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採用の事務

内定取り消しを安易に考えてはならない

Last Updated on 2021年7月14日 by

内定とは

内定というのは、一般的には採用を約束されたという意味で使われています。ただし、内定と言っても意味が違うことがあることに注意が必要です。

内定手続きについては→内定を出すときの注意点

内定すれば労働契約を結んだことになります

以下、本来の意味の「内定」について説明します。

内定は「始期付解約権留保付労働契約」という条件付きの労働契約です。

始期というのは、就業予定日を決めたということです。解約権留保というのは、どちらからでも解約できるということです。

「解約権」を「留保」しているのですから、留保をやめればよいだけと考える人もいますが、そう簡単なものではありません。

内定取り消しができるのは、次の2点を充たしたときです。

① 内定決定時に知ることができず、知ることが期待できないような事実であった
② 内定取り消しに合理的な理由がある

原因が当人にある場合の内定取り消し条件

内定決定時に知ることができず、知ることが期待できないような事実として、次のようなことが発覚したときは内定取り消しが認められる可能性が高くなります。

□ 卒業できない
卒業できなければ応募条件を満たしていないことになります。

□ 犯罪歴の発覚
犯罪歴などが発覚すれば内定取り消しとなる可能性が高いです。

□ 態度が極めて不誠実
入社前研修や、入社前打ち合わせなどで、反抗的な態度、居眠り、遅刻などの極めて不誠実な態度があったときは、内定取り消しとなる可能性があります。

□ 嘘がばれる
履歴書への記載事項や面接で重大な点で虚偽があった場合は、内定取り消しの可能性が高いです。多少自分をよく見せようとするのは許されると思われますが、経歴の詐称や、資格の詐称、仕事に関連する可能性のある特技についての虚偽は内定取り消しとなる可能性があります。

□ 健康上の理由
病気を隠して就職活動をして、採用時の健康診断で病気が発覚し、業務に支障があると判断された場合は内定取り消しになる可能性があります。

原因が会社にある場合の内定取り消し条件

ハードルは高いと考えなければなりません。

内定は始期付解約権留保付労働契約なので、会社の事情によって内定取り消しをするのであれば、労働契約の解除、すなわち、解雇と同様の手続きをする必要があります。判例による「整理解雇四要件」が充足しているかどうかがポイントになります。

整理解雇の四要件」とは
① 人員削減の必要性
② 解雇回避の努力義務を踏まえた整理解雇の必要性
③ 被解雇者選定の合理性
④ 手続きの妥当性

整理解雇について

内定取り消しをする場合

事前に取り消し条件を明示しておく

内定通知書の交付などの内定手続きにおいて、どのような場合に内定を取り消すことがあるか、具体的に示しておく必要があります。

就業規則に内定取り消し条件を記載することもありますが、内定通知書等で個別に提示していなければ効力がありません。

規定例:内定の取消し|就業規則

労働基準法の解雇に関する規定を守る

内定取消しは労働契約の解除ですから、通常の解雇と同様、労働基準法第20条(解雇の予告)、第22条(退職時等の証明)などの規定が適用されます。

使用者は解雇予告などの解雇手続きを適正に行う必要があります。

採用内定者が内定取消しの理由について証明書を請求した場合には、速やかにこれを交付しなければなりません。

新卒者に対する内定取り消し

内定取り消しが新卒者に対して行われる場合は、上述の対処の他に、職業安定法施行規則第35条第2項に基づいて、「新規学校卒業者の採用内定取消通知書(様式19)」により、ハローワークおよび大学・高校等の長に通知しなければなりません。

損害賠償請求がありうる

内定を受ければその人は他への就職活動をやめるので、内定取り消しで大変な損害を被ることになります。正当な理由が認められなければ、損害賠償に応じなければならないことになります。

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