カテゴリー: 社会保険

  • 社会保険料の随時改定

    社会保険料の随時改定とは

    社会保険(厚生年金保険と健康保険)の保険料料金は、原則として算定基礎届(定時決定)で決められた標準報酬月額を1年間続けて使います。

    しかし、途中で昇給などによって報酬額が大きく変動した場合は、そのまま前の標準報酬月額を使い続けるのは不合理であることから、次の定時決定を待たずに標準報酬月額を改定することになっています。これを随時改定といいます。

    社会保険料の随時改定が必要なとき

    随時改定をしなければならないのは、次の要件をすべて満たしたときです。

    ・ 昇給やベースアップにより固定的賃金に変更があった
    ・ 変動月以降継続した3ヶ月間のいずれの月も報酬の支払い日数が17日以上ある
    ・ 変動月を含む3ヶ月間の報酬の平均月額に該当する標準報酬月額が従来の標準報酬月額と比べて2等級以上の差が生じている

    上記の要件を満たした従業員については、固定的賃金の変動月以後引き続く3ヶ月の翌月に、「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」を年金事務所に提出しなければなりません。

    例えば、扶養家族の増加や住宅手当の増額などで、6月に給料が上り、その結果、6、7、8月の報酬の平均に相当する標準報酬月額が、5月までと比べて2等級以上の差が生じたときに、引き続く3ヶ月の翌月である、9月に月額変更届を提出しなければなりません。

    また、経済状況により一時帰休による休業手当支給のための賃金低下、賃金の一部カット等が行われた場合も、固定給の変動とみなして随時改定による標準報酬の改定の対象とします。

    社会保険料の変更月

    月額変更届を提出すると、改定された標準報酬月額が通知されてきます。新しい標準報酬月額は、固定的賃金の変動月以後引き続く3ヶ月の翌月から使用し、保険料が変わります。上記の例のように6月に昇給した場合は、9月から改定され、10月徴収分から適用されます。

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  • 賞与に対する社会保険料

    賞与の社会保険料

    賞与を支給するときは、社会保険料を差し引いて支給し、賞与支払届を提出しなければなりません。

    従業員は、被保険者資格を取得した日の属する月から喪失した日(退職日の翌日)の属する月の前月までの保険料を負担します。

    退職する月に支給する賞与は、月末に退職する場合を除いて社会保険料控除の対象になりません。

    手続き上の資格喪失日は、退職日の翌日です。ですから、7月31日に退職すると資格喪失日は8月1日になり、7月支給の賞与に対する社会保険料を負担しなければなりません。

    7月30日の退職であれば、資格喪失日は月内の7月31日になるので、7月支給の賞与に対する社会保険料を負担する必要がありません。

    なお、これに該当して保険料がかからない場合であっても、賞与支払届には記載が必要です。

    資格取得と資格喪失の月が同一の場合で賞与が支給された場合には保険料がかかります。

    計算方法

    賞与のときの社会保険料計算は、毎月の給与のときとは少し違います。

    社会保険料は、保険料は標準賞与額に保険料率を乗じて計算します。

    標準賞与額は、賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた額です。

    計算した保険料を、(一部を除いて)事業者と被保険者が半分ずつ負担します。

    健康保険料(事業主と被保険者で折半)
    健康保険料・介護保険料(事業主と被保険者で折半)
    厚生年金保険料(事業主と被保険者で折半)
    子ども・子育て拠出金(全額事業主負担)

    計算例

    賞与が224,360円の人(介護保険対象外の40歳未満とします)がいるとします。

    この人の標準賞与額は、「賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた額」である224,000円です。

    仮に、健康保険の料率が9.91%、厚生年金保険の料率が18.30%だとすると以下の式になります。

    【健康保険料】
    224,000円×9.91%×1/2=11,099.2円→11,099円

    【厚生年金保険料】
    224,000円×18.30%×1/2=20,496円→20,496円

    料率の後に2で割っているのは、社会保険料は労使折半だからです。

    また、上端数の処理は、「50銭以下の場合は切り捨て、50銭を超える場合は切り上げて1円とする」です。

    賞与支払届

    賞与を支払ったときは、5日以内に「被保険者賞与支払届」と「被保険者賞与支払届総括表」を提出しなければなりません。賞与を支給しなかった場合には、「総括票」のみ提出します。提出は年金機構の事務センターへの郵送、電子申請等によります。

    提出期限が短いので、後で、と思っていると遅れがちです。実務的には、賞与の支払いと同時に提出するように心がけましょう。

    電子申請

    特定の法人(資本金が1億円を超える法人など)は2020年4月から賞与支払届の提出について電子申請が義務化されています。


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  • 社会保険算定基礎届

    算定基礎届とは

    厚生年金と健康保険の保険料はまとめて社会保険料として納付します。各人の負担額は、原則として1年に1回、各人の賃金に応じて見なおして標準報酬月額を改定します。これを「定時決定」といいます。各人に支払った賃金を「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届」に記載して日本年金機構(事務センター)に提出(郵送)します。電子申請もできます。

