人事制度の等級制度の一つ「役割等級制度」について解説

人事制度

Last Updated on 2025年9月24日 by

役割等級制度とは

役割等級制度は、人事制度の等級制度の一つです。

役割等級制度は、従業員が果たす「役割」の大きさや難易度に基づいて等級を決める人事制度です。簡単に言うと、役職や職務内容に関係なく、「期待されるアウトプット(成果)の大きさ」で評価と給与が決まる仕組みです。

役割等級制度の仕組み

この制度では、まず会社が必要とする役割を明確化し、それぞれの役割に求められる成果のレベルを定義します。そして、その役割の難易度や重要度に応じて「等級」を付与します。

例えば、以下のように役割を等級に分けます。

  • 等級1: 指示された業務を正確に遂行する役割
  • 等級2: チーム内の課題を発見し、解決策を提案・実行する役割
  • 等級3: チーム全体の目標達成をリードし、成果を最大化する役割

この等級は、職務内容や役職名とは必ずしも一致しません。同じ「営業担当」という職務でも、求められる役割の大きさや成果レベルが異なれば、等級も変わります。例えば、単なる顧客訪問から、新規事業の立ち上げを担う役割まで、同じ営業という職務でも等級が分かれます。

役割等級制度の評価は、主に期初に設定した役割の目標に対する達成度や、求められる行動(コンピテンシー)の発揮度合いに基づいて行われます。

役割等級制度のメリット・デメリット

1. メリット

  • 従業員の自律性を促す: 従業員は「自分が何をすべきか」を明確に理解し、目標達成に向けて主体的に行動するようになります。
  • 成果主義との親和性が高い: 成果や貢献度合いが直接的に等級や給与に反映されるため、高いパフォーマンスを上げた従業員を正当に評価できます。
  • 組織のフラット化に対応: 役職や職位にとらわれず、個々の貢献度を評価できるため、リーダーシップを発揮する人材を柔軟に抜擢できます。

2. デメリット

  • 評価基準の設定が難しい: 役割や成果は定量化しにくく、評価者の主観が入りやすいため、評価基準を明確に定めるのが困難です。
  • 目標設定の負担が大きい: 期初に全従業員の役割を明確に定義し、目標を設定する作業は、人事担当者や管理職にとって大きな負担となります。
  • 従業員の不満につながる可能性: 役割等級が上がらないと給与も上がらないため、高い成果を出しているにも関わらず、等級の壁にぶつかってモチベーションが低下するリスクがあります。

職務等級制度・職能資格制度との違い

  • 職務等級制度: 「仕事の内容」に等級をつけます。
  • 職能資格制度: 「個人の能力」に等級をつけます。
  • 役割等級制度: 「期待される成果」に等級をつけます。

役割等級制度は、職務等級制度と職能資格制度の良い点を組み合わせたような制度と言えます。職能資格制度のような「人」の能力も評価しつつ、職務等級制度のように「仕事」の価値や成果を重視する考え方が取り入れられています。近年、多くの日本企業が年功序列から脱却し、多様な働き方に対応するために導入を進めている制度です。

役割等級制度と役割給の関係

役割等級制度と役割給は、「役割」の価値を賃金に反映させる仕組みとして一体の関係にあります。役割等級制度が「期待される成果」に基づいて等級を定める枠組みであるのに対し、役割給は「その等級に応じた給与」そのものを指します。

役割等級制度と役割給の連動

  1. 役割の定義: まず、会社が社員に期待する役割を明確にします。この役割には、個人の能力だけでなく、チームや組織への貢献度も含まれます。
  2. 役割等級の設定: 定義された役割の難易度や重要度に応じて等級(グレード)を割り当てます。この等級は、役職や職務とは別の軸で設定されます。
  3. 役割給の決定: この等級に紐づく形で、給与額が設定されます。これが役割給です。社員は、担当する役割の大きさや、その役割でどれだけの成果を出したかによって役割給が決定します。

役割給の主な特徴

  • 成果と給与の連動: 役割給は、職務等級制度と同様に、年齢や勤続年数よりも「成果」「貢献度」を重視します。期待された役割を大きく上回る成果を出せば、等級が上がり、役割給も上がります。
  • 柔軟な給与設定: 役割等級制度は、厳密な職務内容を定めないため、多様な働き方やプロジェクトベースの業務にも対応しやすいのが特徴です。その柔軟な役割に応じて、役割給も柔軟に設定・変動します。
  • 変動性: 職能給が一度上がると下がりにくい傾向があるのに対し、役割給は役割の変更や期待された成果が出せない場合、等級が下がり、それに伴って給与も下がる可能性があります。この変動性が、従業員の高いモチベーションを維持する効果も期待できます。

職務給・職能給との違い

  • 役割給: 「期待される成果」で給与が決まる。
  • 職務給: 担当する「仕事の内容」で給与が決まる。
  • 職能給: 個人の「能力」で給与が決まる。

役割給は、職務給が持つ「仕事の価値」と、職能給が持つ「個人の能力・貢献度」の両方の側面を評価基準に取り入れた制度と言えます。これにより、社員は与えられた仕事の枠を超えて、より大きな役割を担うことで高い報酬を得るチャンスが生まれます。


会社事務入門人事制度とは?人事制度を構成する等級制度、評価制度、報酬制度について解説>このページ