法令違反があれば直接雇用になる
「労働契約申込みみなし制度」は、派遣を受け入れる企業にとって最もインパクトの大きい法的リスクの一つです。この制度を「知らなかった」では済まされない重要なポイントを分かりやすく解説します。
制度の内容
一言で言うと、「ルール違反をして派遣を受け入れている場合、その時点で、貴社がその派遣社員に『正社員(または直接雇用の契約社員)になりませんか?』とスカウトしたとみなされる」という制度です。
通常、採用は企業側が「雇いたい」と言わなければ成立しません。しかし、この制度が適用されると、企業の意思に関係なく、法律によって自動的に「直接雇用の申し込み」をしたことになります。
- 派遣社員が「はい、承諾します」と言えば: その瞬間に、貴社とその派遣社員との間に直接の雇用契約が成立します。
- 断ることはできる?: 企業側に拒否権はありません。
どのようなことをすれば対象になるか
以下の4つの「違法な状態」で派遣を受け入れた場合、この制度の対象となります。
① 禁止業務への派遣受入れ
法律で禁止されている業務(建設、港湾運送、警備、医療の一部など)に派遣労働者を従事させた場合。
- 例: 事務職として受け入れた派遣社員に、人手が足りないからと「建設現場の作業」を手伝わせた。
② 無許可の業者からの派遣受入れ
国(厚生労働省)の許可を受けていない「モグリ」の派遣会社から派遣を受け入れた場合。
- 例: 知人の会社から「うちの社員を貸すよ」と言われ、派遣の許可がないのに料金を払って人を出してもらった。
③ 期間制限違反(3年ルール破り)
同じ事業所で3年を超えて派遣を受け入れたり(事業所単位の制限)、同じ課で3年を超えて同一の派遣社員を受け入れたり(個人単位の制限)した場合。
- 例: 非常に優秀な派遣社員だったので、派遣契約を更新し続けて4年目に突入した。
④ 偽装請負(実態が派遣なのに請負を装う)
契約書は「請負」や「業務委託」なのに、実態は貴社の社員が直接指示を出して働かせている場合。
- 例: 前述の通り、請負会社のスタッフに「明日の会議資料、君が作っておいて」と直接指示を出して働かせていた。
注意すべき「善意の過失」
この制度の怖いところは、企業側に「悪気がなくても適用される」点です。
例えば、「期間制限を1日でも過ぎてしまった」「ついうっかり、請負スタッフに直接指示を出してしまった」というミスであっても、客観的に違法状態であれば、労働者は「直接雇用を申し込まれたとみなします!」と主張できてしまいます。
派遣先が違法派遣であることを「知らず(善意)」、かつ「知らなかったことに落ち度がない(無過失)」場合には、この制度は適用されません。ただし、この「善意無過失」のハードルは非常に高いと考えられており、「知らなかった」という言い訳が通用するケースは極めて限定的です。
まとめ:トラブルを防ぐために
初めて派遣を利用される際は、以下の3点を徹底してください。
- 信頼できる大手・中堅の派遣会社を選ぶ(無許可業者のリスク回避)。
- 「派遣先責任者」を決め、期間制限(抵触日)をカレンダーで厳重管理する。
- 現場のリーダーに「派遣と請負の違い(直接指示の可否)」を教育する。


