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定年後再雇用後の待遇について

Last Updated on 2024年11月9日 by

再雇用後の賃金の現状

細かな数字は省略しますが、現在、60歳定年制を定めてる企業が圧倒的に多く、60歳以後については、一旦、定年による退職手続きをして、改めて、有期雇用労働者として雇用して、65歳まで継続雇用する企業が大多数のようです。

再雇用後の待遇については、労働契約を改めて結びなおすことになるので、前の待遇と比べて20%から40%低下するところが多いようです。

雇用継続給付金の扱い

定年後再雇用で賃金が低下したときに支給される「高年齢雇用継続基本給付金」は、賃金が60歳到達時点の賃金と比較して75%未満になる場合に支給され、賃金が61%以下に下がった場合に、新賃金の15%が支給されるように設計されています。

つまり、40%の低下を想定しているともいえるので、企業においては、賃金を下げる場合に、この40%を超えなければ問題ないだろうとする一つの目安になっていました。

令和7年4月1日から給付の支給率が変わります。15%が10%になります。

有期雇用労働法による規制

短時間労働者及び有期雇用労働者法には、通常の労働者と有期雇用労働者等の待遇について、不合理と認められる相違を設けてはならないという規定があります。

短時間労働者及び有期雇用労働者法第8条 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して」というところを、定年後再雇用に当てはめれば、前と同じ仕事をさせているのであれば、賃金を下げるのは無理があるという解釈も成り立ちます。

N運輸事件最高裁判決

原告の主張

定年退職後1年間の有期労働契約を締結して再雇用されていたドライバーが、定年前と定年後では、従事している職務に違いがないにもかかわらず賃金格差(平均21%減)があり、これは労働契約法20条に違反し無効であると主張した。

最高裁判決

平成30年6月1日に最高裁判決がでました。

事業主は、高年齢者雇用安定法により、60歳を超えた高年齢者の雇用確保措置を義務付けられており、定年退職した高年齢者の継続雇用に伴う賃金コストの無制限な増大を回避する必要があること等を考慮すると、定年退職後の継続雇用における賃金を定年退職時より引き下げること自体が不合理であるとはいえない。

定年退職後の再雇用において、職務内容等が同じでも、定年後再雇用という点に着目(これを「その他の事情に」に含まれるとしました)して、賃金の低下はやむを得ないという判断を示しました。

そして、以下のようにも判示しています。

有期契約労働者と無期契約労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するに当たっては、両者の賃金の総額を比較することのみによるのではなく、当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当である。

一つ一つの項目ごとに検討を行い、結果として、休日を除く全ての日に出勤した者に支払われる「精勤手当」を契約社員に支給しないのは不合理で違法と判断し、時間外労働に関する手当については金額などを改めて検討するため、東京高裁に審理を差し戻しました。

まとめ

定年後の再雇用制度を導入している企業は、ほとんどの場合、待遇を引き下げています。この最高裁判決は、合理性な範囲での格差の存在を容認したものであり、現状が追認されたと受けとめられています。ただし、総額で比較するものではなく、個別の賃金項目ごとに判断することを求めています。

N自動車学校事件最高裁判決

原告の主張

定年退職し有期契約労働者として再雇用されていた2名が、無期労働契約を締結している正職員との間における基本給・賞与等の相違が労働契約法20条に違反すると主張し、当該相違に関する差額の損害賠償等を請求した。

地裁・高裁の判断

地裁は、基本給に関して原告ら嘱託職員の基本給が正職員定年退職時の基本給の60%を下回る限度で労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たり、賞与に関して基本給を正職員定年退職時の60%の金額を乗じた結果を下回る限度で労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たる、という判断を示しました。

高裁も、原審の判断を維持し、基本給及び賞与に関する原告ら嘱託職員と正職員の待遇差は、60%を下回る限度で違法であると判断しました。

最高裁判決

令和5年7月20日に最高裁判決がでました。

第一審および控訴審は、職務内容が変わらない定年後再雇用者の基本給が定年退職時の60%を下回ってはならないかのような判断であったため、仮にこの判断が最高裁でも是認された場合は大きな影響でることが予想されていました。しかし、最高裁は、従前の最高裁判決の考え方を踏襲し、基本給や賞与の支給の趣旨や労使交渉の経緯等を踏まえて不合理性を判断すべきとして、原判決の検討が不十分であるとして原審に破棄差し戻しました。

まとめ

最高裁は、一律何パーセントだから違法ということではなく、基本給や賞与の支給の趣旨や労使交渉の経緯等によっては、60%を越えていても否定されることがあり、また逆に、60%を下回ったとしても必ずしも否定されるとは限らないという見方を示されたように見えます。

差戻し審での審理・判断がどうなるか予断はできませんが、企業においては、定年後再雇用制度において待遇を引き下げる措置を実施する場合は、この最高裁判決を踏まえて論理的な説明ができる待遇を提案する必要があります。


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