子ども・子育て支援金制度とは?

賃金・賃金制度

制度の概要

この制度は、少子化対策の財源を確保するための新たな仕組みであり、企業と従業員の双方に影響があります。

  • 目的: 強化された少子化対策(「こども未来戦略」の加速化プラン)の安定的な財源を確保すること。
  • 仕組み: 全世代・全経済主体が子育て世帯を支える「新しい分かち合い・連帯の仕組み」として、医療保険の保険料と合わせて「子ども・子育て支援金(支援納付金)」が徴収されます。
  • 開始時期: 令和8年度(2026年4月)から徴収が開始される予定です。
  • 段階的導入: 令和8年度から令和10年度にかけて、段階的に徴収額が引き上げられます。

企業の負担と徴収実務

項目詳細(被用者保険加入の場合)
負担者企業(事業主) と 従業員(被保険者) の折半負担となります。
徴収方法従業員が加入する医療保険の保険料に上乗せされる形で徴収されます。
実務への影響従業員の給与から控除する社会保険料の総額が増加するため、給与計算システムの設定変更や、従業員への周知が必要になります。
負担額の目安制度開始当初は、被用者保険の加入者1人あたり月額数百円程度の負担増が想定されています(年収や加入する医療保険によって異なります)。具体的な支援金率は今後決定されます。

支援金制度の負担額の「目安」

具体的な「徴収率(支援金率)」はまだ確定していません。

しかし、徴収額の目標水準と、加入者一人当たりの平均月額の「目安」は政府から示されています。

1. 徴収目標水準(令和10年度)

  • 徴収総額の目標: 令和10年度(2028年度)に約1兆円の支援金を集めることを目標としています。
  • 支援金率の想定: 最終的に、医療保険の保険料率に上乗せされる支援金率は、令和10年度に0.4%程度になることが想定されています。

2. 加入者一人当たりの平均月額(被用者保険)

こども家庭庁などが公表している試算に基づくと、被用者保険(会社員・公務員など)の加入者一人当たりの平均月額(労使折半前の総額)は以下の通り見込まれています。

導入時期医療保険加入者一人当たり平均月額(見込み)
令和8年度(2026年度)約300円
令和10年度(2028年度)約500円~1,000円超 (満額時・保険者により変動)

3. 会社(事業主)と従業員の負担イメージ

この支援金は労使折半で負担します。

  • 従業員の負担(月額): 上記平均月額の半額が給与から控除される健康保険料に上乗せされます(例:令和8年度は約150円)。
  • 会社(事業主)の負担(月額): 上記平均月額の半額が会社負担分として発生します。
  • 実際の負担額は、従業員の給与(標準報酬月額)や、会社が加入している医療保険(協会けんぽ、健康保険組合など)の財政状況によって異なります。

従業員への影響と周知事項

  • 負担増: 従業員は給与から控除される社会保険料(健康保険料)が増額します。
  • 周知: 人事担当者として、制度の目的、導入時期、負担の仕組み、徴収される金額の目安について、従業員に説明する必要があります。

人事担当者としての準備事項

給与計算の準備

徴収が開始される2026年4月に向けて、給与計算・年末調整に関わるシステムの点検が必要です。

給与明細書の控除項目を必ずしも増やす必要はありませんが、透明性と従業員への説明の観点から、支援金分を明記することが望ましいとされます。

情報収集

具体的な徴収率(支援金率)や計算方法の詳細は、今後、政令や省令の制定、および各医療保険者での保険料率決定プロセスを経て確定することになります。

人事担当者としては、令和7年度末から令和8年度初めにかけて、各医療保険者(健康保険組合や協会けんぽ)からの通知や、こども家庭庁の最新情報に特に注意を払う必要があります。


なお、「子ども・子育て支援金制度」は令和8年度(2026年4月)から始まりますが、現行の「子ども・子育て拠出金」制度は引き続き存続します。目的や仕組みが異なる別々の制度として併用されることになります。「支援金」は強化された少子化対策全般の財源であり、「拠出金」は児童手当、企業主導型保育事業などの財源です。