    被保険者報酬月額算定基礎届の提出期限は7月1日から7月10日です。

    原則として、7月1日現在被保険者である人について算定基礎届を提出する必要がありますが、次の人は対象になりません。

    1.その年の6月1日以降に被保険者の資格を取得した人
    2.その年の7月に標準報酬の随時改定が行われる人
    3.その年の8月、9月に標準報酬の随時改定が行われる人

    標準報酬月額を決定する

    原則として、4月、5月、6月の3ケ月間に支払われた給与の総額を3で割った額が報酬月額となり、その額を、年金事務所が配布する「健康保険・厚生年金保険料額表」にあてはめて、標準報酬月額を決定します。

    但し、給与の支払基礎日数が17日未満の月は計算から除きますので、支払基礎日数が17日以上の月が2ケ月の場合はその合計額を2で割った額、17日以上の月が1ヶ月の場合にはその1ヶ月の額を基に決定します。

    4月、5月、6月に支払基礎日数が17日以上の月が1ヶ月もない場合は、保険者が決定することとなっており、従前の標準報酬月額そのままで決定します。

    4月、5月、6月に遡って昇給が行われるなどして、差額分がまとめて支払われた場合には、遡及支給分は除いて修正平均額を求めて決定します。

    4月、5月、6月に期間を超える通勤定期代が支給された場合には、1ヶ月分の金額を算出し各月の給与に加算して決定します。

    変更になった人には通知しなければなりません。
    社会保険料の変更を従業員に通知する

    支払基礎日数とは

    月給制や週給制の場合は、暦日数が支払基礎日数ですが、欠勤による給与の控除が行われた場合には、暦日数から欠勤の日数を控除した日数が支払基礎日数です。

    日給制、時給制の場合には、出勤日数が支払基礎日数です。

    年次有給休暇については、給与、日数とも計算に入れ決定します。

    報酬に含まれるもの

    標準報酬月額を決める際の報酬とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与、その他、名称にかかわらず労務の対償として受けるものすべてを含みます。ただし、大入り袋や見舞金のような臨時に受けるものや、年3回以下の賞与は含まれません。

    通勤定期券や食事、社宅などの現物の支給も原則として報酬に含みます。ただし、作業服や一定の本人負担をさせている食事などは含まれません。

    詳細は次の一覧表を参考にしてください。
    社会保険料の対象になる賃金

    賞与は別計算

    毎月の給与に対する保険料は上記の扱いですが、賞与に対する社会保険料は別の方法で決まります。
    賞与に対する社会保険料

    その他の改定

    随時改定

    定時決定の時期以外に報酬の変動があったときは随時改定する場合があります。
    社会保険料の随時改定

    育児休業等終了時の報酬月額改定

    育児休業後の報酬低下に対応する改定があります。
    育児休業等終了時の報酬月額改定

    産前産後休業終了時の報酬月額改定

    産前産後休業終了後の報酬低下に対応する改定があります。
    産前産後休業終了時の報酬月額改定

    保険者決定

    通常の方法で算定することが困難な場合や著しく不当である場合、保険者決定が行われます。

    例えば、次のような場合に保険者決定があります。
    (ア)病気欠勤等によって4月、5月、6月に報酬を全く受けない場合は、従前の標準酬月額で保険者決定があります。
    (イ)報酬の支払基礎日数が4月、5月、6月の3か月とも17日未満の場合は、従前の標準報酬月額で保険者決定があります。

    同時得喪

    定年後継続雇用等の場合には同時得喪のやり方で速やかに改定します。
    定年後継続雇用時の改定

    電子申請

    電子申請で手続きすることもできます。

    特定の法人(資本金が1億円を超える法人など)は2020年4月から被保険者報酬月額算定基礎届・被保険者報酬月額変更届について電子申請が義務化されています。


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  • 事業を始めた時の社会保険手続き

    事業を始めたときは、5日以内に事業所として社会保険(健康保険と厚生年金保険)に加入する手続きをして、同時に、個々の従業員を社会保険に加入させる手続きをしなければなりません。

    まずは適用可否を判定する

    まずは、自分の事業が強制適用か否かを判断します。

    株式会社や合同会社、社会福祉法人などの法人事業所は常勤者が1人以上いれば強制適用です。

    農林、水産、飲食店、旅館、その他のサービス業などの個人事業所は人数を問わず強制適用ではありません。

    製造業、卸売業など上記以外の業種の個人事業所は常勤者が4人以下のときは任意適用、常勤者が5人以上で強制適用です。常勤者の人数には事業主を含みません。

    強制適用事業所

    法人の場合は、すべて強制適用事業所であり、事業主や従業員の意思に関係なく、必ず健康保険と厚生年金保険の加入手続きをとらなければなりません。また、法人の場合は社長を含め常勤の役員も被保険者になります。

