在職老齢年金制度とは?
在職老齢年金制度は、少し分かりにくい制度なので、なるべく簡単な言葉で解説します。
この制度は、「年金をもらいながら働いている人」の年金を、その人の「給料が高すぎる場合」に、一時的にカットするためのルールです。
なぜこんな制度があるのか?(制度の目的)
本来、年金は「働けなくなったときの生活を支えるため」のものです。しかし、60歳や65歳を過ぎても高い給料をもらってバリバリ働いている人は、生活に困っているとは考えにくいです。
そこで、年金制度の財源を公平に保つため、「高収入の人には、生活の支えとなる年金を少し減らして、その分を本当に困っている人のために回しましょう」という目的で設けられています。
カットされる年金の種類
カットの対象になるのは、老齢厚生年金だけです。
- カットされる年金: 老齢厚生年金(会社員・公務員として働いた期間に応じた年金)
- カットされない年金: 老齢基礎年金(国民全員がもらえる年金)
カットされるかどうかの「基準額」
年金がカットされるかどうかを決める境界線となるのが、「支給停止調整額」です。
あなたの「年金(月額)」と「給料(月額)」の合計額が、この基準額(51万円など)を超えると、年金がカットされます。
- 現在の基準額: 51万円(2025年度)
- 将来の基準額: 62万円(2026年4月以降の予定)
つまり、働いて得た給料と年金の合計がこの基準額を下回っていれば、年金は全額もらえます。
どれくらいカットされるのか?
合計額が基準額(例:51万円)を超えた分の、半分が年金からカットされます。
計算式:
カットされる年金額= (年金の月額+ 給料の月額) – 基準額 の2分の1
例(現行の51万円基準の場合):
項目 | 金額 |
---|---|
老齢厚生年金(月額) | 15万円 |
給料(月額の平均) | 45万円 |
合計 | 60万円 |
基準額 | 51万円 |
- 基準額をどれだけ超えたか?
60万円- 51万円=9万円 - カットされる額は?
9万円の2分の1 = 4.5万円
この例では、年金15万円のうち4.5万円がカットされ、残りの10.5万円が支給されます。
なぜ基準額が「62万円」に上がるのか?
最近の改正で基準額が「62万円」に引き上げられるのは、「高齢者にもっと働いてもらいたい」という政府の方針を反映したものです。
基準額が上がれば、それだけ年金がカットされにくくなり、「働いたら年金が減る」という心理的な壁を下げることができます。これにより、高齢者がより高収入を得ても、年金の減額を気にせず働けるようになる効果をねらっています。