Last Updated on 2025年8月18日 by 勝
棚卸資産とは
棚卸資産とは、企業が販売する目的で保有している商品、製品、またはその生産に使用する材料のことです。小売店なら店頭や倉庫の商品、製造業なら原材料・仕掛品・完成品などが該当します。
棚卸資産は「在庫」と呼ぶこともあります。基本的に同じ意味ものです。社内に残っている商品などを通常「在庫」と呼びますが、決算時に計上するときに「棚卸資産」という勘定名を用います。
棚卸資産の評価
棚卸資産は、帳簿に記載されている数量と一致することが大事ですが、それだけでなく、品質や状態も大事です。 破損や腐食などが発生している商品は、棚卸資産としての価値が減じているので、そのまま同じ価格で計上しておくのは不都合です。適切な価格に訂正するか、商品を処分する(除却)必要があります。
棚卸で発見された商品価値がなくなった商品の除却処理について、いくつかの注意点があります。
除却損を計上するポイント
税務上、除却損が認められるためには、「客観的に見て、もはや販売が困難であり、事業の用に供する見込みがない」という事実を証明する必要があります。単に「売れない」という主観的な理由では不十分です。
以下の対策を講じることで、税務調査への備えをすることができます。
除却の理由を明確にする
なぜこの商品が売れないのか、その理由を客観的に説明できるようにします。例えば、
陳腐化: モデルチェンジ、新しい技術の登場、流行の終焉などにより、市場での需要がなくなった。
破損・劣化: 長期保管により、商品のパッケージや本体に目に見える傷や汚れがある。
市場性の喪失: 特定のイベントや季節に特化した商品で、時期を逃してしまった。
社内での意思決定プロセスを記録する
除却処理は、社長や担当役員の独断ではなく、組織として正式に決定したものであることを示すことが重要です。
稟議書、指示書などに、除却の理由、対象商品、除却方法などを記録し、決裁者の署名や押印をもらっておきましょう。
物理的な処分を証明する
除却は、帳簿上だけでなく、実際に商品を物理的に処分することが原則です。
これは、税務調査において架空の除却損と見なされるリスクがあるためです。除却処理をしたのであれば、その商品は物理的に処分(廃棄、売却、譲渡など)し、帳簿上の処理と物理的な状態を一致させることが重要です。また、証拠の写真や産廃業者の処分証明書を保存しておきましょう。
廃棄時の写真や動画: 廃棄している状況を、日付や商品が特定できるように撮影しておきます。
廃棄証明書: 産業廃棄物処理業者に依頼して処分する場合は、必ず廃棄証明書を発行してもらい、保管しておきます。
売却: ゼロまたはごくわずかな金額で売却する場合も、売却先との契約書や請求書、入金の記録などを残しておきます。
除却以外の選択肢
除却だと否認されるのではないかと感じる場合、または完全に価値がなくなったとまでは言えない場合、除却以外の会計処理を検討することもできます。
棚卸資産の評価損を計上する
商品の価値が著しく下落したと認められる場合、帳簿上の価額を時価まで引き下げる評価損を計上することができます。
ただし、税務上、この評価損が認められるのは「著しい陳腐化」など、一定の厳しい要件を満たす場合に限られます。単に売れ残っているというだけでは、なかなか認められにくいのが実情です。
安価での販売を試みる
B級品としての販売、あるいは専門業者への安価な一括売却なども選択肢です。
わずかでも収益があれば、その分は売上として計上し、仕入原価との差額が損失となります。除却損を計上するよりも税務調査で指摘されるリスクは低い方法です。
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