ジョブ型雇用とは?従来の雇用との違いやメリット・デメリットを解説

Last Updated on 2025年9月13日 by

ジョブ型雇用とは

ジョブ型雇用をスポーツチームで例えると…

ジョブ型雇用は、「サッカーチームでフォワードとして活躍できる人を募集します!」というように、最初に「どんな仕事をするか(ポジション)」をはっきり決めてから、それにぴったりの人を探して雇うイメージです。

つまり、

  1. まず「フォワード」という仕事(ジョブ)がある。
  2. 次に「フォワードの仕事ができる人」を契約する。
  3. 給料は「フォワードとしてどれだけゴールを決めたか(成果)」で決まる。

これがジョブ型雇用の基本です。

従来の雇用制度とどう違うの?

多くの日本企業がこれまで採用してきたのは、メンバーシップ型雇用と呼ばれるものです。これは、「サッカーチームに入ってくれる人を募集します!」というように、まずは「会社の一員(メンバー)」として採用し、入社後にいろいろな仕事を任せていくイメージです。

ジョブ型雇用メンバーシップ型雇用
考え方「仕事に人をつける」「人に仕事をつける」
給料担当する仕事の内容や成果で決まる勤続年数や年齢、能力などで決まる
異動原則として、決まった仕事しかしないさまざまな部署に異動して経験を積む
求められる人特定の分野の専門家(スペシャリスト)いろいろな仕事ができる総合職(ゼネラリスト)

メリットとデメリット

ジョブ型雇用には、得意なことを活かして専門性を深められるというメリットがあります。また、成果が給料に直結しやすいため、モチベーションも上がります。

一方で、決められた仕事以外はあまり担当しないため、幅広い経験が積みにくいというデメリットもあります。また、もし担当していた仕事がなくなると、会社に残ることが難しくなる可能性もあります。

政府はジョブ型雇用を推進している

2024年6月21日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2024年改訂版」では、日本企業の競争力を高めるために、ジョブ型人事の導入を推進していく方針が明確に示されています。

政府がジョブ型雇用を推進する背景

政府がジョブ型を推進するのは、以下のような課題を解決するためです。

  1. 賃金の上昇:個人のスキルや職務の成果に直結するジョブ型にすることで、年齢や勤続年数に関係なく賃金が上がる機会を増やし、賃金全体の底上げを目指しています。
  2. 従業員のキャリア自律:従来のメンバーシップ型では、個人のキャリアは会社主導の異動に左右されがちでした。ジョブ型では、職務が明確になることで、従業員が自ら必要なスキルを学び(リスキリング)、主体的にキャリアを選択できるようになることを期待しています。
  3. 専門人材の確保:グローバル化やデジタル化が進む中で、企業は特定の高度なスキルを持つ専門人材を迅速に確保する必要があります。ジョブ型は、このニーズに応えやすい雇用形態です。

この計画に基づき、政府は既にジョブ型人事制度を導入している企業の事例をまとめた「ジョブ型人事指針」を公表し、各企業が自社の実情に合わせて導入を検討できるように支援しています。

賃金制度は職務給に移行する

政府がジョブ型雇用を推進しているということは、将来的には賃金制度として職務給が主流になる可能性が高いことを意味します。

これまで日本企業に広く浸透してきた職能給(個人の能力や勤続年数に応じて賃金を決める仕組み)から、職務給(担当する仕事の価値や責任に応じて賃金を決める仕組み)への移行を、国全体で促していく方向性になると思われます。

なぜ職務給が主流になると考えられるのか

政府が職務給を推進する背景には、いくつかの狙いがあります。

  • 賃金の底上げと流動性の向上職務給は、年齢や勤続年数に関係なく、仕事の価値で賃金が決まります。これにより、特定の専門スキルを持つ若手や中途採用者が、入社直後から高い給与を得るチャンスが生まれます。優秀な人材が職種や企業を超えて活躍しやすくなり、労働市場全体の活性化につながると期待されています。
  • 同一労働同一賃金同じ仕事をしているのに、雇用形態や勤続年数が違うだけで給料に差が出るという不公平感をなくすため、職務給は有効な手段とされています。
  • グローバルな競争力強化海外ではジョブ型雇用と職務給が一般的であり、日本企業がグローバルな人材獲得競争で勝つためには、世界標準の賃金制度に合わせる必要性が高まっています。

もちろん、全ての企業がすぐに職務給に移行するわけではありませんし、日本独自の慣習も考慮した「日本型ジョブ型」が模索されています。しかし、政府の方針や多くの大企業が導入を検討している流れを見ると、将来的には職務給が賃金制度のスタンダードになっていく可能性が高いと言えるでしょう。


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