派遣労働者に対するキャリアアップ支援措置とは?具体的に解説

採用

派遣労働者に対するキャリアアップ支援措置とは、労働者派遣法(第30条の2)に基づき、派遣元事業主(派遣会社)に義務付けられている、派遣労働者の職業能力の開発・向上を図るための総合的な制度です。

具体的には、主に以下の2つの措置と、それらを体系的に進めるための制度設計が求められます。

段階的かつ体系的な教育訓練の実施(義務)

派遣元は、その雇用するすべての派遣労働者が、段階的かつ体系的に派遣就業に必要な技能および知識を習得できるよう、計画的な教育訓練を有給かつ無償で実施しなければなりません。

要件具体的な内容
対象者すべての派遣労働者(有期雇用・無期雇用を問わない)。
時期・時間入職時の教育訓練は必須。それに加え、1年以上の雇用見込みがあるフルタイムの派遣労働者に対しては、毎年概ね8時間以上の教育訓練の機会を提供する。
訓練の内容派遣労働者のキャリアアップに資する内容であること。職種別、勤続年数、職位などに応じた段階的かつ体系的なカリキュラムを定める必要があります。
費用の負担実施する教育訓練は、有給(賃金を支払う)かつ無償(受講料を徴収しない)で行うこと。

実施される訓練の例

  • 入職時訓練:労働安全衛生、コンプライアンス、ビジネスマナーなどの基礎訓練。
  • 職能別訓練:OAスキル、簿記、語学、専門知識・技能(例:プログラミング、CAD操作)など、職務遂行に必要なスキル訓練。
  • 職務転換訓練:異なる職種へキャリアチェンジを目指すための訓練。

キャリアコンサルティングの機会の確保(義務)

派遣元は、すべての派遣労働者に対して、職業生活の設計に関する相談の機会(キャリアコンサルティング)を確保しなければなりません。

要件具体的な内容
実施方法相談窓口の設置や、経験のある営業担当者などによる面談、電話・オンライン相談など。
対応者派遣労働者のキャリアに関する知識を有する者(キャリアコンサルタント資格を持つ者が望ましい)を配置する。
目的派遣労働者自身のスキルや志向性を把握し、キャリアプランを明確化させ、それに合った派遣先を選定したり、教育訓練に繋げたりすること。

派遣先への配慮義務・協力

派遣元だけでなく、派遣先にも以下の協力が求められます。

  • 派遣先への配慮・協力(配慮義務)
    派遣元が教育訓練を実施する際、派遣労働者が訓練を受けられるよう、可能な限り協力し、必要な便宜を図るよう配慮する義務があります。
  • 情報提供(配慮義務)
    派遣元の求めに応じ、派遣労働者の職務遂行状況や遂行能力の向上度合いなど、キャリアアップ支援に必要な情報を派遣元に提供するよう配慮する義務があります。