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評価制度

上司評価と自己評価に大きな違いが生じたら、上司はどうすべきか?

Last Updated on 2025年9月5日 by

部下の自己評価と上司の評価に大きな違いが生じた場合、面談の進め方は特に慎重に行う必要があります。部下のモチベーションを下げずに、今後の成長につなげるためには、事前の準備と面談中のコミュニケーションが非常に重要です。

面談に臨む心構え

部下の自己評価を尊重する

まず、部下面談の一般的な心得ですが、部下がどのような意図でその自己評価に至ったのかを理解しようとする姿勢が大切です。自己評価は、部下が自分なりに考えた結果です。たとえ上司の評価と異なっても、頭ごなしに否定するのではなく、その評価を尊重し、耳を傾けることから始めましょう。

事実に基づいたフィードバックを準備する

具体的な事実や客観的なデータに基づいて話すことが重要です。「頑張りが足りない」といった抽象的な表現ではなく、「〇〇の納期が遅れた」「〇〇で大きなミスが発生した」などのように、事実に基づく準備しておきましょう。そのためには、日頃から問題だと感じたことについて、その経緯を記録しておくことが必要です。

ゴールを明確にする

評価後の面談の目的は、部下を非難することではなく、お互いの評価のギャップを埋め、今後の成長につなげることです。部下と建設的な対話ができるように、今後の行動計画についていくつかのアイデアを準備しましょう。

面談の進め方

ケース1:大部分の項目で自己評価と上司評価に違いが生じた場合

大部分の項目で大きな違いがあるケースでは、自分の仕事に対する認識が不十分であるとともに、上司が期待する役割を理解していない可能性が高いです。面談は、お互いの認識を丁寧にすり合わせるプロセスとなります。

想定されるやり取り

オープニング:

上司:〇〇さんの自己評価シートを拝見しました。私もいくつかの点で、〇〇さんの努力を高く評価しています。ただ、私の方で少し見方が異なる点もあるので、今日はそのすり合わせと、今後の目標について話し合いたいと思います。

自己評価の聴取:

上司:まずは、この自己評価にについて、〇〇さんから補足説明をお願いします。特に、高い評価をつけた項目について、どんな点に着目して高い評価をつけたのか、できるだけ具体的に教えてください。

部下:〇〇プロジェクトでは、新しい提案を積極的に行い、チームに貢献したつもりです。△△の業務でも、効率化のための改善を提案して一部実施しました。

上司評価の提示(事実に基づいて):

上司:〇〇プロジェクトでの〇〇さんの積極性は認めています。ただ、そのプロジェクトでは、顧客からのフィードバックは、あまり良いものではありませんでした。特に、納期遅延への不満が大きかったようです。チームへの貢献という点では、チーム内の情報共有が不足し、〇〇さんから情報が伝えられなかった他のメンバーの負担が増えたという事実もあります。△△業務の効率化も、データを見ると、残念ですが結果的に品質が低下した言わざるを得ません。これらのことについて、〇〇さんはどう捉えていますか?

ギャップのすり合わせ:

上司:〇〇さんが「頑張った」という気持ちは理解できます。ただ、評価は「結果」と「プロセス」の両面から行われます。今回の場合、プロセスでの努力は認めたいと思いますが、結果に結びついていない部分があったと私は考えています。この認識の違いはどこから来ていると思いますか?

まとめ方:

上司:今日の話から、お互いの認識に違いがあったことが分かりました。今後は、努力が結果につながるように、次の点を意識して仕事に取り組んでみませんか。1つは「〇〇」、もう1つは「△△」です。これらを具体的な目標として設定し、定期的に進捗をチェックしていきましょう。

ポイント:

一方的な説教にならない: 「あなたと私の間にはこれだけのギャップがある」と突きつけるのではなく、「あなたと私の間にはこれだけのギャップがあるようですが、どうすればそのギャップを埋められるでしょう、一緒に考えませんか」という前に進む議論になるように心がけましょう。

期待の明確化: 上司に何を期待しているのかを、具体的に理解できるように、具体的な行動目標を設定しましょう。

ケース2:数カ所の項目で自己評価と上司評価に違いが生じた場合

このケースは、部分的な認識のズレであり、大きな問題に発展する可能性は低いでしょう。面談は、そのズレを修正し、部下がさらに成長するためのアドバイスを与える場となります。

想定されるやり取り

オープニング:

上司:〇〇さんの自己評価シートを拝見しました。多くの項目で私の評価と一致していて、私は〇〇さんの仕事ぶりを評価しています。ただ、いくつか、もう少し頑張ってもらえると嬉しいな、という点があるので、今日はそのことについて話し合いましょう。

自己評価の聴取:

上司:今回の評価項目で、特に〇〇の項目について、〇〇さんは高い自己評価をしていますが、どのような点でそう考えましたか?

部下:〇〇プロジェクトのとき、課長もご存知のように予期せぬトラブルが発生しました。あのとき、素早く原因を特定し、解決策を提案できた点です。

上司評価の提示(事実に基づいて):

上司:その対応は素晴らしかったと思います。ただ、私の評価では、そもそも、実施前のチェックが甘かったことがトラブル発生の原因ではないかと考えています。例えば〇〇の確認について、チーム全体に情報を流しておけば、防げたのではないでしょうか。その点について、どう思いますか?

