事業者の判断で行うことができます。
従業員の家族のマイナンバー
税金や社会保険の手続きには、従業員本人だけでなく扶養家族のマイナンバーも必要です。会社は被扶養者がいる従業員からは家族の分のマイナンバーも取得しなければなりません。
扶養家族のマイナンバーを収集するときは、会社が家族の本人確認を行う必要はありません。従業員に扶養家族の本人確認を行ってもらいます。
なお、厳密に言えば従業員による扶養家族の本人確認は少々複雑です。例えば、扶養控除等申告書の提出義務者は従業員本人であるため、会社は被扶養者の本人確認にかかわる必要はありません。しかし、国民年金の第3号被保険者の届出義務者は事業主であるため、本来は事業主が本人確認をしなければなりませんが、従業員が事業主の代理人として本人確認を行うことができます。
従業員の家族のマイナンバーを収集するときに、扶養家族以外の家族のマイナンバーを取得してはいけません。扶養家族以外の家族のマイナンバーは必要ないので、収集し管理することは認められていません。
提出を求める手続き
マイナンバー提出用の書式を用意して従業員に配布し記入してもらいます。その書式には、マイナンバーの利用目的を記載し、提出の際に持参するべき書類についても記載しておきます。
通常は人事課等で受け付ければよいですが、まとまった人数が手続きするのであれば、受付期間と提出窓口を決めて周知しましょう。
窓口で書式と本人確認書類を提出してもらい、担当者が確認して、書式に本人確認に関する記載をし、書式を保管します。本人確認書類はその場で本人に返却します。会社によっては本人確認書類のコピーをとることもありますが、必ず了解を得て下さい。
人事システムでマイナンバーを収集する
社員が住所や口座情報などを入力するシステム上のWebフォーム(多くは労務管理システムや人事システム)で、そのままマイナンバーも入力・提出してもらうのが、最も効率的で安全性が高い方法です。
Webフォームでマイナンバーを収集する理由
従来の紙での収集と比較して、Webフォーム(人事システム)での収集には以下の大きなメリットがあります。
法令が求める安全管理措置への対応
マイナンバーは「特定個人情報」として厳重な管理が義務付けられています。
- 物理的リスクの軽減: 紙の書類でマイナンバーを扱う場合、紛失、盗難、情報漏洩といった物理的なリスクが高まります。クラウド型の労務システムを利用することで、物理的な書類の保管が不要になり、リスクを大幅に軽減できます。
- アクセス制御の徹底: ほとんどの労務システムは、マイナンバーの取り扱い担当者にのみアクセス権限を限定する機能(アクセス制限)を備えています。
- 暗号化: システムに登録されたマイナンバーは、通信時も保存時も高度に暗号化されており、情報漏洩のリスクが最小限に抑えられます。
事務効率と正確性の向上
- 入力負担の軽減: 新入社員はスマートフォンやPCからいつでもどこでも入力でき、人事担当者が紙の情報を手動でシステムに入力し直す手間(転記ミスや二重入力のリスク)がなくなります。
- 本人確認書類の同時収集: 多くのシステムでは、マイナンバーカードや免許証などの本人確認書類の画像も、フォームから同時にアップロードしてもらうことが可能です。
行政手続きとの連携
- 新入社員がシステムに入力した住所やマイナンバー情報は、健康保険・雇用保険の資格取得届などの行政手続き書類に自動的に連携・反映され、そのままe-Gov連携による電子申請に利用されます。
ただし、留意点として
Webフォームでマイナンバーを収集する場合、以下の点に注意が必要です。
- システム選定: 利用する労務管理システムやマイナンバー管理システムが、特定個人情報ガイドラインに沿ったセキュリティ対策(暗号化、アクセス権限管理、利用履歴のログ管理など)を適切に講じていることが前提となります。
- 利用目的の明示: マイナンバーを収集する際は、利用目的(例:社会保険・雇用保険・税の手続き)を本人に明示し、同意を得る手順は紙ベースの手続きと同様です。一般的なシステムにはこの通知と同意取得のプロセスが組み込まれています。
提出を拒まれたら
所得税や社会保険等の書類にマイナンバーを記載して提出するのは、法律(国税通則法、所得税法など)で定められた義務ですが、従業員に提出を義務付ける規定はありません。
従業員に説明しそれでも提出しないのであればその旨を付して書類を提出するしかありません。健康保険証の発行が遅れるなどの不利益が従業員に発生しても会社の責任ではありません。
