正直な採用活動でミスマッチ退職を防ぐ

採用

Last Updated on 2025年9月26日 by

ミスマッチ退職を防ぐ第一の対策は、「正直な採用活動」です。ミスマッチによる早期退職は、採用コストだけでなく、現場の士気や教育に費やした時間も無駄にしてしまうため、企業にとって大きな損失です。

募集段階で「正直さ」を貫く

採用活動は良い面を強調するものだという固定観念があるかもしれません。しかし、「リスク管理」と「コスト削減」の観点からは、正直な情報開示に大きな「メリット」があります。

1. 経済的損失(コスト)の回避

早期退職が企業に与える具体的な経済的損失を表で示します。

項目早期退職による損失(コスト)「正直な採用」のメリット
採用コスト媒体費、エージェントへの手数料、人事担当者の人件費などが全て無駄になる。入社意欲の高い候補者に絞れるため、無駄な採用活動費を削減できる。
育成・教育コスト研修費用、OJT担当者(先輩・上司)の時間、教材費が全て無駄になる。定着率が向上し、投資した教育コストが将来の生産性として回収できる。
機会損失欠員による現場の業務停滞、他の社員の負担増、新規プロジェクトの遅延など。質の高い人材が長く定着することで、組織の安定生産性の維持に繋がる。

正直に伝えることで一時的に応募数は減るかもしれませんが、ミスマッチによる退職が1人減るだけで、採用費、研修費、そして現場の先輩の教育時間がトータルで数百万円分の損失を防げます。これは最も堅実なリスク管理です。

2. 「リアリスティック・ジョブ・プレビュー(RJP)」の活用

正直にというのは、悪い面を強調することではありません。「良い面も悪い面も事前に伝える」というアプローチをとります。

  • RJPとは?: 候補者に対して、仕事の魅力的な部分(プラス面)だけでなく、困難な課題や厳しい現実(マイナス面)も公平に提示する手法です。
  • RJPのメリット:
    1. コミットメント(納得感)の強化: 「厳しい現実を知った上で入社を決めた」という事実が、困難に直面した時の粘り強さにつながります。
    2. 期待値の適正化: ギャップが小さくなるため、「こんなはずじゃなかった」というリアクションショックを防げます

現在、RJP(リアリスティック・ジョブ・プレビュー)という採用手法を取り入れる企業が増えています。これは「隠すのではなく、乗り越える意志を確認する」採用手法です。正直に課題を伝えて、それでも「頑張りたい」という社員だけを採用することで、早期退職を防ぎ、本当に強い組織が作れます。

3. マイナス面を「課題」としてポジティブに表現する

単に「マイナス面」を列挙するのではなく、それを「成長の機会」や「会社が取り組んでいる課題」として表現し直すことで、候補者が逃げるのを防ぎます。

単なるマイナス表現ポジティブな「課題」表現(RJPアプローチ)
「残業が多い部署です。」「現在、部門全体で業務効率化と残業削減に真剣に取り組んでいます。この課題を推進してくれる、改善意欲の高い方を求めています。」
「ルーティンワークが多く、地味です。」「最初の1年間は地道なデータ処理が多いですが、この経験が会社全体のビジネス構造を理解するための土台になります。その後、新規プロジェクトに参画する道筋があります。」
「教育制度はまだ不十分です。」「手厚いマニュアルはありませんが、主体的に学び、周囲に質問できる自律性の高い成長が求められます。その分、個人の裁量が大きく、やりがいのある環境です。」

正直に伝えるべきことは伝えつつ、それを「一緒に解決していくべき課題」とすることで、受動的な応募者を避け、主体的で挑戦意欲のある人材を惹きつけることができます。

上記のような経済効果を考慮し、RJPアプローチを取り入れて、正直な採用活動にシフトしてはいかがでしょうか。