ギャップのすり合わせ:

上司:トラブルを解決する力は高い。そこは大いに認めます。ただ、より高いレベルを目指すなら、トラブルを未然に防止するところまで踏み込んでほしかったと思います。今後は、他のチームメンバーに的確に情報を流すということを意識すると、さらに良いと思います。

まとめ方:

上司:今日の話で、〇〇さんの「課題解決力」は、非常に高いレベルにあることが再確認できました。今後は、さらに一歩進んで、トラブルを未然に防ぐための情報の流し方を考えるように意識していきましょう。そうすることで、〇〇さんの強みはさらに伸びるはずです。

ポイント:

成功体験を否定しない: 部下の自己評価が高い部分は認め、その上で「さらに上を目指すためのアドバイス」として伝えることで、部下のモチベーションを維持しましょう。

具体的な改善点を提示: 「どうすればいいのか」を具体的に示し、部下が次の行動につなげられるように促しましょう。

いずれのケースにおいても、面談の締めくくりは前向きな言葉で終わらせることが非常に重要です。面談後も、部下との信頼関係を築き、成長をサポートする姿勢を継続していきましょう。

部下が納得しないときは

部下が自己評価を譲らず、上司の評価が間違っていると固執する場合、感情的な説得は逆効果です。そのような場合、まずは、客観的な事実に基づいた対話に立ち戻り、評価の根拠を冷静に提示することが重要です。

説明の繰り返し

まず、部下を頭ごなしに否定せず、「あなたの考えは分かりました」と一度受け止めます。その上で、以下のポイントで説得を試みます。

評価の「ものさし」を共有する

上司:〇〇さんの評価が間違っているとは言いません。ただ、私たちが評価する際に使う「ものさし」が、もしかしたら少し違うのかもしれませんね。私は会社やチームの目標、そして〇〇さんの職務記述書にある「〇〇の達成」という基準で見ています。〇〇さんは、どのような「ものさし」で自己評価をしましたか?」

ポイント:

「間違っている」と断定するのではなく、「ものさし」の違いとして提示することで、対立ではなく対話の姿勢を見せます。

評価基準を明確にし、部下の評価が主観的である可能性を考えてもらいます。

具体的な事実とデータを再提示する

上司:この評価項目については、結果を客観的な事実で見るとあなたの評価と少し違ってきます。例えば、私が担当した〇〇プロジェクトでは、顧客満足度調査で満足とやや満足が△△%に留まりました。あなたの貢献はあったものの、目標の〇〇%には届きませんでした。これはどう捉えますか?

ポイント:

「私はこう思う」という主観ではなく、「データがこう示している」という客観的な事実を示します。

議論の焦点を感情論から事実へと移し、冷静な判断を促します。

役割の違いを説明する

上司:部下の成長を促すのが私の仕事です。今の〇〇さんを高く評価するのは簡単ですが、それでは「なぜこの評価なのか」を理解してもらえなくなります。この評価は、〇〇さんがさらに成長するために、私が今伝えておくべきことだと考えました。この評価の背景にある私の意図を理解してもらえませんか?

ポイント:

上司としての責任や期待を伝え、評価が部下への「期待」であることを示唆します。

評価が「過去の評価」だけでなく「未来への投資」であることを伝え、部下の成長への関心を示します。

意見が一致しなかった場合のまとめ

すべての説得が成功するわけではありません。どうしても意見が一致しない場合は、無理に合意を求めず、「合意しないことに合意する」という形で面談を締めくくります。

まとめ方の例

「今日の面談で、お互いの意見がすべて一致しなかったことは事実です。それは、お互いが真剣に仕事に向き合っている証拠でもあります。ただ、評価の最終決定権は私にあります。今日の評価は、私が見た客観的な事実と、今後の期待を込めたものです。

これ以上議論しても、おそらく平行線になってしまうと思うので、今日はここまでにしましょう。ただ、〇〇さんの自己評価が高いこと、そして自分の考えをしっかりと持っていることは、私は素晴らしいことだと思います。

この評価を不服に思うかもしれませんが、まずは「評価のギャップがあった」という事実を受け止めてください。そして、次の目標を設定するにあたり、どうすればこのギャップを埋められるか、一緒に考えていきましょう。これからの〇〇さんの活躍を期待しています。」

ポイント:

平行線を認める: 無理に説得しようとせず、意見が一致しなかった事実を認めます。

最終決定権を明示する: 上司としての役割と責任を明確に伝え、これ以上の議論は生産的ではないことを示唆します。

未来志向で締めくくる: 過去の評価に固執するのではなく、「今後の成長」という未来に焦点を当てて話を終えます。

面談で意見が一致しなくても、部下との信頼関係を完全に崩さないことが重要です。面談後も部下の様子を気にかけ、今後の行動で成果が出た際には、積極的にフィードバックをするなど、丁寧なフォローアップを心がけましょう。


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