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株主総会

株主総会を省略することはできますか?

Last Updated on 2025年8月15日 by

株主全員の同意で省略できます

株主総会を省略することは可能です。この制度はみなし決議(または書面決議)と呼ばれ、会社法によって認められています。

議決権を行使できる株主の全員が、書面か電磁的記録かにより、決議を省略することについて同意の意思表示をした時は、株主総会で提案が可決したものとみなすことができます。

この制度は、主に株主が少数の会社で活用されます。例えば、一人会社、家族経営の会社、完全子会社などが該当します。株主が不特定多数にわたる上場企業などでは、株主全員の同意を得ることが事実上不可能なため、この方法は使えません。

このように書面だけで株主総会を開いたことにできる制度を、株主総会の書面決議といいます。

株主総会の決議の省略を提案ができるのは取締役か株主です。

手続き

みなし決議の提案

「みなし決議」は、株主総会を実際に開催せず、書面上の手続きで決議を成立させる方法です。そのため、通常行われる招集通知は不要です。

「みなし決議」を行う場合は、株主全員に議案の内容と同意を求める旨を伝える必要があります。これは、「招集通知」ではありませんが、実質的にはそれに代わる役割を果たします。

みなし決議の提案書(文例)

以下に、みなし決議を行う際の提案書の文例を示します。

(株主様名)

提案者:○○株式会社 取締役 ○○

件名:株主総会決議の省略に関するご提案

拝啓

時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

さて、このたび当社の重要事項につきまして、会社法第319条第1項の規定に基づき、株主総会の決議を省略し、書面によるご同意を賜りたく、下記の通りご提案申し上げます。

何卒ご同意のほどお願い申し上げます。

敬具

1.決議の目的事項

(例:第〇期事業年度決算報告の承認について)

(例:取締役○○の選任について)

2.提案の理由

当期における事業活動の結果、および財務状況を報告し、その承認を求めるものです。また、株主の皆様の利便性を考慮し、迅速な意思決定を目的として、書面での決議にご同意いただきたく、ご提案いたします。

3.ご同意の方法

お手数をおかけいたしますが、本状にご同意いただける場合は、同封の「同意書」にご署名・ご捺印の上、〇月〇日までに当社宛にご返送いただけますようお願い申し上げます。

以上

同封する同意書

株主総会決議の省略に関する同意書

私、○○は、上記提案書に記載された事項について、会社法第319条第1項の規定に基づき、株主総会の決議があったものとみなすことに同意します。

署名・捺印:

みなし決議の成立

提案書と同意書を、議決権を行使できるすべての株主に送付し、全員の同意を得ることで、みなし決議が成立します。

全員の同意書が集まった段階で、すでに株主全員が書面で議案に同意しているため、総会を開く必要がなくなります。

議事録作成

このように、株主総会を開催せずに、株主総会決議の効力が発生しますが、株主総会の議事録は作成しなければなりません。

議事録には、決議があったとみなされた事項の内容、提案者の氏名、決議があったとみなされた日などを記載し、会社に10年間備え置く必要があります。

株主総会議事録(文例)

〇〇株式会社臨時株主総会議事録

会社法319条第1項の規定に従い、株主総会の目的である事項につき株主が提案を行い、同提案につき当社株主全員の同意を得たので、会社法318条及び同施行規則第72条第4項1号に従い、本議事録を作成する。

1.株主総会の決議があったとみなされた事項

1.決議の目的事項

(例:第〇期事業年度決算報告の承認について)

(例:取締役○○の選任について)

2.提案をした者の氏名または名称
〇〇株式会社(当会社の単独株主)

3.株主総会の決議があったとみなされた日
令和〇年〇月〇日

〇〇株式会社代表取締役〇〇〇〇印

余談

「みなし決議」と「書面決議」は、同じ制度を指す言葉として使われることが多く、どちらを使っても間違いではありません。ただし、厳密なニュアンスや法律上の用語としては「みなし決議」がよいでしょう。

「みなし決議」は会社法上の用語

会社法第319条では、株主総会の決議を省略する手続きについて、以下のように規定しています。

取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。

このように、法律の条文では、「あったものとみなす」という表現が使われています。これが「みなし決議」という名称の由来です。

「書面決議」は慣習的な用語

一方、「書面決議」という呼び方は、この制度が「書面」による株主全員の同意を要件としていることから、実務上や慣習的に広く使われています。

書面投票制度

また、混同されやすい制度として「書面投票制度」があります。これは、株主総会を実際に開催する前提で、出席できない株主が書面で議決権を行使する制度です。「みなし決議」が総会そのものを省略するのに対し、「書面投票制度」は総会を開催することが前提であるため、全く別の制度です。この点も注意が必要です。


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