Last Updated on 2025年8月11日 by 勝
減価償却とは
減価償却は、一言でいえば
「資産は時間とともに価値が減っていくので、その減った分を毎年経費に分けて計上する仕組み」
です。
文字の意味から説明すると、
減価=時間や使用によって価値が減ること
償却=その減った価値を帳簿から消す処理(費用化)
となります。
まとめて言えば、「減価償却」というのは、「価値の減少分を埋め合わせて消す」という意味になります。
そこで、会計・税務の文脈では、
減価償却とは、資産の取得価額を帳簿上で少しずつ減らし、その減った分を費用として計上し、帳簿価額をゼロに近づけるという意味で使っています。
減価償却はなぜ必要か
例えば、100万円の機械を買って10年間使う場合
買った年に100万円全部を経費にすると、その年だけ利益が大きく減ってしまい、翌年以降は経費ゼロになります。
実際は、機械は10年間にわたって働くわけですから、10年に分けて少しずつ経費にする方が、利益計算が実態に近くなるのです。
減価償却できる資産を、減価償却資産といいます。「価値」が「減っていく」資産という意味です。
固定資産の中でも土地や書画骨董・貴金属でできている道具などのように価値が減じないと考えられているものは減価償却できません。
減価償却の考え方
資産の取得価額からスタートします。
耐用年数(法律で定められた利用可能期間)で割って、毎年の「価値の減少分」を計算します。
この価値の減少分を「減価償却費」として経費化します。
税金の観点
税務では、減価償却費を経費にできるのは法律で決められたやり方に従う必要があります
法定耐用年数と償却率
減価償却資産の使用可能期間とそれに応じた償却率は、法定耐用年数が財務省令の別表で定められています。
有形固定資産は、1円(備忘価額)まで償却できます。無形固定資産の残存価額はゼロです。
減価償却額の計算には、定額法と定率法があります。減価償却の方法を変更する場合には、変更をしたい年の3月15日までに所轄の税務署長へ申請書を提出して承認を受ける必要があります。
計算に必要な3つの要素
取得価額: 固定資産を購入した金額(付随費用を含む)。
耐用年数: 固定資産の種類ごとに法律で定められた使用可能期間。国税庁のウェブサイトで確認できます。
償却方法: 減価償却費を計算する方法。主に「定額法」と「定率法」があります。
定額法:毎年同じ金額を償却する方法
定額法は、減価償却の対象となる固定資産の購入代金を法定耐用年数の期間で同額ずつ償却していく方法です。シンプルでわかりやすい方法です。
計算式: 取得価額×定額法の償却率
例: 取得価額100万円、耐用年数5年のパソコンの場合(償却率0.200)
1年目の償却費: 100万円×0.200=20万円
2年目の償却費: 100万円×0.200=20万円
…5年間、毎年20万円を費用として計上します。
定率法:初年度に多くの金額を償却する方法
定率法は、毎年未償却の金額に一定の償却率を掛けて償却していく方法です。定率法は、初年度に最も多くの金額を償却し、年数が経つにつれて償却額が減少します。
計算式: (取得価額−期首簿価)×定率法の償却率
例: 取得価額100万円、耐用年数5年のパソコンの場合(償却率0.400)
1年目の償却費: 100万円×0.400=40万円
2年目の償却費: (100万円−40万円)×0.400=24万円
3年目の償却費: (60万円−24万円)×0.400=14.4万円
…というように計算します。
少額減価償却資産の特例
中小企業者等が、取得価額が30万円未満である減価償却資産(少額減価償却資産)を平成18年4月1日から令和8年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができます。
この特例の対象となる法人は、中小企業者または農業協同組合等で、青色申告書を提出するもののうち、常時使用する従業員の数が500人以下(一部300人以下)の法人に限られます。
なお、10万円未満の資産は、どの会社等でも費用として計上することができます。
減価償却の会計処理
減価償却費は販売費一般管理費(経費)です。
減価償却を会計処理する場合には、減価償却費を固定資産から直接減少させる直接法と、減価償却費を累積させて表示する間接法の2通りの方法があります。
引当金を設定する仕訳
(借方) (貸方)
減価償却費 減価償却引当金
直接控除する仕訳
(借方) (貸方)
減価償却費 建物など
年の中途で取得した資産についての減価償却費は、その年において使用した月数に応じた分だけです。使用月数は暦に従って計算し、1か月未満の端数があるときは切り上げます。
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