治療と仕事の両立支援の推進(労働施策総合推進法一部改正2026年4月施行予定)について分かりやすく解説

安全衛生管理

労働施策総合推進法の一部改正による治療と仕事の両立支援の推進について、分かりやすく解説します。

治療と仕事の両立支援の推進とは

この改正は、病気の治療を続けながら、働き続けることを希望する労働者を企業がサポートするための仕組みを強化するものです。高齢化や医療の進歩により、病気(がん、難病、脳卒中、糖尿病、メンタルヘルス疾患など、反復・継続した治療が必要な全ての疾病)を抱えながら働く人が増えており、安心して働き続けられる環境づくりが社会全体の課題となっています。

改正のポイント:事業主の「努力義務」化

最大のポイントは、事業主に対して、職場における治療と仕事の両立を促進するために必要な措置を講じることを「努力義務」とした点です(施行は2026年4月の予定です)。

これまでは、厚生労働省が策定した「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」に基づき、企業の自主的な取り組みが促されてきました。今回の改正により、この取り組みが法律に基づく事業主の基本的な責務として、より明確に位置づけられることになります。

具体的に企業に求められること

法改正に伴い、国は具体的な取り組みを定める「指針」を策定します。これにより、企業は以下のような環境整備や個別支援の取り組みを強化することが求められます。

職場での環境整備(事前の備え)

  • 基本方針の表明と周知: 事業主が両立支援に関する基本方針を明確にし、従業員に周知すること。
  • 相談窓口の明確化: 労働者が安心して相談できる窓口や担当者を決めること。
  • 意識啓発: 研修などを通じて、病気や両立支援に関する知識を広め、職場全体の理解を深めること。
  • 両立支援制度の整備: 柔軟な働き方を可能にする制度を整えること。
    • 例: 時間単位の有給休暇、病気休暇、時差出勤、フレックスタイム制度、テレワーク、短時間勤務制度など。

個別支援の実施(実際に病気を抱える労働者への対応)

病気を抱える労働者から相談があった際、会社は以下の関係者と連携しながら、その労働者の状況に応じたサポートを行います。

  • 情報連携: 労働者の同意を得て、主治医(治療の専門家)や産業医(職場の健康管理の専門家)と情報共有を行い、治療状況や仕事への影響を把握します。
  • 両立支援プランの策定: 労働者、会社、産業保健スタッフなどが協力し、治療の必要性と仕事の継続を両立するための具体的な計画(「両立支援プラン」)を作成します。
  • 適切な配慮: 計画に基づき、勤務時間の調整や配置転換、業務内容の軽減など、必要な就業上の措置を講じます。

この改正の意義

  • 労働者の安心感向上: 病気になっても「辞めなくて済む」「治療と仕事を両立できる」という安心感が生まれます。
  • 企業の人材確保・定着: 優秀な人材が治療のために離職することを防ぎ、従業員のモチベーション向上や企業イメージの向上にもつながります。
  • 社会全体のサポート: 働く意欲のある人が能力を発揮し続けられる「多様な働き方」が実現しやすくなります。

この改正は、病気になった人が「特別な配慮」を受けるのではなく、誰もが利用できる「当たり前の仕組み」として両立支援を職場に根付かせることを目指しています。