    よって、法人の場合は、従業員が一人もいない段階でも、社長を加入させなければならないので社会保険の適用事業所になる手続きをしなければなりません。。

    個人事業の場合は、業種と雇用人数によります。

    個人事業の場合は、強制適用であっても、事業主は社会保険に加入できません。国民年金と国民健康保険のままです。

    個人事業は業種や人数により強制適用事業でない場合があります。個人事業のうち強制適用事業にならないのは、次のいずれかの事業所です。
    1.法定16種に属する事業所であり、常時5人未満の従業員を使用するもの
    2.法定16種以外の事業所であるもの(何人使用していても強制適用ではありません)

    法定16種以外の事業所は次の事業所です。

    1.農林、水産、畜産などの第一次産業の事業所
    2.旅館、料理店、飲食店、映画館、理容業などの事業所
    3.弁護士、税理士、社会保険労務士などの事業所
    4.神社、寺院などの宗教関係の事業所

    言い方を変えれば、上記の1~4の事業所は、社会保険に加入する必要がない事業所です。

    強制適用から外れている事業所の従業員は、個人で、市町村が運営する国民年金や国民健康保険に加入する必要があります。

    新規適用届を提出する

    強制適用に該当する場合は、健康保険・厚生年金保険新規適用届を、所轄年金事務所または加入する健康保険組合・厚生年金基金に提出します。提出期限は事業を始めてから(強制適用に該当してから)5日以内です。

    下記のページは、日本年金機構ホームページの新規適用についてのページです。健康保険・厚生年金保険新規適用届の書式と記載例をダウンロードできます。

    任意適用事業所

    強制適用事業所に該当しなければ加入する義務はありませんが、あえて社会保険に加入したい場合は、任意適用事業所の認可を受けて健康保険・厚生年金保険の適用事業所となることができます。

    社会保険の任意適用事業所

    労働保険の届け出

    労災保険と雇用保険の手続きも忘れてはいけません。

    事業を始めた時の労働保険手続き

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  • 事業を廃止するときの社会保険の手続き

    適用事業所全喪届

    廃業などにより事業をやめたときは、任意適用取り消しにより適用事業所をやめたときは、「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を提出しなければなりません。

    具体的には次に該当する場合です。
    (1)事業を廃止(解散)する場合
    (2)事業を休止(休業)した場合
    (3)他の事業所との合併により事業所が存続しなくなる場合
    (4)一括適用により単独の適用事業所でなくなった場合

    従業員の、健康保険・厚生年金保険の「被保険者資格喪失届」も提出しなければなりません。

    いずれの書類も、日本年金機構のホームページからダウンロードすることができます。

    提出期日は事実発生の日から5日以内です。提出先は日本年金機構ですが、電子申請または事務センターへ郵送で提出します。郵送提出の場合は当日消印有効です。窓口提出を希望する場合は事業所の所在地を管轄する年金事務所になります。

    「~から〇日以内」という場合は、法律的には、原則として初日を参入せずにカウントした〇日目が満了日となります。例えば「事実発生」が5月10日であれば、翌11日から5日カウントします。つまり、11、12、13、14、15で、5月15日には提出しなければならないことになります。

    添付書類

    添付書類は次の通りです。電子申請により提出する場合は、添付書類は、画像ファイル(JPEG形式またはPDF形式)で添付します。

    法人を廃業する場合

    □ 解散登記の記載のある、法人(商業)登記簿謄本のコピー
    □ または、雇用保険適用事業所廃止届のコピー

    「解散登記の記入がある法人登記簿謄本のコピー」は、破産手続廃止又は終結の記載がある閉鎖登記簿謄本のコピーでも可です。また、いずれも用意できない場合は下記の書類でも可です。

    ・給与支払事務所等の廃止届のコピー
    ・合併、解散、休業等異動事項の記載がある法人税、消費税異動届のコピー
    ・休業等の確認ができる情報誌、新聞等のコピー
    ・その他、適用事業所に該当しなくなったことを確認できる書類

    任意適用取り消しの場合

    □ 任意適用取消申請書
    □ および、任意適用取消同意書

    任意適用取消同意書は、被保険者の4分の3以上の同意を得たことを証する書類です。

    廃業に際して必要なその他の手続き

    社会保険だけでなく、労働保険の手続きも必要です。

    事業を廃止するときの労働保険の手続き

    法人の場合は、解散登記から始まる一連の手続きが必要です。

    株式会社の解散手続き

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